目覚進歩
朝だ!
カーテンの隙間から光が漏れている。
鳥がチュンチュン言ってるよ。虹色の気持ち悪い鳥がね!
「あ、ここ異世界だったわ」
天井を見て、自分の着ている服を見て、さらに気持ち悪い鳥を見て、結果、現実を確認する。
周りはまだ誰も起きていない。ただし昨日のうちに寝れた奴は、だが。
何人か声を押し殺してまだ泣いている奴がいるし、なんども夜中に起きて動き出したやつもいる。
天井を見てボーっとしているのもいれば顔が緩んでる雑学くんもいる。
しかも山田君は寝ている。重症かな?
しかしみんな早いこと持ち直さないと戻るものも戻れなくなるよ?
時間を確認するか。
ていうか世界が違うのに言葉も数字も同じってどういうことだ?
文字はまだ見たことないからわかんないけど、同じじゃなくて『同じに見えてる』のかな?
うーん考えること多すぎ、しかも寝起きだから頭痛がする。
「時間はー、7時か...すこし探検しようかな」
うん暇だしね。怒られたら戻る。
ゆっくりとベッドから降りて静かにドアに向かう。
音を立てないようにドアを開けると向かいの女子部屋から誰か出てくる。
委員長かな?まだ寝ぼけてるように見えるから起こすために声かけよう。
「委員長―?寝ぼけながら歩くと危ないよー」
「...ん...」
んー反応が薄い、貧血でもなさそうだし単純に朝に弱いのかな。
委員長こと水野瑞樹は勤勉で品行方正で知られる。
遅刻もしたことがないから朝強いと思ってたけど意外だ。
「...ん?...て痛!」
「うわっと、だから危ないって」
委員長は寝ぼけて足の小指をドアの角にぶつける。
委員長はぶつけた拍子にバランスを崩して倒れるが俺がキャッチする。
「大丈夫?」
「ごめん...もう大丈夫だから話していいよ」
おっと女の子だもんね恥ずかしいよね、俺も恥ずかしい。
それにこの体勢だと抱き合ってるように見えるかな。とても恥ずかしい。
というわけで委員長から手を放す。
「ありがと、あぁ...やっと目が覚めた」
「委員長って朝弱いんだね、それに髪型、印象と違って寝癖悪そうだね」
赤い顔で呟く委員長に追撃を加えていく。
俺も若干さっきの余韻で顔が熱いが、それより委員長の髪がになる。
委員長は学校では、ストレートの黒髪で清楚を体現した人だからインパクトが大きい。
「そこはどうでもいいでしょう、それよりもこんな時間にどうしたの?今は七時頃だと思うけど」
「これからここに住むかもしれないからね、少し探検をしようかなって」
さっきよりも薄くなってるが依然赤い顔で俺の質問に答えずに話を逸らす。
俺の返答を聞くと委員長は、はぁとため息をつく。
「探検って...えーっと一緒に行ってもいい?」
「?まあいいけど、じゅあ行こっか」
「ちょっと待って髪の毛直してくる」
「へーい」
女の子だもんね気が回らなくてごめんね。
なら行きたいところでも考えとくか。
じゃあまずはテラスみたいなところを探そう、外が見たい。
あとは文字が知りたいから図書館か書庫、まぁ本があるところくらいかな。
「ごめんね、じゃあ行こっか」
「じゃあ最初はテラスみたいな外見渡せるところ探していい?」
「ええ、日光を浴びたいから丁度よかった」
なら探すか。
現在、委員長と歩いておりますが非常に気まずいです。
なんでかって?一言も会話が無いからだ。
仕方ないっちゃ仕方ない。
話題がないもん、あるにはあるけど重い空気になるもん。
俺、重い空気、嫌い。
そんなこと考えてると委員長が口を開く。
「今ここ歩いてるのって現実だよね」
「みんないるから安心しとけ」
質問には答えず、ただ励ます。
ぶっちゃけそうするしかない。
委員長は女の子だ、男よりも不安なのは仕方ない。だからただ励ます。
「ありがと...」
「......」
委員長のお礼を受け取りそれっきり二人とも黙った。
うーあー、重い!
内心悶えているとテラスみたいなのを見つけた。
内心歓喜した。
「すごいな...」
「うん...」
一言しか言葉にできない。
だってこんな光景、日本じゃ見れない光景だからだ。
見たこともない美しい蝶
気持ち悪い鳥
別の塔だと思える無骨だが重厚さを感じさせる城
見渡せる城下町の様な所
目を凝らせば見える山々
「綺麗...」
「でも現実ってことを思い知らされるね」
「雰囲気ぶち壊さないでよ」
「ごめんごめん」
軽口かわすくらいには仲良くなったし、気持ちも持ち直したかな。
「委員長、これからどうなるかな」
「わかんないけど頑張ろうね...あと」
「ん?」
「委員長じゃなくて、名前で呼んで、なんか寂しい」
もし元の世界だったら心にグッとくるが今はこの言葉が誰かに甘えたいという感情を表しているということがわかる。
「じゃあ瑞樹は俺のことも名前で呼んでよ」
「え!?」
「!?」
え!?
なんとも恥ずかしいらしい。可愛い。
不公平なので君付けになった。
「は、春君は、不安じゃないの?」
うむ戸惑うところがかわいい。
「不安だけどできるだけ早く帰りたいからね、踏ん切りはつけたよ」
「へぇかっこいいね、なんていうか男らしい?」
「俺に聞くなよ、照れるだろ」
「あはは」
なかなか仲が良くなったのではないだろうか。
今俺たちはテラスみたいなところの手すりに手をつき話している。
一見カップルみたいだ。
恥ずかしいが心地いいな。
「少ししたら本のあるところ探しに行くけど行く?」
「うん、でもなんで?」
「この世界って言葉と数字が元の世界と同じだから文字はどうなのかなって。こっちに来てからこっちの文字をまだ見てないから」
「あ、そういえば私も見てないや」
「うし、じゃあ行こうか」
でも本のある所かかこれは探すの難しいぞ。
誰かに聞くか?でも何故かさっきから誰ともすれ違ってないぞ。
人と本探しを並行させるか。
本のあるところを難しかった。
瑞樹とあっちかな?こっちかな?と探すのは楽しかった。
そんなこんなあって見つけたのは図書館であほみたいに仲が広い。
しかし文字も同じか、ついでに魔法のこととか調べるか。
これかな?
「瑞樹、魔法とか気になることないか?」
何かの本を読んでいた瑞樹に声をかける。
「うん丁度魔法のこと書いてある本読んでたんだ」
「お、じゃあ一緒にその本読もう」
そう言って瑞樹の持つ本を指さす。
「う、うん」
なぜかドもるがまあいいや。
一応時計を見る。今は7時半か30分したら戻るか。
んでなになに?
[魔法とは想像したものを現実に現すことである。
発現には形作る言葉、形の想像、魔力の形成、言葉を口にする。
の4工程を踏む必要がある。
だが熟練者は想像のみで発動できる者もいる。]
発現のための簡易的な呪文へ[P6]
[魔法には種類が無限に存在し未だ底が見えない、が親和性のようなものが存在し得意不得意がある。
それは主に髪の色で判断ができる。
しかし髪の色は魔力を操ってから変色するのである程度の年までは得意な魔法は何かがわからない。]
髪の色による得意不得意の早見表[P50]
[そもそも魔力とは大気に満ちる物質である。
人も動物も魔物もありとあらゆる生物が自分で作ることのできる唯一の物質である。]
魔力の使い方[P65]
じゃあ、使い方のところ読んで終わりにするか、時間的にもうあまりない。
「じゃあ瑞樹、この魔力の使い方のところ読んだら戻ろうぜ」
「え...あ、うん」
よしじゃあ読むか。
[魔力とはどこにでもあるものである。
生き物の生み出す量と世界の生み出す量には絶対的な差があり熟練者は大気に満ちる星の魔力を使うことができる。]
[魔力は身を流れる血を思い浮かべる、水を思い浮かべる、体の中心をかき回すように想像するなど多種多様な操り方がある。
これは大きく個人によって違いが出るので自分のやり方を模索する方が魔力の運用には効率がいい]
[魔力は時間経過で回復するが、本人の魔力運用能力により回復の速度が変わる]
[魔力を動かせたらP50へ]
[魔力は初めて動かすと熱を持つので熱を持ったらゆっくりと回転させてから全身に流しましょう]
アバウトな本だ、瑞樹も微妙な顔してる。
えーっと血とか水とか体の中心かきまわすとかなんていうか、難しい。
でもなんとなくイメージは分かった。
体の中心にある流動するものがあるとしてそれを粘土をぐちゃぐちゃにするかのようなイメージでかき回す、ていう想像をしてみた。
結果、変化なし
次、さっきのに+丹田を踏ん張ってみた。
お?なんか腹が暖かくなってきた。
って熱!
「熱!」
声に出ちゃった。
「大丈夫!?どうしたの!?」
「大丈夫だよ。本の通りに魔力動かそうとしたら腹のあたりが熱くなった。だから本の通りにすれば治るはず」
「大丈夫ならいいけど、気を付けてね」
「おう」
心配させちゃったよ。
回転させながら、全身に流す。
回転はミキサーを思い浮かべ、全身へ流すのは風呂にお湯が満ちていくのを思い浮かべた。
そしたら何とかなった。
「ふぅ、なんとかなった」
なんか全身が暖かい、ちょっとジャンプしてみる。
「3、2、1、ほっ!」
お、おう!3メートル位ジャンプで来た!天井高くて助かった。
危うく屋内でルー○使った○ラクエになるところだった。
「え、すごい!」
瑞樹が自分のことのように喜ぶ、照れる。
「どうやったの!?」
やり方聞いてくるので、本の通りにやったことと思い浮かべたイメージの内容を説明した。
「よし、なら私もやってみる」
「残念、時間切れ」
時計を見ると8時半だった。
9時に話があるのなら、ごはんとか食べなくちゃいけないだろうからもう帰らなくちゃね。
というわけで瑞樹には少し我慢してもらおう。
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