『千重の桜』 ~華音の章~ 其の一
『桜』の元で準備を進める私と花子の元に子狐が帰ってきた。
封印が解けかかっている事が子狐にも分かったのだろう。それはつまり、夜魅の王も気付いているという事だ。
「む、子狐か。お帰り。」
「おかえりなさ・・・って誰ですか?この娘??」
ああ、そういえば花子は知らないのか。
とりあえず、昔馴染みの妖狐だと説明する。
「ああ、それで子狐ですかぁ〜・・・じゃあ、ここちゃんって呼びますね?」
「儂はもう、子狐ではないのじゃ。」
「そうだな。」
もう、立派な白狐だ。子狐とは呼べないだろう。
「これからは狐だな。」
「え、え〜〜〜わ、私はここちゃんって呼びますからね!?」
「ところでこの”いかにも”な女子は誰じゃ?」
花子が知らないのだから、当然、狐も花子の事は知らない。
狐には、私の属神で、手伝いをしてもらっていると説明する。
「華音様の”唯一の属神”。『厠神』の花子です。」
狐はむっとした表情になり
「ほう、そうか、儂は姫の”親友”の狐で・・・そうじゃの、名前は『桜井千重』じゃ。」
と”親友”を強調して自己紹介をする。
狐は昔から、千重が好きだったからな。名を持っていない狐はそう名乗ったのだろう。
我らの間では、「姫。」、「子狐。」で通っていたから、名前に必要性はなかったのだ。
まあ、私が付けても良かったんだがな。
「それはそうと、姫。」
「先程、『祠』から出てきたように思うたが、あの『祠』の扉は開けてはいけないのではなかったのか?」
「ああ、あれはな。花子のチカラで街にある店とココを繋いだんだ。」
「ああ、それでか・・・って封印は!?」
驚いたような表情を見せる狐。・・・まあ、本当に驚いているのだろうが。
「封印はもう少し奥だ。」
実際には、奥の広間に封印がある。
まあ、念の為に扉は中から開かないように簡易的な封印はあるのだが。
その後も、あれやこれやと質問攻めにあい、ようやく落ち着いた頃・・・
「ただいま。姫。」
と、狐は照れながら言った。
「お帰り。狐。」
・・・
・・・
・・・
「狐。お前に頼みがある。」
私はそう切り出す。結界の事もあるが、当面の心配がある。
・・・香奈の事だ。
香奈は、”普通”では無い。霊的なモノが見えている。
見る”チカラ”があるという事は、そういうチカラを糧とする奴等・・・低級な夜魅の標的となる可能性を示している。
香奈の”チカラ”、其れはおそらく・・・
「桃井香奈という少女を守って欲しい。」
「桃井香奈?姫では無く、その少女を守るのか?」
狐は少々いぶかしげな表情を浮かべるが、「分かった。」と言ってくれた。
狐には、霧華に転校生として、入り込んでもらう事にした。




