確認自制
話の展開が遅いぃ!
ログリアと城下に行ってご飯を奢ってもらうって話になったんだが...
「あの、ログリア、俺上着無い」
「あ...」
さっきの試合で小道具としてあのヒラヒラした上着使ったんだった。
俺ってうっかりさん!
「はぁ...仕方ない。新しいものを私が持って来よう。ハルはここで待っていてくれ」
「まぁ、頼んだ」
俺の返答を聞いたログリアはドアの前まで来ていた俺の横を通りドアを開け俺の上着を取りに行った。
全く、俺にも困ったもんだぜ。
上着無くても暖かいこの城が悪い。
暇になったので外でも眺めようかと思ったが、窓がない。
寝ようにも時間短いし。
......あうあうあ以下略。
ハルは着替えがあるところを知らないだろうから代わりに私がハルの着替えを取りに行っている。
なんていうか、これが尽くす系妻か。
ふふん、機嫌のよさが天を貫きそうだ。
...しかし遠いな、着替えがあるところはハルたちが寝起きしたところなんだが魔法鍛練場とは往復で20分はかかる。
ここまでくると城が広すぎると思うが、国土が広すぎる分繁栄の象徴たる城は巨大でなくてはならないから仕方ない。
ちなみに私は肥満対策で城の中は基本歩こうとするのだが、結局転移で飛んでしまう。
だが今はハルがいるし、どうしようか。
......次頑張ろう、うん。
とりあえず転移してハルたちが寝起きした部屋の前に着いた。
ドアを開けると何人かの勇者たちが居たがさっきのチャラ男のようにはしないために魔力を50万位出し威圧する。
分かりやすく言うなら私の背後に裂けたザクロが浮かんで見えるくらいの威圧感を与えている。
よしよし怯えているな。
怯えている隙に近くにあるベッドの下から着替えを取り出す。
そして一目散に部屋から出る。
ミッションクリア。
このまま魔法鍛練場の前まで転移だ。
2分そこそこでログリアが帰ってきた。
大きな魔力の動きを感知したし転移でもしたんだろう。
転移を簡単にするログリアに感嘆する。
出たため息を誤魔化すようにログリアにお礼を言った。
「ありがとう」
「なにお安い御用だ」
短い掛け合いだがそれが長年連れ添った老夫婦のような雰囲気を醸し出し、
そのことを感じた俺は思わずフッと鼻で笑ってしまった。
どうやらログリアも似たようなことを思っていたのか
「なんだね、この老夫婦のような雰囲気は」
と言いながら顔を少しニヤけさせている。
「はぁ...まぁとりあえずご飯食べに行こう。ログリアの奢りだけど」
強引に話を変えたが最後の一言は余計だった。
「出世払いで返してくれ」
ログリアはこう言ったが、もちろん返す気はない。
それに悪い予感がするから返せるかわからないし。
「出世できたら返すよ」
話は濁すにかける。
談笑も程々に俺とログリアはドアを開け、ログリアの案内の元城下に向けて歩き始めた。
俺の名前は大友達也。
こちらだとタツヤ・オオトモになるな。
知っての通り俺は勇者だ。
それも種族すら勇者の勇者オブ勇者と言っても過言ではない。
俺たちは勇者として魔王を倒すためこちらの世界に召喚されたらしいが、
正直戦いたくない。
理由は俺は俺の人生に傷がつくのが嫌いだからだ。
サッカー部のエースでイケメン、そこそこに頭もよくて彼女持ちのリア充。
父親はそこそこ大企業の社長、母は看護師。
はっきり言って人生の勝ち組だからだ。
まぁ親からは親のことを自慢するなと言われているので父の仕事のことなどは同級生たちは知らないが...
それを差し引いても俺は勝ち組だ。
そして俺は勝ちにこだわる男だ。
そんな俺がわざわざ負ける可能性が高い魔王討伐なんて進んでやるわけがない。
......が今回は元の世界に変えるため、
ハーレムを築くため、俺は本気で魔王を殺しに行く気なのだが.......
今、現状況で俺のやる気スイッチを墓石に来ている奴が一人いる。
そいつはハル・アカツキという男だ。
いまま目立たなかったくせにこちらの世界に来てからずっとこいつに負け続けている。
まずは、魔力量で負けている。
俺は6万8千でアカツキは33万。
約5倍だ。
これだけでもおかしいのだが、まだ一つある。
それは戦闘能力の差だ。
今日賢者さんからの説明が終わり筋肉ムキムキの騎士、リードパワーさんに鍛練場で
「まず勇者たちの現在の能力の平均を見る」
と言ったので数人がリードパワーさんと実戦形式で勝負したのだ。
勝負したメンツは勇者の俺と斧使いの桐元、槍使いの築山、刀使いの灯下ちゃんの4人だ。
結果は惨敗。
そりゃそうだ、武器、しかも殺傷能力のある剣なんて持ったことないのにすぐに対応できるわけない。
案の定一撃でみんな吹き飛ばされた。
そしたら遅れて鍛練場にやってきた奴がアッサリと勝った...らしい。
そしてその奴というのはアカツキ...らしい。
俺頭打って混乱してたから詳しくは知らない。
だがアカツキはリードパワーさんに、人間に対して簡単に短剣を突き刺したらしい。
こんな奴と一緒の学校にいたのかと思うとゾッとする。
まぁとりあえず、ハル・アカツキとかいう奴は危険人物ということだ。
あとなんか無表情なのが気味悪い。
でも俺は勝ちにこだわる男だ。
アカツキがどんな奴だろうと必ず勝ってやる。
......そのためには血とか生肉とか痛みとかに慣れなきゃなぁ。
城下に下り、その風景を目にする。
初めのころの王城に受けた印象と同じイギリスっぽい西洋風な感じで建築物には灰色や白、赤のレンガが多く使われているようにも見える。
木造建築物はほとんどない。
昼時だからか城下を歩く人は少なく、所々にある店の中に多くの人がいるのが見てわかる。
ひとしきり観察し、ゆっくりと進むログリアの後ろを無言で付いて行く。
女といるときは話を少しでも振るのが男だって?
ノンノンノン...
俺ほどの人間観察スキルがあれば一目でわかる。
今のログリアは何かを考え込んでいる最中だ。
思考の邪魔はしてはいけません。
やられて嫌なことをしちゃいけません。
やられて嫌なことをしちゃいけません。
とても大事なことなので2回言いました。
さて何か考え込んでいるログリアは放っておいて、現在の自分の立ち位置を整理する。
恐らくだが大半の生徒は俺のことを気味悪がっているだろう。
恐怖しているまである。
いつもの学校生活ではちょこっと優秀でパッとしないけどつつけばそこそこ面白い奴で通していたのにこちらに来てから少し派手に動きすぎた。
印象の変化が大きすぎて生徒たちの目には俺が『俺』なのか上手く映っておらず不気味に思われていると思う。
極めつけは鍛練場での試合で戸惑い無く短剣を突き刺したことだろう。
周囲の俺に対する『気になるけどなんかよく分かんないから放っておこう』ていう感じの空気が『気味悪くて怖い奴だから無視しよう』に変化している。
今の状況ストレス溜まります。
全員殺してあげましょうか...?
言葉責めから、肉体て......
はぁ...こっちの世界ってなんでこう感情のままに変化するんだろう。
抑える方がストレス溜まるのに...はぁ.......
今日は数える気の失せたため息を吐き周囲を俯瞰する。
これからこの風景を守るために命を懸けるのだと思うといかんせんやる気どころかため息しか出てこなかった。
はぁ...
勇者様に丸投げしようかな。
あと少しで展開が加速します




