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五話

「魂の回収の告知に来たよー!」

「あの時の悪魔か。……来たんだな」


 でっかい契約者さんがそろそろ美味しそうになったから、あたしは回収のお知らせをした。

 楽しみだなあ。


「うん。待ってたよー!」

「…待って、くれてたのか?……驚いたな。悪魔にそんな慈悲があったなんて」

「だって、すぐに回収しても、幸せを感じてなさそうだったからね」


 うんうん。魂も芯があるまま、ゆっくり収縮して満足げ。そんなに動揺もないみたい。


「……お前の都合か。…だが、あの時から三ヶ月も時間をくれたんだ。感謝している」

「そう? 良かったあ」


 人間さんからお礼を言われちゃった。上手く出来てるかも。あ、でも。


「…満足した?」

「ああ、コイツの築いた全てを、使い切ってやったよ。…もう借金しか残ってない」

「ふーん」


 でっかい人が座っていた、この間立場が逆転したおじさんを見てみる。

 よく見ると、髪の毛が全部残ってない。ツルツルだ。


 あたしが見てたおじさんを、でっかい人も見て笑った。


「…はは。契約でもしないとこんなこと出来なかったんだろうな」

「そうなんだ。人間さんって難しいんだね」


 おじさんから目を離して、ちょっぴり魂が縮み始めたでっかい人を見る。


「ああ、難しいんだ。母の薬代や妹が幸せに過ごせる金も、いくらでも手に入った。…だが、いくら薬を渡しても、母は死んでしまった。妹にはなるべく多くを残したつもりだが、もう、終わりか」


 でっかい人は天井を見て、ため息を吐いた。

 んー。なんか元気ない?困るなあ。


「告知って言ったでしょ? 五日後に、もらいに来るよー」


 でっかい人が目を見開いて、あたしを見た。今度は魂も膨らみ始めて良い感じ。


「……慈悲深いんだな」

「そうかな? 準備が出来てたほうが、人間さんは幸せなのかなと思って。今回から、告知してみることにしたんだー」


 元気の出てきたでっかい人を見る感じ、この考えは成功かなー。次からも告知することにしよう。


「それは、有難いな」

「そう? 良かったあ!」


 さて、告知も終わったし、帰ろうかな。

 あたしがドアからお暇(いとま)しようとしていると、でっかい人が声をかけてきた。


「……リズリリス。これは単純な興味なんだが、悪魔は幸せを感じた魂を回収する方が良いのか?」

「んー?」


 そうだった。人間さんには分からない話だよね。


「えっとねー。他の子の好みは知らないけど、幸せを感じていた魂の味のほうが、あたしは好きなんだー! それなら、幸せを感じたほうが人間さんも幸せ、あたしも幸せでお互いお得でしょ!」

「……味、ときたか。以前は魂の質とも聞いたが、なるほどな。俺の魂は、お前に食べられるのか」


 でっかい人があたしの唇を見つめてきた。ウインクしてみたけど、あまり反応は変わらないみたい。


「そうだよ! あたしの魔力になって、生き続けられると思えばいいかも?」

「……聞いておいて何だが、魂を食べるという話はあまり他の人間にはしない方が良いと思うぞ」


「ふーん。でもあたしはあくまで悪魔だからねっ。聞かれたら答えるよー」


 人を騙す悪魔もいるみたいだけど、あたしは首席だからね。


「確か、悪魔は嘘を吐かないんだったか。難儀なものだな」


 でっかい人はなんだか納得したみたい。んー。人間さんって難しい。


「それじゃ、五日後にまた来るよ! またね!」


 でっかい人と、ずっと黙ってた髪のなくなったおじさんに手を振って、あたしはお暇した。



△▼△▼△▼△▼△


 待ち遠しかったけど待って、五日が経った。


「魂の回収に来たよー!」

「…来たか。足労(そくろう)かけるな」


 机に座っているでっかい人間さんが、ペンを置いた。

 立ち上がって羊皮紙を丸めてる。


「待っててくれたんだ」


 良い契約者さんだなあ。


「ああ。悪魔との契約だ。いずれにしても、逃げても無駄なのだろう?」

「まあね」


 でっかい人は、二つの羊皮紙を丸めて机の上に置いた。なんだろう。


「…これは、遺言状だ。俺が死んでも、見ないでくれよな」

「うん? 分かったよー」


「ヤツは処分して、妹にも別れは告げてきた。心残りはないが、それでもな。……今となってはたった一人の肉親になる妹には、随分と泣かれてしまったよ」


 なんだか魂が縮んで、しょんぼりしてるでっかい人。うーん。


「…満足じゃなかった?」

「いや。満足さ。お前が契約してくれなければ、俺は国王殺しの主犯になっていた。母にも妹にも、最期に尽くせた。感謝している」

「そっかあ」


 ちょっぴり揺らいでるけど、芯はしっかりあって、でもほんわかしてる。うん、美味しそう。


「それじゃあ、回収するよ」

「ああ。…そうだ。三ヶ月前に、隣町で悪魔が出たという噂があった。お前のことだろう。気をつけろよ」

「うん、ありがとう」


 あたしはでっかい人の胸に手を入れて、魂を抜き取った。

 うん。柔らかいのに、芯は固くて、ちょっぴり熱い。じゅるり。


「いただきまーす! あむ!」


 ふにょっと食べれるのに弾力がある。それにサッパリと甘くて、いいね!

 あれ?でも、芯の中はスカスカになってる部分もある。不思議。


 味わってると、いつの間にか食べきっちゃってた。

 美味しかったなあ。今回は、成功かな?


 次は、甘くてふわふわな魂を食べたいなー。


 ふよふよと部屋を出ようとしていると、足元に赤い魔法陣が浮かんだ。

 お喚(よ)ばれされちゃった。あたし、ツイてる!


「いま行くよー!」

【悪魔のルール】

・悪魔は任意で実体化が可能。長時間の実体化は、疲労を伴う。

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