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『霧島華音・結』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第7章 『花の城の音姫』 ~音の章~
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『花の城の音姫』 ~音の章~ 其の一

今より昔。

てうしの地にそれは美しい姫が居たと言う。

その姫の名前は『音』。

音姫の住む城は、春には桜や菜の花、夏には百合、秋には秋桜・・・それは美しい花が咲き乱れ『花の城』と呼ばれていた。



陽は当に昇り、朝・・・という時間にしては少し遅めの時間。

儂は布団の中で惰眠を貪っている。

この時間がたまらない。一番気持ちの良い時間と言っても良いじゃろう。


「音姫様。もう起きてください。御稽古ごとのお時間ですよ。」


そんな時間を奪うかのように女中の声が聞こえる。

儂はそんな女中の声に、うっすらと瞼を開けるがまた布団に潜り込み・・・


「今日は体調が悪いのじゃ、休むと伝えよ。」


と言って瞼を閉じる。

はぁぁ・・・と大きなため息が聞こえ、儂の布団は一気に引きはがされた。


「なっ何をするのじゃ!華!!」


女中・・・華は、悪びれもせずしれっとした態度。


「お目覚めになりましたね。音姫様。」

「ささ、お召し物を変え、御稽古に参りましょう。先生ももうお待ちですよ。」


「じゃから、儂は体調が悪いと・・・」


「お、と、さ、ま。仮病を使うのもいい加減になさいまし。」

「お稽古事は、将来、音姫様がお輿入れになる時に、役に立つものです。しっかりと身に着けていただかねば・・・」


華の小言が始まったので、たまらず耳をふさぐ。

そんな儂の手を耳からはがし、小言を続ける華に儂は降参した。


「もう、分かったのじゃ、着替えるから手伝え。」


「はい、音姫様。」


と華はにっこりと笑った。


今日は、お華(女中の華ではない。)とお琴の稽古。

一体これが何の役に立つのだ?と思っているが口には出さない。

また、華の小言が増えるからだ。


稽古が終わり、やっと有りついたご飯。


「音姫様がちゃんと起きていれば、朝も食べられたのです。」


・・・そうだった。


午後になり、華を伴って城下を散策する。

父様も母様もこういう所には五月蝿くない。むしろ城下へ出て民と交流しなさいと逆に言うくらい。

そういう方針な為か、父様や母様に対する民の人気は高い。

儂も・・・皆に好かれていると思ってはいる。

暫く散策していると、店先に出している屋台に気が付いた。


「華、あれは何じゃ?」


「音姫様。あれは『今川焼』という物です。」

「あの中にはたっぷりの餡子が詰まっており、たいへん美味です。」


「ほう! それは美味そうじゃのぅ。」


儂は屋台に近づき、まじまじと観察する。

鋳物の型に生地を流し込み、餡子を乗せ焼いているよう。


「おお、確かに美味そうじゃ!」


「姫様。お一つどうですか?」


「うむ、貰おうかの。」


儂は店主より『今川焼』とやらを貰い、ぱくりとかぶりつく。


「あつつつ」


口に入れた『今川焼』・・・中の餡子はとても熱かった。


「ひ、姫様、おあついのでゆっくりと食べてくだされ。」


「・・・先に言って欲しかったのじゃ。」


「音姫様。見れば分かると思いますが?」


「むぅ。」


しっかし・・・これはこれは・・・甘すぎない餡子といいこの皮?もとても美味だのう。

うむ、これは是非・・・”しろあん”と言うのも試さねばなるまい。


「店主。このしろあんと言うのも・・・」


「はい姫様。どうぞ。」


儂はしろあんを受け取ると、今度はちょこっとづつ食べる。

こちらも出来立てほかほかでとても美味。


「姫様。そんなに食べますとお夕食が食べれなくなりますよ。」


「むー美味しいから仕方がないのじゃ。」


儂はしろあんもぺろりと平らげ、さらにお土産にと何個か包んで貰った。

その後当然が如く・・・夕食は喉を通らなかった。


そんな平和な日常。何時までも続けば良いと思える日常・・・

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