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『霧島華音・結』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第3章 『黒歴史ノート』 ~直哉の章~
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『黒歴史ノート』 ~直哉の章~ 其の十二

香奈のHPは勢いよく減っていく。

同レイド内の別パーティーなので、詳しい数値はわからないが・・・

・・・どうやら、『幻界の秘薬』の効果で0になる事は免れたようだ。


「回復は私にお任せくださいな」

「華音様と香織ちゃんは詠唱の終わってる魔法を!」


言うと、『裂光』は香奈の回復を行う。


「『ハイ・ヒーリング』」


ゆっくりとHPは回復しているようだが、全快にはまだ暫くかかりそうだ。


「『エクリプス』」


「『クリムゾン・ノヴァ』!」


詠唱の終わっていた極大魔法を発動させる、『深闇』と香織。

放たれた漆黒の炎は、『コマンダーベータ『キャノン』』の砲塔を完全に破壊する。

これで、後方の城下町に対する被害も減るだろうと思った矢先、砲塔を失った『コマンダーベータ『キャノン』』は、金色から、銀色へとその色を変化させた。

要塞とも思えるその巨体が展開し、中から別の・・・大剣を持つロボット的なフォルムの『ベータ』が現れた。


『コマンダーベータ『ブレイド』』


銀色に輝く、巨大なベータ。大きさ的には『サイクロベータ』程はある。

『コマンダーベータ『ブレイド』』は大剣を構えると、その巨体とは思えぬスピードで迫ってくる。


「香奈ちゃんの回復には、まだ時間がかかるわ〜」

「暫く3人で持たせてくださいな」


「簡単に言ってくれるっ」


俺は迫りくる大剣を『パリィ』する。

スキルの発動は完璧な筈なのに、腕に、体に衝撃が走る。


「っと、おいおい・・・『パリィ』しても、HP削られるぜ?」


洒落にならんっ

『パリィ』は最終手段として、回避に専念するしかないな。


「『シャドウバインド』」


『深闇』の魔法が『コマンダーベータ『ブレイド』』の動きを止める・・・が、其れも僅かの事。

闇のいばらを強引に引きちぎり、目標を『深闇』へと変える。


ブゥゥゥゥゥン


風切り音を上げ、振り下ろされる大剣。

『深闇』の姿が一瞬で消えると、数メートル後方に出現する。回避用スキル『ミラージュエスケープ』だ。

『ミラージュエスケープ』は消えている間は完全無敵だが、出現後に若干の硬直がある。なおも、目標は『深闇』。


「『プロヴォーグ』!!」


俺は、ヘイトを取るスキルを使い、強引に目標を変える。


「こやつ、直接的な攻撃魔法でなくてもヘイトが上がるようだな。」


「後衛にとっては厄介ね・・・」


「しかし、逆に言えば”攻撃を加えない限り攻撃は来ない”という事でもあるな。」


振り下ろされる大剣をステップで回避、通常攻撃を加える。

兎に角、コイツの攻撃をもらう訳にはいかない。俺なら2発程度耐えられるかもしれないが、後衛の二人はおそらく即死だ。


「お兄ちゃ〜ん♪ お・と・り・・・よろしくね♪」


ぱちんとウィンク。


「無茶言うんじゃねーーーー!!」


相変わらず、むちゃくちゃ言う妹だ。まあ、香奈と『裂光』が居ない現状、俺が前衛を支えなければならないのは事実だ。

ここは、回避重視で行くしかない。


振り下ろし、サイドステップ、横薙ぎ、バックステップ、一瞬のタメの後、大きく横に薙ぐ・・・スキル!?

モーションは『スラント』に似ている。躱しきれない!?俺は『パリィ』で受け流す。

くっやはりHPが削られる。それも、最初の攻撃よりもダメージが大きい。やはり、スキルも使うようだ。

後衛の二人の魔法詠唱が完成する。


「必殺必中っ『ホーミング・レイ』!!」


香織の魔法はお得意の炎系ではなく、無属性『エネルギーボルト』の上位にあたり、必中効果のある魔法である。


「動き回る敵には、こっちの方が確実なのよね!」


この時点で、ヘイトは香織に向く。


「我が手に、全てを斬り裂く漆黒の刃を!『シャドウ・ブレイド』」


『深闇』は漆黒の剣を生み出し、斬り込む。斬りつけられた箇所に闇が生まれ、炸裂する。


「『漆黒』・・・暫く変わろう。」

「回復しつつ、攻撃の準備を・・・」


俺は少し距離を取ると、エクスポーションを惜しみなく使う。HPが全快する最上級のポーションだ。徐々にHPが回復していく。

だが・・・『深闇』の回避は『ミラージュエスケープ』頼み。幾らヒットアンドウェイに徹していても、限界がある。

全快になるのを待たずに、戦線に復帰する。


「『グランドクロス』!!」


お得意の縦斬り→横斬りと繋ぐスキルを叩き込み、ヘイトを取る。

『深闇』は再び距離を取ると、魔法の詠唱を始める。

その間に魔法の詠唱の終わった香織。


「お兄ちゃん、そこどいて!!」


・・・どっかで聞いたフレーズだ。


「『エクスプロージョン』!!」


ドンッドンッドンッ・・・爆発が連続的に起こる。

効果時間の長い魔法で、足止めをするつもりの様だ。


「『スラント』!」


発動の早いスキルで再びヘイトを取る。『深闇』の詠唱はまだ終わっていない為だ。

「コマンダーベータ『ブレイド』」の大剣が、俺の良く知った軌道を描く。縦斬り→横切り・・・『グランドクロス』だ。

最初の縦斬りを何とか回避するも、次の横切りがかすめる。直撃では無いが、HPがごっそりと減る。

先程の回復が無かったら、正直危なかった。

こんな綱渡りの様な戦いが続く。


「回復完了・・・お待たせしましたっ『シールドバッシュ』」


盾を突き出しての体当たり。手早くヘイトを取りつつダメージを与える香奈。


ブォォォォン


振り下ろされる大剣の攻撃も、『ポイントガード』で完全に防御する。


「『フラワーアレンジメント』はまだ使えませんが、単調な攻撃ばかりの様なので、大丈夫です。」

「皆さんは攻撃に専念してください。」


『コマンダーベータ『ブレイド』』の攻撃を完全に無効化できる香奈が加わると、状況は一変した。

攻撃を連続で加えた後、香奈がヘイトを取り攻撃を無効化。そしてまた、攻撃を連続で加える。

何回か繰り返すと、『コマンダーベータ『ブレイド』』は動きを止めた。

銀色だった色が赤銅へと変わり・・・展開する。

中から現れたのは・・・

・・・人型。

背丈は1m80cm程だろうか、おおよそ人と変わらぬ姿の『ベータ』が現れる。


『コマンダーベータ』


人の姿の『ベータ』は、人と同じ言葉を発した。


「我らは、過去にこの星を出て、新たな星を目指した者。」

「だが、我らの新天地は見つからず、数千年の時を経て、この星へと帰還した。」

「我らの文明は既に滅び、新たな生態系の元に再生した我らが星。」

「我らが故郷を返してもらおう。」


『ベータ』とは、元々はこの星・・・『アース』に住む人間だった。

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