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『霧島華音・結』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第7章 『花の城の音姫』 ~音の章~
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『花の城の音姫』 ~音の章~ 其の三

今回、物の怪による虐殺の描写があります。苦手な方は読み進めないようにしてください。





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隣国が滅んで間もなく、戦が始まった。

いや、それは戦とは呼べない。


虐殺。蹂躙。


一匹の夜魅やみ・・・物の怪の前に・・・兵は、なすすべも無い。

ある者は、爪で真っ二つに引き裂かれ、またある者は、頭から食いつかれ、そのまま物の怪の胃袋に消えた。

巨大な蜘蛛の体に、牛の頭を持つ物の怪『牛鬼うしおに

その強大なチカラの前には、人のチカラは無力すぎた。

物の怪による蹂躙は、国境の砦を超え、城下までとどいた。

戦える者は皆物の怪に挑んだが、皆同じ末路をたどる。

花が咲き乱れる美しい国は、赤く染まり最後に逃げ込んだ城にも迫る。

何故?何でこんな事になっているのじゃ??

儂らが一体何をしたと言うのじゃ??

今は、城に僅かばかり残った兵が、儂や父様、母様への道を阻んでいる。


「音、貴女は逃げなさい。」


母様は言う。貴女は逃げて。生き延びなさい。

父様は刀を構えたままこちらを振り向くと、ただ頷いた。


「華、よろしく頼みます。」


「は。」

「さ、音姫様、こちらの隠し通路より外へ。」


「い、いやじゃ、儂も父様や母様と戦う覚悟位できておるのじゃ!」


儂は父様と、母様にそう追い縋るも結局は隠し通路に押し込まれた。

儂は扉をどんどんっと叩く。此方からは開かない。


「音姫様。貴女さえ生き延びれば、何時の日かお家が復興することも出来るでしょう。」


「復興・・・?華っ!!そなた、我が国が滅ぶとでも言うのか!!」

「儂は戻る。何とかして扉を開けいっ!!」


ぱんっ


頬が熱い。

儂は熱くなった頬に触れる。


「いい加減になさい!御殿様達のお気持ちをお考えください!!」


頬は熱いのに、まるで冷水でも掛けられたようだった。

その頬に冷たいものが流れる。

儂は華に叩かれたと漸く理解した。


・・・

・・・

・・・


華は儂の手を引き、暗い通路を進む。

華のお蔭で冷静になる事が出来た。あの状況。父様も母様も恐らくは助からまい。

民も皆殺しにされ、物の怪に喰われているやもしれん。

だが、だからこそ、儂は生き延びなければならん。そういう事じゃろう?父様、母様。

顔は涙でぐちゃぐちゃだった。でも、儂はしっかりと歩き続けた。


・・・四半刻程歩いただろか?最後に階段を上がると扉が見えた。


「んっ」っと気合を入れて、華が扉を開ける。

外の光が溢れる。儂は眩しそうに眼を窄め外に出る。

城下の外れのごく普通の民家に通じていた。民家を出る。


「うっ」


辺りには火の手が上がり、血なまぐさい匂いと何かが焼ける嫌なにおいが立ち込める。


「ささ、音姫様。お早く。」


隠し通路を通っている時、華が言っていたのだが、海の方に緊急時に備え逃げる準備があるそうだ。

儂は華に連れられ、そこへと向かう事になる。

・・・だが、そうはならなかった。


「物の怪・・・」


先程まで、城で大暴れしていた物の怪が此処に居たのだ。


グルルルゥゥゥゥゥゥ


低いうなり声を上げると、物の怪は人の言葉を発した。


「・・・此処にいたのか、姫よ。」


「な、こやつ人の言葉を!?」


「音姫様、私が食い止めている間にお逃げください。」


華は儂と物の怪の間に割って入り手を広げる。


「早くっ!」


華は叫ぶ。

儂は恐怖のあまり足が動かない。

物の怪の爪が華に向かって振り下ろされた。


「お・・・とひめさ・・・ま、はや・・く、にげ・・・」


ずるり。


華の体が2つに分かれた。


ばたんっびしゃっ


儂に赤い液体がかかる。

儂の周りに赤い水溜りが出来る。

二つに分かれた華だったモノはぴくりとぴくりと震えていたが、やがて動かなくなった。


ぐしゃ。


物の怪が華だったモノを踏みつけた。

ああ、儂の目の前で今何が起こっているのだろう?

儂も華の様に、ここで死ぬのだろうか?


「美しい姫よ。俺の嫁になるならば、命だけは助けてやろう。」


物の怪が低い声で言う。

嫁になれ・・・じゃと?ふざけるでない!国を・・・民を・・・父様を母様を・・・華を!!

こんな事をして置いて、儂に嫁になれじゃと??


・・・

・・・

・・・


「ふざけるでない。他の者と同様。儂も殺すがいい。」

「じゃが、いつかお前も誰かに殺されるじゃろう。」

「その時に、自分の犯した罪の深さを知るがいい。」


儂は言って目を閉じる。


父様、母様・・・華。儂もそちらに行く事になりそうじゃ。

儂に向かって物の怪の爪は振り下ろされ、儂の意識は闇へと沈んだ。

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