第320話 冒険者学校4、フー2
俺の部屋でアスカと一緒に黒鎧のフーを見ながら、
「フーも一種のゴーレムみたいなものと考えればいいのかな?」
「ゴーレムなどよりよほど精巧に見えますが。前にも言いましたが、今ははっきりと『生きている』と言えると思います」
「生きてる鎧か。確かに、いまははっきりと味方なんだしな。
とにかく、いいかフー、おまえは俺たちが屋敷を留守にしたときには、俺たちについてくるんじゃなくて屋敷に留まって、ちゃんとみんなを守るんだぞ」
やっぱり今ううなずいた。ちゃんとうなずいた。アスカも見たろ?
「いえ、今回も気づきませんでした。申し訳ありません」
申し訳ないと思う必要はないのだが、俺だけがフーがうなずいたように見えたのが不思議だ。
でも、アスカが見ていないにしても、なんかこうして俺たちの仲間と認識したうえで、実際は独り言かもしれないがフーと話していると、気持ちの整理がついたような気がする。何事も話せばわかりあえる。もちろん相手が敵意を持っていない前提だがな。敵意を持った相手なら、アスカさんがオハナシしてくれるだろうからそっちの方が実は簡単なのかもしれない。
そういったことで、フーもまたうちの家族の一員になってしまった。
「それじゃあ、そろそろヒナのところに行ってエサをやるか」
「任せてください」
「いや、任せるも何も、一緒に行けばいいじゃないか?」
「はい。そうでした」
どうも、アスカは最近本調子じゃないのか? なんだか、受け答えがペラ的になってきていないか?
「そんなことはありません」
あれ? また俺は口に出してしまったか? ペラ的が気にいらなかったのだろうか?
カワイイは正義とはよく言ったものだが、正義はアスカに勝ってしまうのか? 戦闘からリバーシまで、実力だけの勝負事でアスカは負けたことを知らないと思うがこんなところに陥穽があったとは。
フッ、勝つことしか知らない可哀そうなヤツめ。
俺を見ろ! 自慢じゃないが、……。
空しくなるからもう止そう。
俺たちが厩舎に行くと、それを察知したのか急にヒナたちが「ピーイ、ピーイ」と鳴き始めた。俺たちのことをいまでは親と思っているのかもしれない。
やはり、餌付けは正義だな。なるほど、カワイイは正義かもしれないが、餌付けの正義の方がより強力だったわけだ。
収納からスライスしたドラゴン肉を盛った小皿を取り出し、指先でつまんで、ヒナたちの口先に持っていったやると、勢いよくパックンチョしてくれる。箸でつまんだ方が衛生的かなとも思ったのだが、これもスキンシップだと思い直し、指でつまんで肉をやっている。ブラッキーとホワイティーに一枚ずつスライス肉をやったところで、アスカの視線を感じてしまった。仕方ないので、俺の隣で並んでしゃがんでいるアスカに皿ごと肉を渡してやった。
気を利かせてやったのに。嬉しいなら、笑顔でも見せればいいものを。
俺が、横目でアスカを見ていることに気付いているのかいないのかは分からないが、アスカがヒナたちに肉をやりながら、ヒナたちに語り掛けている。さすがにヒナたちにはまだ言葉は分かるまい。
「はい、エサですよー」
「黒ちゃんは、先に食べたでしょ、次は白ちゃんの番」
ブラッキーとホワイティーはアスカの中では黒ちゃんと白ちゃんになったようだ。でも、白ちゃんだと、少々シローと紛らわしいな。
確かに、先日、フーを簀巻きにして、人さらいのまねごとをした時、この一年の間のアスカの変わりように驚いたが、こっち方向はこっち方向で相当のものだ。
いい意味でアスカも変わっていってくれているんだと思うことにしよう。
アスカと一緒にしゃがみこんで、ヒナたちの面倒を見ていたら、シャーリーを迎えに行って帰って来たサージェントさんが、馬車を車庫に入れるため二頭と一緒に前を通ったのでいちおう「ご苦労さま」と労っておいた。
シルバーとウーマはサージェントさんに手入れをしてもらったあと、夕方まで草原で遊んでから馬小屋に入れてもらっているので、しばらくは馬小屋に帰ってこない。
そうこうしていたら着替えを終えたシャーリーを始めいろんな連中がやって来てヒナたちを愛で始めてしまった。
俺は仕方ないので特等席から一歩引いて柱の横から様子を見ているのだが、気付けば、俺のしゃがみこんでいた特等席にラッティーがしゃがみこんでいる。
俺もサージェントさんが、二頭を馬小屋に連れてくるまで、ヒナたちを見ていたいのだが、そろそろ、冒険者ギルドに行ってもいい時間だ。
「アスカ、そろそろ冒険者ギルドにいかないか?」
「もうそんな時間でしたか。気付きませんでした」
アスカが気付かなかったとは、にわかには信じられないが、アスカが俺に嘘をつくはずもないので、
「それじゃあ行こうか?」
「はい」
シルバーたち二頭のいる草原にサージェントさんもいたので、屋敷の門から出がけに、
「二羽にエサはやったので後はよろしくお願いします」
といって冒険者ギルドにアスカともども駆けて行った。
ギルドのホールに入ると、扉のすぐ近くでスミスさんがいつものように突っ立っていた。
「こんにちは、お待ちしていました。買取価格を決定しましたのでお知らせします。上の会議室でお話ししましょう」
そういうスミスさんについてカウンター奥の階段を上って会議室に通された。
「まず、本日お持ちいただいたゴーレムですが、素材としては最上級の赤鉄鉱で、重さもちょうど1トンでした。ギルドでの受け渡しの場合、一般冒険者がゴーレムをたおした場合粉々になっているでしょうから赤鉄鉱1トン相当で小金貨5枚で買い取らせていただきます。
これに魔石が、レベル2相当、それなりの大きさもありましたのでこちらが小金貨5枚となりました。
それとトンネル東口からの運賃ですが、二体で小金貨1枚とさせていただきます。
運賃の方の改定は今のところ考えてはいませんが、ゴーレム、魔石、それぞれ相場が変動した場合、価格改定を行う場合がありますのでご承知おきください。価格改定につきましては、運賃改定も含めて改定の10日前までにお知らせいたします」
運賃が思っていた金額の半額の小金貨半分、銀貨5枚分安く済んだ。
全体から見れば大きな違いではないのだろうが、チリも積もればだからありがたい。
「最初のうちは、ゴーレムの討伐数も安定しないでしょうから、私の方でまとめてこちらに持ってきます。そのうち安定してきたらトンネル東口まで引き取りに来てください」
「了解しました。その時はまたお知らせください」
価格も確認できたので、スミスさんに礼を言って、屋敷に帰ることにした。




