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六話

「お喚(よ)ばれされました!――あたしは悪魔のリズリリス。汝(なんじ)の魂を贄(にえ)として、お願いを叶えるよ。魂の質(しつ)によって叶う範囲はあるけどね」


 さーて、次の仕事だ。もう三件目だね!


 喚ばれたのは、白いお部屋の中みたい。あたしが五人くらい寝れそうなおっきなベッドがある。

 おっきな窓に広くて豪華なお部屋、綺麗だあ。


「せっ…成功しましたの!?」

「んー?」


 あたしを見て驚いてる人間さんは、女の子。尻もちをついちゃって、ふわふわの髪が泳いでる。


 透き通ってて綺麗な魂だなあ。でも、ぐわにょりしてる。左右に揺れて、上に下に伸び縮み。変てこだけど綺麗な人間さんだ。


「あの、あなたは悪魔、なのですの?」

「うん。そうだよー」


 あたしは空間のポケットから鎌を取り出して、刃を伸ばしてみる。


「わ、分かりましたわ!…ですから、しまってくださいまし!」

「綺麗な人間さん、あなたの願いはなあに? 贄とする魂の質に応じて、あなたの願いを叶えるよ」

「わ、わたくしの願い…叶いますの?」


 うんうん。契約してくれそう。魂も綺麗で柔らかそうだし、これは良いかも!


「うん! 綺麗なお姉さんの魂、綺麗で質も良いから、だいたいの願いは叶うよ!」

「…そう、なの。他の人の魂じゃダメですの?」


「そうだよー。契約は、自分の魂でのみ自分の願いを叶えられるの!」


 理解が早い人間さんだなあ。すごい。

 うん?俯いて何かぶつぶつ言ってる。

 よいしょとしゃがんで、声を聞いてみる。


「わたくしの…願い。そんなの、決まってる。あの泥棒猫に奪われた…あのお方を、取り戻したい。……あの女…許せない。わたくしの、婚約者を…!!」


 がばっとお姉さんが顔を上げた。びっくりしたあ。

 あれ。魂が、濁ってきてる。


「…何でも、叶うの?」

「う、うん。綺麗なお姉さんの魂の質なら、だいたいのことは」


「でしたら、わたくしの婚約者――サリウスさまを奪った、フィニカ・ヘーゲルの命を…奪って。そして、わたくしのサリウスさまを、取り戻すの」


 うーん。この願いは、あんまり良くないかも。


「えっと、それじゃ願いごとが二つになっちゃうよ?…それに、奪った人間さんが死んでも、婚約者の人間さんが返ってくるとは限らないよ? いいの? それじゃあお姉さんは幸せになれないよ?」


 あたしはお姉さんの瞳を覗き込んでみる。小刻みに揺れてるし、瞳孔が開いてて、冷静には見えない。


「だって!…許せないもの!! わたくしにとって一番大切だったサリウスさまを寝取った、あの女が…憎い!…憎い!!」


 お姉さんはぽろぽろと泣いてる。背中を摩(さす)ってあげた。


「…そうだ。そうですわ」


 両目から涙を流しながら、お姉さんがあたしを見た。

 瞳も魂も揺れていない。落ち着いてきたのかな?


「…あの女とその一族が死んで、サリウスさまをわたくしの元に取り返すことまでが一つの願いよ?…人の婚約者を寝取る女には、当然の報いですわ」

「うーん…。婚約者さんのことは、お姉さんの魂をもらうまでってことなら、サービスでいいよ?」


 うん。お姉さんの魂の質的に、そのくらいは全然問題ない。

 ニヤリとお姉さんが笑った。


「それで良いですわ。契約してくださる?」

「いいよー。願いを叶えたら、契約成立だよ?」


 地面に座ってたお姉さんが立ち上がる。


「構いませんわ。――わたくしは、ローゼシア・フランチェスカ。侯爵令嬢ですの」

「ふーん。お姉さん、偉いんだ!…それじゃ、契約するね。――汝(なんじ)の願い、聞き届けるよ! ほいっ」


 あたしは指先にチカラを集めて、契約魔法を使った。


「叶いましたの?」

「もう叶えたよー」


 お姉さんが両手を見て周りを見て、首を傾げてる。

 叶えた願いだとお姉さんの近くは変わらないから、不思議なのかな。


「仕方ないですわ。サリウスさまの様子を見に行きますわよ!」

「んー? あたしも行くの?」

「当然ですわ!」


 お姉さんはあたしの手を掴もうとしたけど、空ぶった。

 うーん。実体化って疲れるんだよね。


「こほん。行きますわよ、リズリリス」

「いいよー」


 お姉さんがずんずんと扉に向かうのに、ふよふよと付いていく。


「うふふふふ。…これで、サリウスさまはわたくしのものなのね。さっそく手に入れるわよ。おーっ!…ほら、あなたもやりなさい」

「うん? おーっ!」


 お姉さんの真似をして、拳を上に突き出してみるとなんだか楽しかった。

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