二十三、怒りと悲しみの剣
翰たちが雪華の救出に成功した頃、万昌の誘導の下、賢建、毅は山北に向っていた。
馬で駆けるには道が悪く、進むのに時間がかかっていた。
「皆さん、もうすぐです。翰の事だから、お嬢様は救出されてる頃です。私たちは翰を信じて、向かいましょう」
この国一番の強さを誇る弟の翰であるとはいえ、毅は兄としては心配だった。もう一人の弟、忠も合流していると万昌から聞いていた。
(翰、忠・・・雪華を頼むぞ。どうか、三人とも無事でいてくれ)
毅は何が起こっているのか全てを把握しているわけではなかったが、翰を信頼し、送られてきた文通りに行動していた。
万昌は急に馬を止めた。
後ろで賢建が、急に止まるなよとぼやいていた。
「誰かいます」
毅が様子を見てきますと馬から降りて、足音を立てないよう歩いていた。
物陰から様子を見ると、そこにいたのは家豪だった。
「父上?」
「その声は毅か」
家豪は少し離れたところにある小屋の様子をうかがっているいた。
毅は万昌と賢建を呼び、家豪と合流した。
「万昌、お前が言っていた場所はあそこのことだろう」
万昌は、さすが家豪将軍ですと言って頷いた。
「皆さんは私についてきてください。行けば全てがわかりますから」
毅は歩きながら、翰たちが雪華の救出に向かったこと、おそらく無事であること、なぜここへ来たのかを家豪に説明した。
家豪は、翰が雪華のところに行っているなら無事だろと思っており、まだ確認もしてなかったが安堵していた。
「それにしても、なぜ第三皇子までいるのだ。護衛もつけずに」
「万昌が言うのは、雪華がさらわれたことを翰へ伝えに第四皇子の部屋に行ったら、第三皇子もいたみたいです。そのままついてきたそうです」
家豪は微妙な顔をしていた。
万昌は小屋から離れたところに着くと、生い茂っている草をかき分けながら、下を見て何かを探しはじめた。
他の者たちは不思議な顔をしながらも、待っていた。
「あった!」
万昌が見ている地面はその場所だけ草の色も土の色もわずかに違う色をしていた。
万昌が草に見えるものをどかして、手で砂を払うとそこには木でできた扉のようなものが出てきた。
その扉を開けると、下に続く梯子がぶら下がっていた。
「皆さん、ついてきてください」
万昌は軽やかに梯子を下っていった。
その後に皆続いていった。
万昌は持っていた火折子に息を吹きかけ、火をつけた。
中は洞窟のように暗く、迷路のように入り組んでおり、万昌の案内がなければすぐに迷子になっていただろう。
「ところで殿下、私たちについてきたら危険ですよ。待ってた方がよろしいのでは?」
「毅、あんなところで一人で待つ方が危ないだろ」
毅は、それもそうかと納得した。
「皆さん、ここからは一切話さないでください。足音も注意してください。私がこの火折子を振ったら、それは合図です。一気に乗り込んでください」
皆、前の人の肩をつかみながら、ゆっくりと歩いていった。
しばらく歩くと扉の間から光が漏れている部屋があった。
中では数人の声が聞こえていた。
「これでやっと先帝の意思を引き継げる。皆も楽しみにしているだろう。まず、一番最初に相手をするのは私だ。そのあとは好きにやってくれていいぞ」
大声で笑う声が聞こえてきた。
(この声・・・聞いたことある声だ。いつだっただろうか・・・思い出した。雪華の誕辰祝いを持ってきた時だ)
家豪は万昌が何をしようとしているのか気づいてしまった。
それは万昌にとっては悲惨な結末をたどることになる。
その時、万昌は火折子を振った。
勢いよく扉を開け、剣を向けた。
敵は襲ってきたが、家豪と毅の前では武器が無意味なほど、一瞬で殺されていた。
真ん中に座っている男は気味の悪い笑い方をしながら、こう言った。
「昌、父に向って、なぜ剣を向けている」
万昌の手は怒りと悲しみで震えていた。




