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戒戒真実


目を開ける。

綺麗に装飾を施され、手入れの行き届いているかキラキラと反射している天井が目に入る。

「知らない天」

井だ、と言おうとしたところに俺の顔の部分に影が出来る。


「あ、起きたねオオトモ君」

俺の渾身のパクリギャグを遮ったのはミズキの声だった。


「悪い、何時間ぐらい俺は寝てた?」

頬がひきつるのを自覚し顔を背けながらミズキに聞く。

馬車に乗ったあたりから記憶がない。


「丁度1時間位かな」


「目覚めた瞬間に悪いけど、キカイの前に全員集合。だって」


「先、行くね」

ミズキは質問に答えると同時に矢継ぎ早に用件を告げ、俺のそばから離れて行く。


......キカイの前?

あぁ...そうか。

アカツキが、ハルが死んだからか......




この世界のキカイを所有、又は近くにキカイが存在している。

そして何かが死ぬ、その何かが称賛されるような存在であった場合、キカイの前で燃やし追悼する...らしい。

そうすることでその何かが最後に想い描いたことを文字としてキカイが表示させ後世に伝える...らしい。


鍛練の合間合間に行われた勇者たちが死んだ時、その死体が持ち帰れた時にこの儀式をすると教えられた。

その時は正直この世界を楽観視していたためその儀式に何の意味があるのかと思っていたが...

こうも早く体験するとは思っていなかった。


俺たち勇者はその功績に関係なくこの世界で死んだ場合この儀式が行われる。

死んだ、死んだ。と何度も思っているがそんなに心は揺れなかった。

でも、俺の剣で胸を貫いたあの魔族の顔が脳裏に張り付いて消えなかった。

その顔はいつしか【なんで】という悲観に暮れた顔ではなく【はぁ...】とため息をつくような呆れた顔になっていた。


頭を振る。

あの光景が変化するわけないんだ。

理屈でそう考える。

もう既に考え出してから10分は経っている。

皆を待たせているかもしれない、そう思って意識を逸らすと体が軽くなった気がした。


身を起こすと体に掛けてあった薄いタオルが落ちる。

眼下には替えの者だと思われる服がある。

今着ている服を見ると遠征に行った時のままだったので横にたたんであった替えの服を着る。

剣などはなかった。

自害防止だろうか。

.......


なんだか思考が悪い方向にズレ始めたので少し駆け足でキカイのある部屋まで向かった。



キカイのある部屋まで来た。

ゆっくりと、音を立てないように扉を開け中に入り周囲を窺う。


ハルの遺体はキカイの前に置かれており、周りには燃やすために炭が置いてある。

火が広がるのを防ぐためか何らかの魔法の施されたシートが敷かれておりこの白い空間では異様なまでに目立っている。


皆の顔を見る。

泣いている者、呆然としている者...

一時間は経ったといえど、今回の衝撃はそんな簡単に消えてくれないだろう。

その証拠に俺が入ってきたことに気を向けるのは殆どいない。

ミズキはや賢者さん、王様とその取り巻きがこちらに顔を向ける。

ミズキは見るだけで何も言わず顔を逸らし、賢者さんも同様だ。

王様たちは気遣うようにこちらを見て顔を逸らす。


この時の俺の脳裏にはあの魔族の顔、体にはハルの遺体の軽さ、手には血の感触が思い浮かぶ。

え...血?


急ぎ足でミズキの隣まで行ってしゃがみ込み考える。

あの時は気が気でなかったから気づかなかったが俺は血なんか見ていない。

正確には【ハルの血】は見ていない。

背負ったのに手には血が着いていないし、背中にだって血は着いていなかった。

服にだって着いていなかった。


上半身と下半身が分かれていて血がないなんてことはない。

おかしい、おかしい!


「賢者さん!こんな時に悪いですが聞きたいことがあるんです!」

立ち上がり、思わず声を荒げる。

視線が刺さるし、王様たちが何事かとこちらを見つめる。

賢者さんは微動だにしない。


「魔族の特徴で血に関することで1つ、魔族って血が流れてましたか!?」

このことが聞きたかった。

もしかしたらという可能性に唇が震えるし、泣きそうだ。

でも聞かなければならない。


今の今まで忘れていたが魔族の特徴として大きなものが1つある。

それは人間と魔族とを分ける大きな要因だ。

その特徴というのは【魔族には血が流れていない】ということだ。


「...魔族には、血が流れていない......」

聞きたかったのに聞きたくなかった内容は俺の心に大きな攻撃を与える。


もう対面なんか気にしない。

泣きながら破顔しながらハルの遺体の前まで走る。

俺のしゃがんでいた位置は部屋の中央から少しずれた所、キカイは部屋の中央にあるから遺体までは2秒とかからず着く。


俺の奇行に賢者さえも唖然とさせるがそんなの関係なしにハルの遺体を引きずり、キカイの前で持ち上げる。

その手を引き上げキカイの前にかざす。




名前なし 真似っこ族 18歳 ?㎝ ?㎏ 状態異常 死亡


魔力850000


才能 真似 


技能 姿写し 心写し  


種族固有技能 姿形変更


加護 魔王


庇護 なし


称号 間抜け 愚か者 所詮は雑魚 ヘタレ どんでん返し 策士 


最後の言葉


本当に人間って馬鹿




空気が凍る。

動きも止まる。

呼吸すら上手く出来ない。

俺は地面に倒れこむ。


部屋に女性の戸惑う声が反響する。

それに伴い、王様たちの混乱する声が聞こえる。


苦しくて呼吸ができない。



『ハル・アカツキを除く全勇者の存在を確認。これより伝えます』


『ハル・アカツキはタルト・ジーク・ヒガンとの誓約を切断しました。』


『タルト国に属するものはハル・アカツキに対する攻撃が可能となります』


『以上です』

機械的なそれでも女の人の綺麗な声が響く。


その言葉に返事をするように泣き笑いのような戸惑った声が反響する。


その声が耳に届くと同時に意識が完全に落ちた。


『オオトモ・タツヤの称号欄に【探偵】【自身を戒めるもの】が発現しました』


『この情報は随時開示されます。ご注意を』




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