『黒歴史ノート』 ~直哉の章~ 其の三
俺は明りのある通路を慎重に進んでいる。
途中、生活感がある・・・つまり、鍋とか火を起こしたような跡がある部屋があった。
しかも、ちゃんと排気が出来るように作られていた。
「明らかに、人工の物だな。」
竜の巣に何故??
盗賊団か何かが、アジトにでも使っていたのだろうか??
だとすれば、別の入口も存在するだろう。
竜の巣の奥・・・竜が入れない細穴の奥。
もう一つの入口さえ見つからない様にすれば、最高の番犬ならぬ番竜だ。
しかし、それらしい話は全く聞けなかった。
盗賊や山賊が出るならば、それなりの噂がある筈だ。
その疑問は、別の答えで明かされる事となった。
通路の奥から、人の気配がする。
少し広めな空間に、椅子やテーブル、生活雑貨が並ぶ。
一際大きな魔法の明かりの下、一人の女性が椅子に座り編み物をしていた。
「え?」
俺は思わず、変な声を出してしまった。
「おかえりなさ・・・え?」
女性の方も似たような声を上げる。
「す、すまん・・・竜に攫われたと言う、リミアさんを探しに来たんだが・・・」
「・・・ひょっとして、リミアさんかい?」
「え、ええ・・・」
「すまない、ちょっと状況を整理させてくれ。」
竜に攫われたリミアさんは、洞窟で普通に生活しているように見える。
そして、先程「おかえりなさい」と言いかけた。
つまり、誰かと生活している。
・・・十中八九、恋人のマークだろうな。
その恋人のマークとの間柄を村長は認めていなかった。
という事は・・・
「つまり、だ。」
「攫われたのは演技で、村を出て、恋人のマークとここで生活している。」
「そういう事か?」
「・・・はい。」
「分かった。さっきも言ったが、俺は村長からの依頼で竜に攫われたリミアさんを助ける事になっている。」
「だが、リミアさん達にも事情があるんだろうし、マークを含めて話がしたい。」
「・・・分かりました。マークならすぐに戻ると思います。」
暫く待つと、マークは俺が来た方向と逆から戻ってきた。
・・・やはり、別の入口があるようだ。
俺は、マークにも事情を説明すると、話し合いを始める。
「俺は、村に戻った方がいいと思う。正直、この生活は長くは続けられない。」
「しかし、僕達の仲を村長が認めてくれなければ、村では一緒になれないんだ!」
「そうです!私達は、ここで・・・ひっそりと暮らします!」
「・・・あのなぁ、お前ら。」
「ここは村から1日と離れていない。もし、村の連中に見つかったらどうする?」
「それにお前ら、どうやってこの状況を作った?竜に攫われただぞ?」
「人を攫う竜・・・言葉を話すような竜はエンシェントドラゴンクラスだ。討伐隊が結成されてもおかしくは無い。」
「・・・」「・・・」
「なら・・・なら、僕達はどうすればいいんですか!!」
「だから、言ってるだろ?村に帰れ・・・って」
「ただし、竜を討伐して来たって土産をもって・・・な。」
この洞窟の・・・俺が入ってきた方の入口・・・あれはやはり、竜の巣だ。
俺が入った時は、たまたま餌でも取りに行っていたのだろう。
それに住み着いている竜もエンシェントドラゴンなんかじゃない。
恐らくは、レッサードラゴンか何かだ。
それを倒し、竜から助けた事にすると言うシナリオだ。
「たしかに、山岳側の入口にドラゴンらしき原生生物が住みついています。」
「だけど、僕の力じゃとても敵いません。」
「分かっている。」
「だから、俺と一緒に倒すんだ。」
「まあ、基本的に・・・影に隠れていればいい。」
「それでは、あなたの負担が大きすぎます!」
「いやいや、構わないさ。」
「元々、竜を倒すくらいのつもりで来たからな。」
「それに・・・」
「「それに??」」
「竜を倒して、二人を村に戻さなきゃ報酬が貰えない。」




