されど
高校に入った。
俺は、そこそこ名前の知られた進学校に入った。
中学の頃より、ずっと勉強ができる人間が集まっている。
最初の模試。
結果を見た。
四十二位。
悪くない。
むしろ十分に良い順位だ。
先生にも、
「よく頑張ってるな」
と言われた。
親にも、
「すごいじゃん」
と言われた。
でも。
俺は、嬉しくなかった。
中学の頃なら、もっと上だった。
そして。
神谷は一位だった。
「また神谷かよ」
誰かが笑った。
俺も笑った。
「すげえな、あいつ」
でも、胸の中では。
何かが少しずつ崩れていた。
中学では、俺は「できる側」だった。
高校では。
俺は「できる人間の中の一人」だった。
世界が広がった。
そして、初めて自分の小ささを知った。
最初は、それだけだった。
でも。
俺はそこで終われなかった。
もっと頑張ればいい。
そう思った。
もっと勉強すればいい。
もっと努力すればいい。
そうすれば、また理想の自分に戻れる。
俺はそう考えた。
高校生活では、やりたいことが増えた。
勉強。
部活。
友達。
ゲーム。
そして、小説。
昔から物語を作るのが好きだった。
頭の中で考えた人物が動き出して、事件が起きて、それを誰かが解いていく。
そんな世界を、自分でも作ってみたかった。
最初は、ただそれだけだった。
どうせ書くなら面白い作品にしたい。
そう思った。
タイトルも決めた。
――『探偵は話せない』。
主人公を考えた。
登場人物を考えた。
事件を考えた。
文章を書いた。
楽しかった。
最初は。
でも。
いつの間にか。
そこにも「理想」が入り込んでいた。
どうせ書くなら評価されたい。
どうせなら、多くの人に読まれたい。
どうせなら、有名になりたい。
そう思うようになった。
俺はまだ。
「好き」と「成功」を、同じものだと思っていた。




