第134話 バザー
シローを飼い始め、俺も毎日二度シローを連れて散歩するのが日課となった。非常に健康的な毎日だ。
レベルの高い関係で、これまでほとんど疲れを感じることもなく体調不良になったこともないのだが、これまで以上に体の調子がいいように思える。
「マスター。屋敷が完成したら、マスターの杖術の鍛錬を再開しますか?」
などど、アスカが俺を脅かすので、
「シローとの散歩で体調がすこぶるいいんだ。鍛錬で生活のリズムを変えるよりこのままの方が良いんじゃないか?」
などと言って、言質を取られないように用心している。
シローはシロー用に買って来た小さな毛布の上で丸まって寝ている。その横でアスカとたわいもない話をしていると、寝ていたシローが急に眼を開き首をもたげた。どうやらシャーリーが学校から帰って来たらしい。
「ただいま、ショウタさん、ただいまアスカさん」
やはりシャーリーが帰って来たことがシローには分かるらしい。
「お帰り、シャーリー」「お帰り」
「シロー、ただいま」
シローはシャーリーが帰ってきたことがよほどうれしいらしく、シャーリーに体を擦りつけながら尻尾を振っている。
シャーリーはそのままシローを連れて自分の部屋に入りすぐに制服から普段着に着替えて出てきた。
「ショウタさん、ご相談があるんですが?」
「なんだ?」
「今週末、付属校でバザーが開かれるんですが、そのバザーで生徒の家庭でいらなくなったようなものを集めて、それを学生や外部の人に売りに出すそうなんです。売れたお金はいろいろな施設に寄付するそうなんですが、ここにはいらなくなった物ってありませんよね?」
「シャーリー、悪いけど、いらなくなったものはないな。俺の収納の中にはそれこそいろんなものが入っているが、アーティファクト級なものが多いしバザーなんかに出すと取り合いになるような代物ばっかりだ。出品するのはまずそうだぞ」
「わかりました」
「マスター、出品するわけではありませんが、マスターが手持ちの食材を提供して屋台なんかを出すのはどうでしょう? シャーリーのためにやってみませんか?」
「学校が許可してくれるのなら問題ないぞ。そうだな、砂虫の肉もあるし、この前のサンドリザードもいい食材になるようだから、串焼きの屋台みたいなものが面白いかもしれないな。学生なら食欲もあるだろうし、串焼きなら、外部から集まった人にも受け入れられるだろ。まずは、シャーリー。明日にでも学校に確認を取ってみてくれ」
「ショウタさん、アスカさん。ありがとうございます」
「気にするなよ。こんなことは保護者として当然なことだろ」
「マスター。学校の許可は下りるでしょうから、先に串焼き用の串や、必要な器具などを用意してしまいましょう」
「それでしたら、わたしは、下のレストランに頼んで串焼き用のタレを用意してもらいます」
「タレを作ってもらうなら、肉の味に合わせないとならないから、使う肉を持っていった方がいいな。俺もシャーリーと一緒に行ってこの前使った残りの肉を渡してこよう」
そんなこんなで翌日には学校からの許可をもらい、串焼き屋台の下準備も終わってバザー当日の早朝。
今日は、屋台の手伝いをシャーリーのほかエメルダさんもしてくれることになっている。
アスカと俺は、シャーリーと連れ立ち箱馬車で付属校にやってきている。シローは今日は留守番だ。テイムされたモンスターだけあって、お留守でもちゃんと聞き分けておとなしく俺たちがそろってスイートを出て行くのを、見送ってくれた。
あらかじめ、屋台を置く場所は学校側から指定されていたので、そこに俺の収納庫の中の材木を使って屋台をアスカが作ってしまおうというのだ。校庭の真ん中には、生徒たちから集められた品々を並べて置くよう長テーブルが何個も置かれているので、屋台を置く場所は校庭の隅の辺りになる。
屋台などは角材と板を組み合わせるだけのような物だ。芸術的な椅子を短時間で作り上げるアスカにかかればそれこそあっという間にできるだろう。
ほれ、そんなことを考えている間に、渡した材木を髪の毛や伸ばした爪を使って角材や板に加工し、金属製の釘を使わず要所だけ孔をあけそこにピッタリの木釘をねじ込んで固定していく。あっというまに立派な屋台が出来てしまった。
アスカの木工の腕前は大したものである。その屋台の上に魔導コンロをセットし、焼く前の串焼きと、焼きあがった串焼きを入れる大皿を何個か並べて置く。その横に、『ナイツオブダイヤモンド』のレストランで調合してもらった串焼きの付けダレの壺を置いてひとまず準備は完了だ。食材は、既に俺の収納庫の中に相当量ストックされているので問題はない。
準備も整い、屋台の後ろに作った木製の長椅子に三人で腰かけてゆっくりしていると、ぼつぼつ、バザーの手伝いの保護者や生徒たち、教師の面々が校庭に集まり始めた。
「コダマ子爵さんにエンダー子爵さん、今日はお二人そろってバザーに協力していただけるそうでありがとうございます。シャーリーさんもエメルダさんもお手伝いのようね。頑張ってくださいね」
シャーリーの担任のラブレス先生があいさつに来てくれた。
「われわれも楽しみにしていた行事ですからせいぜいがんばらせていただきます」
「それでは、よろしくおねがいします」
ラブレス先生が他の方に回っていくと、朝礼台の上に立ったマクローリン校長が大きな声でバザーの開始を告げた。




