二十四、過去を紐解く三つの言葉
万昌は父に剣を向けたまま、固まっていた。
重苦しい空気が漂っていた。
家豪、毅、賢建も息を飲んで万昌を見守っていた。
万昌が重い口を開いた。
「私は、あることを調べていた時に、父上が金で人を集め、裏で何か行おうとしていることを知ったのです。父上は"先帝"、"劉家"、"白き姫"、この三つの言葉をよく口にしていました。父上と劉家に訪れた時、私はお嬢様とお会いしました。その時にはすでに父上のことを不審に思っていたので、お嬢様のことは話さない方がいいだろうと判断し、あの日の出来事は一切口にしませんでした。それは正しい判断でした。後々、私は気づきました。父上が口にする白き姫は劉家のお嬢様のことであることを。はじめは好奇心から劉家に忍び込んでお嬢様と会いました。あまりの美しさに、心を奪われてしましました。家豪将軍、安心してください。私はお嬢様に何もしておりません。ただ、守りたいと思い、お嬢様に情報を提供していました」
家豪は毅に、万昌が雪華に会っていたことを知っていたかと尋ねた。
毅は首を横に振り、知りませんでしたと答えた。
万昌は話を続けていた。
「そのうちに父上がお嬢様の誘拐を企てていることを知ったのです。私は急いで、劉家に向かいましたが、着いた時にはすでに雪華お嬢様はさらわれていました。私は息子としてこの手で父上を止めなければならないと思い、翰に協力を頼みました。父上、お嬢様はもうすでに翰が救出しているはずです。おとなしく投降してください」
それまでは静かに万昌の話を聞いていた万昌の父の万暁東は静かに笑い出した。
周りはその不気味な笑いに異様な雰囲気を感じた。
「昌、お前はわかっていない。私は先帝の意志を果たそうしているのだ。家豪将軍はご存じだろう。先帝が白き姫にしたことを」
家豪は一瞬で今にも人を殺しそうな顔に変わっていた。その顔を見た毅は、あまりの恐ろしさに思わず後ずさりしてしまった。
「お前がなぜ知っている。あのことを知っている者はいないはずだ」
家豪の口調は荒々しかった。
「家豪将軍、私はあの時、あの場所にいたのですよ。皇上はあの事を知っている者を全員殺したとお思いみたいですが、私はあの時の生き残りです。私も参加していたのですよ」
その顔は満足げな顔をしていた。
家豪はその顔を見て怒りに燃え、今にも斬り殺そうとしていたが、毅に止められていた。
「家豪将軍、まだ父上から聞きたいことがあります。お気持ちはわかりますが」
万昌の言葉に家豪は剣を下ろした。
「父上は雪華お嬢様をさらって何をしようとしてたのですか?」
万暁東は家豪を見ながら、
「家豪将軍、あなたの方が詳しいのではありませんか?あなたはもうおわかりでしょう。私があなたの娘をさらって何をしようとしていたのかを」
家豪は歯を食いしばり、両手を力強く握りしめていた。万暁東の問いかけに何も答えなかった。
「そうでしょう。家豪将軍の口からは言いにくいでしょう。私が教えて差し上げますよ」
家豪は威圧的な低い声で、やめろと万暁東を睨みつけた。
万昌、毅、賢建は部屋一体の空気を重くするような声に恐怖を感じた。
万昌は家豪の様子を見て、これ以上は聞いてはいけない気がした。
「父上、あなたのせいで万家一族は皇上より刑罰が下されるでしょう。あなたはそれだけのことをしているのです」
万暁東は手のひらを返したように、昌にすがりつきはじめた。
「昌、お前は知らないだけだ。白き姫はこの国に天下をもたらす者なのだ。その者との子をなせば、天下が取れるのだぞ。昌、この国がほしいと思わないのか?昌も心を奪われたんだろ?あの娘を連れて来ればお前の好きなようにできるぞ。お前が先に子を作りたいなら譲ろう。私はその後でもよいぞ」
万暁東の言葉に家豪の憤りは頂点に達していた。
毅を振り切り、斬りかかろうとした時、万暁東は崩れるようにゆっくり倒れていった。
よく見ると、万昌が涙を流しながら、父親の胸に剣を突き刺していた。
父親が倒れたら、胸から剣を抜き、手から剣を離した。
万昌は膝をつき、どうして、どうしてと同じ言葉を繰り返しながら、泣き崩れていた。




