六、変えられなかった運命
琳琅を乗せた馬車はある場所に向かっていた。
琳琅もようやく落ち着き、母が話したことを思い返していた。
「ここで休憩しましょう」
近くに川が流れており、濤たちは水を補給していた。
琳琅は馬車の外に出て、大きな石の上に座って、濤たちを見ていた。
家豪は視線を感じ、振り返ったら、琳琅と目が合った。
家豪は、布の隙間からのぞかせる琥珀色の瞳から目が離せなかった。
「何か用ですか?」
琳琅は警戒している目をしていた。
「いや、何でもない。ただ、美しいなと思っただけで・・・」
「家豪、妹を口説かないでもらえるか」
家豪は首と両手をものすごい速さで振って、否定した。
「家豪、その気持ちはわかるぞ」
志偉もにやにやしながら、家豪の肩に手を回した。
そんな時だった。白竜のもとに鳩が飛んできた。
白竜は鳩が持ってきた文を見た。
その文を見た途端、驚いた表情をし、すぐに濤に渡した。
その文には、皇帝が高瑾に対し何をおこなおうとしているのか、それに参加している者たちの名が書かれてあった。最後の一文には、楊剛泰と劉家軍が死を覚悟し、後宮へ乗り込むとあった。
志偉はその文を見て一目で、自分の配下たちの準備が整っていることを悟った。
今にも父たちのもとへ行きそうな濤と家豪を志偉が止めた。
「濤、家豪、私が向かう。二人は琳琅を守れ。皇上を止められるのは息子の私だけだ。安心しろ。終わらせてくる」
志偉は右手を大きく掲げ、力強く宣言した。
「私が平和な国に変えてみせる」
濤、家豪はその場で跪き、
「この命尽きるまで、あなたに付き従います」
白竜も慌てて、二人と同じように跪いた。
志偉は颯爽と馬に乗り、来た道を戻っていった。
高瑾は抵抗することなく、男たちの相手をしていた。
その中には薛嘉、傅恒、陸良の他、息子や名だたる者が集まっていた。
「万暁東ではないか。お前はまだ女知らないだろ。ここで練習しとけ」
「私のような者は最後で構いません」
高瑾は屈辱的なことをされながらも琳琅たちのことを考えていた。
(琳琅は無事かしら。私があの子から目を背けさせないと)
戸が開き、皇帝が入ってきた。
万暁東は嫌な予感がし、皇帝が中に入った時に皆にわからぬようそっと部屋を出た。
(何だったんだ。こんなことしても意味はないだろう。おそらく、今は娘の方と関係を持たないとこの国は手に入れられないはずだ)
「瑾、気分はどうだ?これだけの名だたる者と交わったのだ。きっと神童が生まれるだろう。最後に私の相手でもしてもらおうか」
高瑾は最後の力を振り絞って抵抗しようとしたが、できるはずもなかった。
「瑾、今でもこんなにも美しい身体をしているなら、さぞかし若い頃は・・・」
その時、突然戸が開いた。
そこに現れたのは剛泰と家軍だった。
剛泰は高瑾と皇帝のあられもない姿を見て、怒りは最高潮に達した。
「趙志強ー!ここでお前を殺す!」
皇帝は周りの男たちに守られながら逃げていた。
剛泰は次から次へと目の前に現れる男たちを斬り殺した。
「剛泰、ここは私に任せて、高瑾のところに行け」
剛泰は家軍に任せ、涙を浮かべながら高瑾に駆け寄った。近くにあった布をかぶせ、身体が見えないようにした。
高瑾は疲れ果てており、息も絶え絶えだった。
「あなた・・・ごめんなさい。子供たちを守るためにはこうするしかなかったの・・・」
「すまない・・・私がお前を守れなくて」
高瑾は首を横に振った。
「私は幸せでした。あなたと一緒になって、濤と琳琅が生まれて。後悔はないわ。だた・・・。最後にあの子たちを抱きしめたかった」
「瑾、帰ろう、子供たちが待ってる」
「あなた・・・ごめんなさい」
高瑾は隠していた短剣で自分の胸を刺した。その瞬間、口から血が噴き出し、剛泰の顔にも飛び散った。
剛泰は動揺していた。
家軍も衝撃を受けていた。
「あなた・・・。白き姫は一度交わった男以外の男と交わってはならないの。どっちにせよ、私は、後宮に来た時から死ぬ運命だったの。ごめんなさい、言えなくて。あなたは生・・・」
高瑾は最後の言葉を言い終わる前に息を引き取った。
「瑾ー!」
剛泰は冷たくなった高瑾の身体を抱きしめながら、泣きわめいていた。
剛泰は急に立ち上がり、皇帝が逃げた方へ向かっていった。
目が虚ろなまま、ぶつぶつ呪文のように何か言っていた。
家軍も全員始末し、ついていった。




