六、誘拐犯の訪問
胡風と劉忠は劉家の屋敷の近くまで来ていた。
突然、胡風は立ち止まった。劉忠は急に止まった胡風の背中に思い切りぶつかった。
「痛ててて、先生急にどうしたんですか。僕の家の近くですけど、僕の家に何か用ですか?」
劉忠は何か探るような言い方をした。
胡風は後ろを振り返り、
「忠、今からお前の家に行く。私はお前の家族に話さなければならないことがある。わかっているだろうが、私とお前の関係は決して知られてはならない。先に帰れ。」
(先生は何をしに僕の家に来たのだろう。雪華が関係あるとは思うけど、誘拐された雪華と先生はどんな関係があるんだ)
忠はあれこれと考えながら、家に帰った。
(忠・・・すまなかった)
胡風は劉忠が家に帰ったのを確認すると、劉家の屋敷の門の前に立った。
しばらくじっと屋敷を見つめ深く深呼吸をし覚悟を決めて、門にいる護衛に声をかけた。
「劉家豪将軍に胡風が会いに来たと伝えてくれ」
一人の護衛が家豪の前に足早にやってきた。
「そんなに慌ててどうしたのだ」
「旦那様、胡風と名乗る男が旦那様に会いたいと申しております」
「胡風・・・もしかして雪華が戻ってきたのを知ったのか」
家豪はどうするか迷っていたが、重い声で通せと護衛に伝えた。
(今さらあいつは何しに来たのだ。私はまだあいつのことを許せてないというのに)
家豪の前に胡風が現れた。
胡風は家豪に会うや否や跪いて、頭を床に打ち付けるほど下げた。
そして顔を上げて、涙を浮かべながら
「家豪、久しぶりだな。本当に申し訳なかった。ある情報から雪華お嬢様が戻ったと聞いた。どうか、会わせてくれないか。あの事件の話せること全てを話す、雪華お嬢様に、家豪の家族に謝りたい」
ともう一度、頭を下げた。
家豪はしばらく黙っていたが、わかったと言い、護衛たちには雪華、琳琅、毅、翰、忠を連れてくるように命じた。
応接間には呼び出された者が皆集まっていた。
(先生は一体何を話すのだろう)
忠は長年、胡風の元で学んできたが胡風が何者であるかいまいちつかめていなかった。只者ではないだろうとは感じていた。
他の者は何で呼び出されたのかわからず、浮かない表情をしていた。
ゆっくりと部屋に胡風が入ってきた。
胡風は雪華を見るとまるで長年生き別れてた家族に再会したような顔をし、雪華に近づいていき
「雪華・・・雪華お嬢様ですか・・・本当によかった、本当に」
そう言って、雪華の目の前で泣き崩れていた。
雪華は見ず知らずの男が急に目の前で泣き出したので困った顔をし、家豪にどうしたらよいか目で訴えかけていた。
忠は胡風の様子に驚いていた。いつもの学舎での凛々しい先生の姿からは想像できないほど声を上げ激しく泣いていた。
毅も翰も互いに顔を見合わせながら首をかしげていた。
ずっと黙っていた家豪が口を開いた。
「胡風・・・あの事件のことを話してくれ」
胡風は琳琅から渡された手巾で涙を拭き、落ち着きを取り戻した。
「雪華お嬢様をさらったのは私です」
思いもよらない告白に皆驚愕した。
「父上、なぜ誘拐した犯人がここにいるのですか」
毅は家豪と胡風の顔を交互に見ながら雪華を守るように立った。
「毅、安心しろ。雪華には危害は加えぬ。胡風、いいから話せ」
胡風は家豪の顔を見て、唇を噛みしめながら頷き、雪華の誘拐事件について語り始めた。




