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四話

「そうか…俺の、願い……」


 部屋の中で座り込んだまま、でっかい人が何度も呟いてる。

 まだかなー。でも、良い契約が出来るかも。


「っふざけるな!! ワシは、バスコス・サイジェルノ・サー・カーリアス伯だぞ!…金も地位も名誉もある。この国の、伯爵だ!!……おい、ローランド。ワシへの恩を忘れたかっ!!」

「俺の、願いは……」


 おじさんの頭が真っ赤になって湯気が出てる。大丈夫かな?

 でっかい人の魂の揺れが収まってきて、またグツグツしてきた。決まったかな?


「逆転させたい。俺と主人の、立場を。…地位も名誉も爵位も。財産も」

「うん、いいよー。願いを叶えたら、契約成立だよ? もう取り消せなくて、魂が代償だけど、いい?」


「おい!!…な、何を願っている、ローランド、貴様、よせ…やめろ!――貴様ら、ワシの話を聞け!!――誰か! 誰か、ここに来い!!」


 おじさんが部屋の外に向かって叫んでる。

 でも、でっかい人の瞳もその奥の瞳孔(どうこう)も、落ち着いている。いいね。


「問題ない。…館の人間が来る前に、契約してくれ」

「はーい。――汝(なんじ)の願い、聞き届けるよ! ほいっ」


「やめろおおお!!……っは!?」


 指先にチカラを集めて、契約魔法を使った。

 目に見えるだけでも、おじさんとでっかい人の服が入れ替わった。

 人間さんって服も入れ替わっちゃうんだね。


「は…ははは! 入れ替わった、のか」


 ん?部屋の外からこっちに向かって来る足音がして、それからすぐに鎧を着た人間さんが入ってきた。


「どうなされましたか!!――ローランド様!」


 真っ赤だったおじさんの顔がみるみるうちに白くなっていった。なんか面白い。


「ああ。そこのバスコスが暴れ始めてね。――反逆罪だ。地下牢に放り込んでおいてくれるか?」

「き、貴様っ!」

「はっ! 承知しました!」


 おお。鎧の人間さんが敬礼してる。人間さんの敬礼って初めて見たなあ。


「――――ゥぐぅ…」


 あ、おじさん倒れちゃった。泡を吹いてる人間さんを見るのも、初めてだあ。

 鎧の人間さんが、おじさんを連れて行っちゃった。


 あれ?また、ガシャガシャって足音。

 鎧を着た人間さんたちが今度はたくさん来た。


「どうなさいました、ローランド様! バスコスが連れられておりましたが。……そちらの少女は?」

「ああ。バスコスは、俺に反逆した故に、投獄だ。…この子のことは、気にするな。――それより、これからやらねばならないことがある。夜分に悪いが、今から館中の者を集めてくれ」


 おお、いい感じに魂が燃え上がってるなあ。これは、幸せ味になるまで時間がかかるかな?


「承知しました。……奥様も、ですか?」

「…そうだったな。家族は、バスコスと共に地下牢へ閉じ込めておけ。身包みを剥いで、数日飯を抜いて弱らせろ」

「はっ…。いえ、しかし、奥様は同じ伯爵階級の……」


 うーん。やっぱり満足するまでは時間がかかりそうだし、一旦退散しよー。

 しばらくしたら、様子を見に来るね!


「構わん! 俺が全て責任を取る。やれ。兵たちよ、行け!」

「はっ、はい!」


「行ったか。……ははっ。はっはっはっ!! 俺のものだ。全て、俺のものだ!!」


 でっかい人が楽しそうに笑ってるのを聞きながら、半透明になったあたしは部屋を出ていく。

 今回も契約者さんが幸せになれそうで、良いことしたなあ。

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