『黒歴史ノート』 ~直哉の章~ 其の七
「よっ久しぶりだな、火燐・・・それと、『深闇』!?」
「凍夜兄ぃ・・・心配したんだから!」
「ん?、何の事だ?」
俺は火燐の強さを知っているし、特には心配は・・・していたな。
まあ、何とか合流できたって感じだな。
「直哉、香織、感動の再開は後だ。」
『深闇』の声にはっとすると、盾使いの・・・『聖乙女』香奈が、一人でビーム攻撃を捌いていた。
・・・出来る。
「助けてーーー」
言動とは裏腹に、綺麗にビームを捌く『聖乙女』。
しかし、スキルのクールタイムになってしまうのは不味い。
俺はすぐさま援護に向かう。
「えっと・・・『聖乙女』」
「メインのガードは任せる。」
「俺は、サポートしつつスキルによる打撃を加える。」
「・・・はいっ」
「あ、でも・・・『聖乙女』はやめてください・・・『香奈』でお願いします。」
「分かった、香奈。」
盾スキルで攻撃を捌く香奈、その隙間に大剣スキルを叩き込む。
大剣スキルを入れる事で『ガーディアンベータ』の攻撃間隔をが広がり、必然的に香奈のクールタイムも稼げる。
「ふむ、前衛二人がらぶっている様に見えるな。」
「むむむむ〜〜〜〜」
「お兄ちゃんっ!! デレデレしないで!!」
『深闇』の言動に香織が反応する。
・・・呼び方が昔に戻ってるぞ・・・妹よ。
「してねーーよ!」
兎に角俺は、即座に否定する。
「ブラコンなのかな?」「ブラコンだな。」
香織のブラコン説がささやかれる中も着々と『ガーディアンベータ』を追い込んでいった。
元々の3人の連携がかなり取れていた事。そして俺と香織も阿吽の呼吸で連携が出来る事が大きいのだろう。
「そろそろ、来るわね・・・」
『ガーディアンベータ』はHPが残り30%を切ると『全体攻撃』をしてくる。
この攻撃に耐えることが出来ない。故に攻略不能と言われていたのだ。
「『ガーディアンベータ』のHP・・・残り31%・・・」
「タイミングを合わせて、最強の攻撃を全員で叩き込み・・・一気に殲滅する!」
ならば、使われる前に倒しきる。
「火燐ッ」
「わかってる!!」
「「封印されし、二つの武器の真の姿を此処に!!」」
俺と香織の武器『覇皇龍斬剣”戒”』、『華恋鳳凰”結”』
『黒歴史ノート』に書かれた俺達専用の最強武器。
二人が揃って初めて真の姿を現す。
「『覇皇龍斬剣”皇”』ッ!!」
「『華恋鳳凰”結婚”』ッ!!」
武器のチカラを開放。即座に魔法の詠唱に入る香織。
深闇も同様に詠唱に入る。
俺と香奈はその間、防御に専念し機会を窺う。
「ん、おっけ。」
「こちらもだ。」
「次のビームを逸らした後に叩き込むぞ!」
「香奈!」
「了解ですっ! 直哉さん。」
「『ハードシールド』!!」
香奈は、攻撃入りやすいよう全体を覆う『ゾーンシールド』ではなく、効果範囲が狭いが視界の良い『ハードシールド』を選択する。
「香奈・・・凄い・・・」
効果範囲が『ポイントガード』より少し広いだけの『ハードシールド』で、『ガーディアンベータ』の大型ビームを逸らす。
並みの盾使いじゃない。香奈の盾熟練度は、トッププレイヤーのそれと引けを取らない。
シャーーーーッ
香奈のシールドスキルによって、ビームが真っ二つに両断される。
「今です!!」
「おうッ!!」「おっけ!!」「うむ。」
「『チャージ』・・・『シールドソーサー』!!」
「・・・深き闇に飲まれるがいい・・・『エクリプス』」
「我が漆黒の一撃を受けよ!! 『オーバーエンド』!!」
「火燐ッ!!」
「とどめよ!! 全てを焼き尽くし・・・灰塵となれ!!『クリムゾン・ノヴァ』!!」
光の弧を描く『アイギス』、収束する深い闇、『ビームソード』の様に巨大な剣撃、巻き起こる炎の渦。
それらは、相乗効果を生み、一つの光となって弾けた。
プシュウウウ・・・
『ガーディアンベータ』はガクリと膝をつき動かない。
「勝った・・・?」
(システム再起動・・・)
(コード『サテライト』起動・・・)
「まだだ!!」
まだ終わってはいない。
「何で!?」
「HP0になったハズよ!」
「『ガーディアンベータ』のスキルか・・・」
「おそらく、HPが0になっても、1%残して再起動するという事なのだろう。」
多分、『深闇』の言う通りだろう。
おそらく、以前にも同じ方法を取ったパーティーがあってもおかしくは無い。
事実、この4人の攻撃を合わせれば、30%のHPを削り取ることは可能なのだ。
これをフルレイド、最大人数である24人で出来ない訳がない。
つまり・・・
・・・『全体攻撃』・・・『サテライト』は必ず発射されるのだ。
「何よそれ!?」
「私達の夢なのに、そんなの知らないわよ!?」
「大丈夫だ、火燐。」
「これが、ゲームであり・・・俺達の夢である以上、勝つ手段はある。」
そう、最悪1人だけなら死なない。
以前入手した『幻界の秘薬』を使用すれば良い。
しかし、誰を生かす?
その後の建て直しを考えたら誰が適任だ??
(『サテライト』発射準備完了。)
(発射10秒前・・・)
「『ダークネスレーザー』」
キィィィィィン
『深闇』が闇属性魔法で攻撃する。
(ハウリングシールド正常稼働・・・)
(発射7秒前・・・)
「バリア・・・」
ちいっ やれる事をやりながら考えるッ
「『グランドクロス』!!」
キィィィィィン
「物理攻撃も駄目か。」
当然物理攻撃も効果は無い。
「・・・『サテライト』・・・上から?」
「香織ちゃんっ私に浮遊魔法!」
「・・・私の下に入ってください!!」
(発射3秒前・・・)
「わ、分かったわ!」
「『レビテーション』!!」
香奈の体が、ふわりと3m程浮上する。
「上からの攻撃をスキルで防ぐつもりか!」
香奈は全員に来る攻撃を上で受け止める。
それならば、香奈のスキルがクールタイムになるまで、俺達にダメージは届かない筈だ。
ならば、状況を見て、香奈に『幻界の秘薬』を使えば良い。
「もう・・・これしかありません。」
まったく・・・とんでもない事を考え・・・
見上げた香奈は・・・
「あ、スカートの中が・・・」
「へ? 上見ちゃ・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!」
べしっ
横にいた香織に叩かれる。
「お兄ちゃん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ちょっと待て、妹よ。
今はそれど頃じゃ・・・
(発射1秒前・・・)
(発射。)
そして、ボスの間全体に光の柱が降り注いだ。




