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真・巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?  作者: 山口遊子


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第321話 ダンジョン実習


 冒険者ギルドで、ヘマタイトゴーレムの買取価格を決めてもらった。新人冒険者にとっては一体斃す(たおす)だけでもかなりの金額になる。


 うちの関係者以外でも、『鉄の迷宮』で仕事をしたいという者が今後出てくるだろうが、一般冒険者の場合、四輪車を持っているわけではないため運搬は人力に頼ることになるので、重いゴーレムの体の回収はあきらめ、魔石だけの回収になってしまうだろう。それだと、DP(ダンジョンポイント)的には意味があるのだろうが、冒険者から見て、そこまで収益性が高くなるわけでもないし、鉄の普及という意味ではまるで効果が無いので、当面は一般公開はしなくてもいいだろう。




 今日の仕事も片付いたので、屋敷に戻り、一番風呂に入って夕食も済ませ、今は居間で寛ぎながらアスカと話をしている。うちの連中も気兼ねなく居間で何冊か用意してやった本を読んだり、リバーシをしたりして寛いでいる。


「マスター、明日のダンジョン初日は時間が取れませんが、明後日にでもフライス盤を作ろうと思いますので、その日の朝にでも材料を造船建屋にお願いします。回転している物に刃を当てるだけの旋盤と違い、回転する刃の種類や形状もいろいろあり、機械もそれなりに大きく大掛かりになるので、操作がやや難しくなりますが、作業をするのがボルツさんならなんとか操作方法を覚えてくれると思います。ボルツさんなら、こんなこともできる、あんなこともできると分かれば、いろいろと応用も利くようになるでしょうから楽しみですね」


「そういう意味では、機関車や貨車や台車なんかのローラーベアリングなんかを作るのがかなり楽になるんじゃないか?」


「ローラー自体は旋盤で作れますが、ベアリングの外側のケースなどは形が複雑ですし力のかかるものですから、これまでですと人手をかけて削り出すしか方法はなかったでしょうから、だいぶ作業がはかどると思います。」


 今現在、金属製で強度を持たせた複雑な形状の部品はハンマーで形を整えながら、タガネやヤスリなどを使って削り出しているのだろうから、金属製品などは相当な手間暇てまひまがかかっているはずでその分高価なのだろう。しかも精度はそこまで高くはないだろうし、また高い精度のものも要求するほど周りが洗練されていないというのも事実だと思う。



 そして、翌日。


 新しい日課のヒナたちへのエサやりを終えて、自分たちの朝食後しばらくしてシャーリーを見送り、俺たちも冒険者学校に出発した。



 俺たちが学校に到着した時には、生徒たちは防具を身に着けメイスを片手に、学校の前でペラと一緒に待機していた。


 俺たちが合流すると、生徒たちが、


「ドラゴンの肉おいしかったです。ありがとうございました」「ありがとうございました」


 と、昨日きのう差し入れした肉のお礼を言ってきた。ずいぶん教育されている。このように感謝されると、また差し入れをしようと言う気にもなる。


 時間は予定の10時より少し早いが、みんなの準備も整っているようだし準備運動と軽いランニングはすでに済ませてあるようなので、ダンジョンにこのまま入ることにした。


 今日は、初日なので、四輪車も防爆用の盾も投擲弾とうてきだんもなしで、防具とメイスだけでダンジョンに入ることにした。ちなみに投擲弾とうてきだんについては、すでに小型化済みで、投擲練習用のダミーもそれ用に作っている。


 新人冒険者の生徒達のうち半分程度のものは、ヤシマダンジョンに入った経験があるようだったが、単なる荷物運び程度の仕事をしていただけだったようだ。


 従って自分たちが主体となってモンスターを狩るというのはほとんどのものにとって初めての経験らしい。



 そうしてダンジョン出入り口の黒い渦の前に生徒たちを引き連れてやって来たペラが、


「それでは、みんな、気を引き締めてダンジョンに入るぞ!」


「はい!」


 ペラの言葉に生徒たちが大きな声で返事をした。なかなか良いじゃないか。


 俺とアスカは、いらぬおせっかいを焼かないように、生徒たちの最後尾についている。


 すでに四人組三パーティーに生徒たちは分かれている。そのうち勝手に自分たちで名前を付けてしまうのだろうが、いまのところ男子四人組が第1、第2パーティー、女子四人組が第3パーティーという名前になったようだ。


 


「今回は私が先に入ってダンジョン側の出入り口あたりを警戒しておくので問題ないが、ここの『鉄の迷宮』ダンジョンでは進入時、いきなりモンスターに出くわす可能性もあるから、武器は構えて、くれぐれも注意して渦の中に入るように」


「はい!」


 なかなかいい注意だな。たしかに多数の冒険者が出入りしている一般ダンジョンでは進入時に注意する必要はあまりないのだろうが、ここの『鉄の迷宮』ダンジョンでは何が起こるか分からないし、現に、最初に俺たちが入った時にはアスカが出合い頭で、ゴーレムを破壊していたものな。


 あれは、モンスターにとって出合頭であいがしらだったから、立場が逆なのか。


 ペラに続き第1から第3パーティーの12名がダンジョンの黒い渦の中に入って行ったので、俺とアスカもその後に続いて『鉄の迷宮』に入った。


 前回1層の拡張を指示しているので、拡張がある程度進んでいるはずのこの『鉄の迷宮』だが、変わったところは出入り口のすぐそばのここではまるで分らない。いくらかは広くなっていると思うがさてどんなものだろう。


 ミニマップを見ると一番近い赤い点は100メートルほど先の通路の交差を左に曲がった辺りに1つ。これまでは1層ではヘマタイトゴーレムのペアだったが、単体になったようだ。以前コアに指示したのかもしれないが、俺も良くは覚えていない。まあ、俺が、このダンジョンを訓練用に考えていることはコアも理解しているはずなので、気を利かせてくれた可能性も少しはある。もしそうなら、1層の拡充に合わせて出入り口近辺は単体、その先でペアになるのかもしれない。


 ペラに知らせようかとも思ったが、どのみち大した相手ではないし、アスカまでいる過剰戦力なのでここは黙っておくことにした。


「モンスターを見つけ次第、第1から順にモンスターに挑んでいくぞ。では、全員前進!」


 ペラの号令に合わせて、パーティーごとに横列になった3パーティーが進んでいく。ペラ自身は第1パーティーの斜め後ろを歩いている。


 隊列が20メートルほど進んだところで、赤い点が交差を曲がってこちらに向かってきた。ペラもそれにすぐ気付いたようだが、生徒たちはまだだれも気づかないようだ。最後尾を歩いている俺は、そこに何かいることが分かっているので、何とか視認することはできているし、いつでも魔石奪取は発動できる態勢だ。


 何も生徒達には警告しないまま、さらに20メートルほど進んだところで、先頭を進む第1パーティーの一人が人型のモンスターに気づいたようで、


「前方4、50メートルに人型モンスター!」


 あまり大きな声ではないが、十分みんなに聞こえる声で警告を発した。


 よく訓練されている。自慢ではないが、俺だとここまでできなかったと思う。


 今の警告で、12名全員が手にしたメイスを構え慎重に前進を始めた。


 何なの? この生徒たち。一糸乱れぬ動きなんですけど。




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