二十五、けじめ
(父上は何を隠しているのだろうか。先帝の時代に何があったのだろうか。白き姫が天下をもたらす者とはどういう意味なのだろうか)
毅は様々な疑問が頭を巡っていた。真相を知るには、母の琳琅に聞くしかないと結論を出していた。
自らの手で殺した父親の遺体を目の前に、万昌は立つことができないでいた。
その様子を見ていた毅は万昌はに近づき、手を差し伸べた。
「毅、万暁東の遺体を回収するよう伝えろ。第三皇子は私と共に後宮まで戻りましょう。第三皇子、今回見聞きした件ですが・・・」
「わかってる。父上以外には口外しない」
家豪は感謝しますと深々と頭を下げていた。
万昌は、毅の手を取って立ち上がり、家豪に近づきこう言った。
「家豪将軍、私は皇上に今回の件を、私自ら話す必要があります。私も共に参ります」
家豪は目をつむって考え込んでいたが、わかったと言って、万昌と賢建と共に後宮へ向かった。
毅は引継ぎが終わり、劉家へ戻っていると同じ方向に進んでいる馬車が見えた。
よく見ると馬に乗っている雪華の後ろ姿があった。
「雪華ー」
毅は大声で叫びながら、近づいていった。
毅の声に気づいたのか馬車が止まった。
雪華が手を振りながら、毅兄様と呼んでいた。
毅が馬車に追いつくと、馬車を引いていたのは忠だった。馬車の横には馬に乗っている月亮と翰、翰の後ろに乗っている雪華がいた。
雪華は満面の笑みで毅を迎えていた。毅は少し乱暴に雪華の頭をなでながら、無事でよかったと皆と目を合わせながら言った。
「ところで、雪華、何で馬車に乗ってないんだ?」
忠が目で中を見ろと合図をした。
毅が馬車の中を見ると、見るからに手足を折られ、口を布で塞がれている男の姿があった。
毅はなんとなく何があったのか悟った。
(これから翰の拷問か・・・)
毅は敵ながら哀れに感じてしまった。
「兄上の方はどうでしたか?」
毅は眉間にしわを寄せながら、話すかどうか迷っていた。雪華の様子から万昌が関わっていること知らされていないようだった。
翰は毅の迷っている様子から、雪華には聞かせないほうがいいだろうと思い、兄上、家に帰ってゆっくり話しましょうと言った。
(翰に話して、翰と一緒に母上に尋ねたほうがいいかもな)
「雪華、もっとしっかり抱きしめていいのですよ」
「今ぐらいで十分です」
「翰、お前も雪華の・・・その・・・胸の感触が目当てなのか」
「えっ・・・」「えっ・・・」
翰と雪華は月亮に冷ややかな視線を送っていた。
「雪華、その違うんだ。兄上が・・・」
「殿下はそんな目で私の妹を見ていたのですか?」
「月亮様がそんな人だったとは」
「雪華、殿下を見ない方がいいですよ。汚されます」
「違うんだー」
忠は三人を見ながら涙が出るほど笑っていた。
毅はおかしなやり取りを見ながら、考えていた。
(雪華には皆と笑いながら暮らしてほしい。どうかこの国のために人生を翻弄されないでくれ。この先何があるかわからないが、兄としてできることは雪華の笑顔を守る、ただ、それだけだ)
毅の思いを知る由もない雪華は無邪気に笑っていた。
万昌は家豪と共に皇帝の前に跪き、挨拶をした。
皇帝は家豪に下がるように告げた。
家豪は驚いた表情をして、横目で万昌を見ながら一礼して去った。
「万昌、朕はお前に雪華に関することは頼んだ覚えはないのだが。答えによっては・・・わかっているだろうな」
万昌は床に頭をつけ、
「私は皇上のご期待にそうことができませんでした。その上、私の父万暁東は雪華お嬢様をさらうという万死に値することをしました。私も同罪です。どうか、皇上の手で私を殺めてください」
皇上は側近の宦官から剣をもらい、万昌の目の前に立った。
万昌は覚悟を決め、目をつむった。
皇上は剣を振り下ろした。
床には万昌の髪が乱れていた。




