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自嫌自嫌

サブタイトルの四文字は別に四字熟語じゃないです。

ただ本編をそれっぽくまとめただけです。

読み方は自由です。

ちなみに今回は個人的にじいやじいや、と読んでいます。


俺たちはあの洞窟から脱出した。

洞窟から出た俺たちを迎えたのはここまで俺たちを連れてきた王国の兵士と賢者さんだ。

今回の遠征は剣星不在かつ賢者の体調不良で現在の即戦力たる俺たち勇者のみでの遠征だった。


そして今回勇者のみだった遠征は大失敗に終わった。

後悔と罪悪感、そして少しの幸福感が心を満たす。

今の俺の顔は悲しみに彩られているだろう。

ハルを死なせた後悔、今まで何故か敵視してしまった罪悪感、生き残った幸せ...

俺は自分が大嫌いになった。




遠征に行ったときの不安とは違う顔の暗さ、空気の重さに何人もの兵士が近づいてくる。

そして俺の背に乗っかっているハルの遺体に目を向け...驚愕する。


「如何なされたんです!?いったい洞窟で何が!」


「魔族の襲撃で...」

ミズキが答え...押し黙る。

眼には涙が溜まり、唇は噛み締められている。

恐らく、嗚咽で声が詰まったのだろう。

正直言って女の子のする顔じゃない。


でもその顔は前を向いていて何らかの決意が秘められている。俺なんかにでもわかってしまう程の決意を...

そんな顔を見ると自分がさらに矮小な存在だと思い知らされるし


【どうせこの短時間で決められることなんて大したことない】


なんて邪推してしまう自分が勇者でいいのかと考えてしまった。





私は先頭を進むオオトモ君に背負われているハルを見る。

頭に浮かぶのは急に変わってしまった彼に対する印象、考え、周囲の空気...

彼に湧いた感情は初めは好奇心、興味

次いで湧いたのは不快感と恐怖、嘲りと失望...

説明のつかない感情が次々と湧いてきて、でも布団の中のような心地よい感覚だったから、違和感があっても、後悔の感情が湧いても、その心地よさに身を委ねて

その結果が今のハルで今の自分たちで今の状況で今の感情で...


蹲って頭を抱えたい、家の布団に包まりたい。

この場で大泣きしたい。

今すぐハルの遺体に抱き着いて謝って泣いて逃避して誰かに依存したい。

肉欲だろうと何だろうと何かに溺れたい。


洞窟ももう出口だ。

出口から射す光は鍛錬の時間にハルが行ったライトのようにゆっくりと私たちを包むかのように照らしていて、暖かい。

なんでなんだろうと唇を噛み締める。

唇が切れ、口内に血が漏れるがその血の味は分からなかった。


怒りが湧いてくる。

今までのハルに対する感情を押しつぶすかのような怒涛の勢いで胸の内に溜まっていく。


私たちがこっちの世界に来てしまった原因は何だ?

タルト国?

魔王?

あの体育館?

.........もう帰りたい。


「こんな世界...無くなればいいのに...」

か細い、誰にも聞こえない声で呟いたのに自分にだけは確かに声が聞こえた。




兵士たちが悲観に暮れた他の勇者たちをゆっくりと気遣うように馬車に乗せている。

俺とミズキ、眼球氏ことアザカは幾分落ち着いているので最後に乗ることになっている。


兵士たちは俺の横に寝かされているハルの遺体を見ては目を逸らしている。

当然の反応だ。

困惑し、罪悪感が湧き、後悔する。

そして疑問が浮上し、思考を切り替え目の前の謎から目を逸らす。

当然だ。


なんでこうなったのか、どうしてこうなったのか。

やっぱりハルと瓜二つの魔族のせいなのか。

でもどうやって、あの賢者の結界の張られた城に俺とハルの2人だけで倒せる程度の魔族が侵入できるのか。

偶然魔法が得意な魔族だったのかもしれない。

そんな妄想が脳裏を過る。


答えの出ない思考に1つの光景が浮かび上がった。

俺がハルと協力して魔族を倒した時の光景だ。

魔族は『なんで?』というような驚いた顔をしていた。

その顔は万能ボンドでも使ったかのように思考に張り付いて剥がれなかった。

最後に実は遺体のハルが魔族で魔族だと思っていた方が本物ハルなんじゃないかと邪推した。


まさかな...と自嘲した時、馬車に乗る順番が回ってきた。

俺は馬車に乗り座った瞬間に意識を失った。




オオトモ君が意識を失ってから1時間ほどだろうか、城の城門を潜った。

私の思考はずっと怒りに満ちていた。

魔王を絶対に殺してやるとか、この城を破壊してやるとか、戻ったらまず最初に体育館を壊してやるとか...

なにか適当な理由をでっちあげ何もかも壊してやろう...なんていう魔王みたいな考えだ。

でも思うだけで何もする気はない。

これが無気力症候群か...

いや、出来るわけの無い事を考えているから厨二病か...


そういえば馬車が動き出してから20分ほど経った頃にあの洞窟の方向から謎の斬撃が空に向かって放たれたらしい。

洞窟の上にある山を両断して空を切り裂いて宇宙に飛んでったそうだ。

眼球氏が淡々と言っていた。

まぁ現在進行形で厨二病に侵されている私は何かも壊したいけど。


あれ?なんか何もしたくなくなってきた。

真っ白に燃え尽きた状態って言うのかな?

泣き叫びたい、八つ当たりしたいっていう欲求を押し殺したら結果燃え尽きた...か......

いっそのこと楽に死にたい。

でも聖女だし、リーダー的な立ち位置だし...

しかしリーダー的な役割の奴がこんなに情緒不安定で良いんだろうか?

少なくとも私だったら嫌だ。

何だったら『心を痛めた聖女』として引き籠りにでもなってやろうか。


the.現実逃避

楽な方へ楽な方へと思考と感情が縺れ合いながら流れていく。

『死にたい』なんていう馬鹿らしい考えも浮かぶ。

依存したいとも思った。

それでも早く帰ってやると決意した。

でもやっぱり人の死を見て、眠っているような顔を見て、目覚めない顔を見て


【自分はああなりたくない】


と思って、あくまで自分本位な考えに辟易して、決意したものを根底から覆すような考えまで浮かんで...

心は、これ以上自分を嫌いになりたくないと涙を流して

思考は、死にたくないと立場を利用して逃げればいいと吐き捨てて

感情は、今までにない怒りを生み出して


やっぱり私は怒っていると自覚して、死にたくないと自覚して自分だけは生き残ると決意した。 


そしてさっきまでの決意をすぐに捨て、仲間を見捨てる覚悟した自分は屑だと自覚した。




『オオトモ・タツヤ、ミズノ・ミズキ他31名の勇者の称号欄に【弱き者】【逃避者】【ただのクズ】【ヘタレ】【人間らしい人間】が発現しました』


『オオトモ・タツヤの技能欄に【直感】【迷推理】を追加します』


『ミズノ・ミズキから規定値ギリギリの怒りを確認』


『ミズノ・ミズキの称号欄に【怒】を追加します』


『以上の情報は随時開示されます。ご注意を』


『ハル・アカツキはタルト・ジーク・ヒガンとの誓約を切断しました。』


『タルト国に属するものはハル・アカツキに対する攻撃が可能となります』


『この情報は勇者が帰還しキカイの前に集まり次第、キカイより直接音声で放送されます。素早いご用意を』




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