『花の城の音姫』 ~音の章~ 其の四
今回も前回と同様に残酷な描写があります。苦手な方は読み進めないようにしてください。
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暗い闇の中にあってなお、儂の意識は闇に呑まれること無く、其処に存在した。
其処?何処?自分の居場所は分からない。恐らく・・・いや、確実に儂は死んだのじゃろう。
ならば、此処はあの世という事になるのか?
只々暗い。何も見えない。何も無い。儂はどうなった?どうなる?
・・・気が狂いそうじゃ。
この何も無い暗闇。只考える事しかできない。
そもそも、儂はいや、儂達は何故死ななければならなかったのじゃ?儂らは普通に生活してただけぞ?
民にも慕われ、領地こそ少ないが・・・争いらしい争いも無く。平和。そう、平和に過ごしていただけじゃ。
何故あの物の怪は・・・そう、あの物の怪さえ来なければ・・・
・・・
・・・
・・・
・・・憎い。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い・・・・
儂にチカラがあれば・・・あんな物の怪・・・殺してやる。
儂の中にどす黒い”何か”が生まれた。
そして儂は、3日3晩にわたり呪いの言葉を吐きつづけ・・・
・・・夜魅となった。
辺りに血生臭いにおいが立ち込める。
此処は儂の国の城下・・・そう、儂が死んだ場所じゃな。
あやつは?あの物の怪は何処じゃ??儂は赤い池を出る。
ふむ・・・おお、どうやらまだ近くにいる様じゃな。
ククククククク・・・殺してやる。殺してやるぞ、物の怪よ。
儂は”4本の足”で大地を踏みしめ、一気に駆け出す。辺りの風景は一瞬で流れ、そのスピードのすざましさを物語る。
我が国の神聖なるご神木である『桜』のある山を根城にしようなどと・・・
一気に山すらも駆け上る。木々すら気にならない。儂が近づいただけで、多くの木々が枯れ、倒れた。
「ほう、なかなかの瘴気だ。」
「これだから、虐殺はやめられん。」
儂を、この国を喰い殺した物の怪・・・『牛鬼』が其処にいる。
「大量に殺せば、その中から恨みを募らせ夜魅が生まれる。」
「俺は、その夜魅を喰らい、さらなる力をつけ、”あのお方”のお役にたつのだ。」
自ら目的をべらべらと喋る物の怪。儂にはどうでも良い事じゃ。
そう、儂はお前を殺せれば良い。
そうじゃ、殺して、逆に儂が喰ろうてやろう。
「クククククククククク・・・・」
自然に笑いがこぼれる。
この高揚感はなんじゃ?
・・・ああ、そうか。
まだ儂を殺して喰ってやると言っている馬鹿を嬲殺しにするのが楽しみなのか。
「クワッハハハハハハハハハハハ・・・」
儂は楽しくてたまらない。
「何を笑っている?名も無き夜魅よ。」
「お前はこれから、喰われるのだぞ?」
「いや、すまないのじゃ。」
「お前があまりにも間抜けなのでな。」
「ククククククククク・・・」
「・・・その声。そうか、お前、あの姫か!!」
「姫が夜魅に身を落とすとは、これは傑作だ。元々嫁にして喰ってやろうと思っていたのだ。ちょうど良いわ!!」
牛の頭、蜘蛛の体、前足に鋭い爪を持つ物の怪は、その巨体とは思えない程のスピードで爪をふるう。
ぶぉん
儂を狙ったソレは、空を切る。
人なら避けられまい。今の儂なら、それを知覚し、それ以上のスピードで動けるので問題は無い。
避けられたのが意外だったのか?物の怪よ??
ぶぉんぶぉんぶぉんぶぉん
その後も連続で爪をふるうが全て空を切る。
「ほう、なかなか素早いようだな。」
「だが、当たりさえすれば、お前など一撃で葬れるわ!」
「ならば試してみるか?」
儂は挑発する。
またもふるわれる爪。
ガキンッ
金属めいた音をたて、爪を弾く。
その程度の攻撃、避けるまでもなかったのだ。
「ふむ、やはりこの程度か。」
「ならば、これを食らえ。」
今度は蜘蛛の糸を射出すると、儂の体にぐるぐると巻きつける。
先程の攻撃で、物の怪の程度を知った儂は避ける気も無い。
「これで動けまい。」
物の怪は牛の角を突き出すと、体当たりを仕掛けてくる。
面倒くさいが・・・儂がちょっと力を入れると糸が切れる。
そして、迫る牛の頭を前足一本で止めた。
「もう、面倒くさい。」
ぐしゃり。
そのまま牛の頭を踏みつぶす。
ギィィィィィヤァァァァァァァァァァァ
物の怪が悲鳴を上げる。
なかなか良い声で哭く。頭を完全につぶしたら面白くない無いな。
儂は、蜘蛛の足を一本喰いちぎる。
グチャグチャグチャ
ふむ。なかなか美味いではないか。
それにチカラが付く気もする。
・・・ああ、そういえば、こやつも儂を喰ってチカラにするとか何とか言ってたわ。
ガッ・・・グチャグチャグチャ・・・・
さらにもう一本、足を喰いちぎる。
ギィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァ
物の怪の悲鳴が心地よい。
先ずは全ての足。そして腹・・・頭は最後にしよう。
グチャグチャグチャ、グチャグチャグチャ・・・・
・・・
・・・
・・・
ドクンッ
儂の体の中の何かが鼓動する。
物の怪を全て喰らいつくした儂は、さらなるチカラを身につけていた。
その身からあふれる瘴気は、木々を枯れさせる。辺りは『桜』を残し全て枯れ果てた。
足らぬ。
まだ、喰い足りぬ。
儂は山を下りた。




