第114話 再び北の砦1
翌朝。
シャーリーを学校に送り出したあと、俺は商業ギルド本部へ向かった。アスカには、直接ボルツさんのガレージに向かい、『スカイ・レイ』の発進準備を手伝って俺が荷物を受け取って駆け付けるのを待つよう指示した。アスカと別れての単独行動は、これまであまりしたことはなかったが、俺の単独行動を嫌がるアスカをなだめて別行動をとることにした。
「アスカ、それじゃあ『スカイ・レイ』のほうは頼むぞ」
「マスター、気を付けて行ってらっしゃい。何かあれば、二分で駆け付けますから」
「ありがと、それじゃな」
何かあったことを知らせる手段がない以上アスカが駆けつけてくることはないが、気持ちだけ受け取っておこう。
『ナイツオブダイヤモンド』のエントランスでアスカと別れ、向かいの商業ギルド本部に出向き、先日と同様、受付で用件を話して今回運搬する物資の入った倉庫に案内してもらった。
今回案内された倉庫は、前回の倉庫の隣の倉庫だった。今回の騎士団からの人は、前回と違う人で歳は三十くらいの美人だった。背は俺と同じくらいありそうなので、女の人とすれば結構高い。それと従者らしき人はおらず、男の人が一人いた。見たところ、この人も騎士らしい。かなりいかつい感じだ。ギルド職員は前回と同じ人だった。
「おはようございます」
まずはお互い挨拶をした。
「冒険者ギルドから来たAランク冒険者のショウタです。よろしくお願いします」
「私は今回冒険者ギルドを通じてショウタ殿に物資の運搬依頼を出した第3騎士団の者です。今日はよろしくお願いします」
男の騎士さんが頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いします」
女の騎士の人が、俺の方をまじまじと見つめている。あまり美人に縁のない俺が勘違いしてしまうじゃないか。俺が見返すと、
「私は、名をポーラ・ギリガンといい、王国騎士団総長を務めている。失礼だが、貴殿は先日貴族に叙されたコダマ殿ではないか?」
ここにもギリガンさんの係累らしき人が出てきたよ。騎士団総長って相当偉い人だよね。
「はい。私の名前は、ショウタ・コダマです。先日子爵位を受爵いたしました」
「そうだったのか、私の見立てでは、錬金術師というより魔術師か魔法使いかと思っていたが、まさかいま話題のAランクの冒険者だったとは。今日は一緒に受爵したエンダー殿はいらっしゃらないのか?」
いやー、俺たちってそんなに有名?
「このあと、合流予定なので今は別行動です」
「それは良かった」
「?」
何が良かったの? ギリガン総長さん、妙に安心したような顔してるけど。
「それでは、さっそく荷物を収納していきましょう」
開けてもらった倉庫の中に入り、ギルドの職員さんに一応の確認をする。
「確認しますが、この倉庫中の物、全部でいいんですよね」
「はい。全部いっちゃってください」
およそ、五分で収納を終えた。結構結構。
「これで、お仕舞いですか?」
「今回もこの倉庫一棟だけです。これが確認書になります。前回同様、先方に受け取り確認のサインを貰って、冒険者ギルドに提出してください。因みに今回の物資の総額も、大金貨三百五十枚になります」
「了解です」
一日仕事で、大金貨三百五十枚! これは『魔界ゲート』特需とはいえ、止められんな。
「コダマ殿、申し訳ないが、この指示書を砦に届けていただけないか?」
「はい、確かにお届けします」
第3騎士団の騎士の人から預かった書類も収納しておく。
俺はここでの作業を終えたので、倉庫の中に残った三人に軽く会釈してアスカの待つボルツさんのガレージに駆けていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
第3騎士団長のレスターから、物資運搬をショタースが受けてくれたと報告を受け、どれわたしも噂の二人を見てみようと商業ギルドの倉庫の前で朝から待っていると、先日の褒賞式で、只者ではないと思っていた人物たちの片割れがやって来た。もう一方の方だったら逃げ出していただろう。
ともあれ、ショウタ・コダマがあのショタースの一人だったということは、ショタースのもう一人はあの死をまき散らすような女に違いない。ショウタ・コダマに確認したらその通りだった。
ショウタと話した感じでは、彼は気さくな好青年のようだが、あの女と一緒に行動している男なのだ。この齢でAランク冒険者であるということ以上にとんでもない人物なのだろう。
しかもあの収納だ。話には聞いていたがとほうもないものだった。ショウタ・コダマがいれば、戦略が変わる。それほどの人物だ。しかも個人では決して抗うことさえできない圧倒的な力を持つあの女を従えている。
この二人を敵に回しては絶対にいけない。わたしから見れば『魔界ゲート』からあふれ出てくる魔族の方がよほど可愛げがあると思える。
「レスター、騎士団に帰るぞ」
ショウタが走り去った後、レスター第3騎士団長を促し、ポーラ・ギリガン騎士団総長は倉庫を後にした。
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俺はアスカの待つボルツさんのガレージに到着すると、既に『スカイ・レイ』は出発前の整備を全て完了しており、予備の部品も取り揃えられていた。
ボルツさん達に礼を言い、さっそく飛空艇『スカイ・レイ』に乗り込んだ。
最初の試験飛行の時にはついていなかったトイレも完成している。使ったら、あとで溜まったものは捨てて掃除しないといけないんだけどね。
「『スカイ・レイ』発進!」
これを一度言いたかったんだ。なにせアスカが正パイロットで俺がサブだからほんとはアスカが言う言葉なんだよね。先に言った方が勝ちだ。
「『スカイ・レイ』発進します」
ちゃんと空気を読んで復唱してくれたよ。
噴気音を轟かせ、『スカイ・レイ』が上昇して行く。
「高度一千、水平飛行に移ります」
『スカイ・レイ』がゆっくり前に進み始める。
「加速しつつ、進路を北に取り、街道沿いに北上します」
ゆっくりと右旋回。大きく視界が動き、王都とセントラル湾が視界から消え、穀倉地帯の真ん中を走る街道が細く見えて来た。このくらいの高度と速度だと、下の街道を行き来する馬車や人が動いているのだろうが止まっているように見える。
「巡航速度二百五十キロに到達しました。このまま街道上空を北上します」
「アスカ、今何時だ?」
「午前、九時ちょうどです。 順調に行けば午後二時までには、北の砦に到着します」
アスカさん、妙なフラグは立てないでくれよ。
メイン魔導加速器四基、サブ魔導加速器四基、それらに付随する噴気方向調整弁各々四基の計八基、全十六本の大小のレバーを器用に操作してアスカは『スカイ・レイ』を操っている。
当初は、サブの操縦席の前に噴気方向調整弁用の八本のレバーがあったが、アスカがすべて一人で操縦できるということで、全てをまとめアスカの正パイロット席の前に集約した。要は、『スカイ・レイ』の操縦はアスカしかハード的にもできなくなったわけだ。更に、尾部のX舵制御も別途レバーで調整している。要するにアスカ、凄い! ということだ。




