第109話 飛空艇2-素材編
飛空艇用の外板の素材について、ボルツさんに今のところ目途が立っていないと言われた。
『ワイバーンか。アスカ何とかならないかな?』
『ワイバーンがどこに生息しているのか今のところ情報がありません。代わりに砂虫の表皮とか胃袋とかはどうでしょう?』
『ああ、それはいいかもしれんな。皮の方は内側からそぎ取って薄くしていけばよさげだな。胃袋の方は見てみないと判らんな』
「ボルツさん、ワイバーンの翼には心当たりは有りませんが、砂虫の表皮とかはどうでしょう? 軽くて強靭な素材のようなんですが」
「砂虫の表皮? うちは聞いたことない素材やな。一度持ってきてくれれば判断できると思うわ」
「とりあえず見てもらって砂虫がダメならまた何か手を考えましょう。
大体わかりました。ここに大金貨百枚あります。当面の飛空艇建造資金として使ってください。条件は、この飛空艇ができたら最初に私たちを乗せること。特に借用書など必要ありませんから」
「そないな条件で、大金貨百枚もくれるっちゅうんか? ほんまに、ええんか?」
「大丈夫です。問題ありません。お金なら、ここにいるエンダー子爵がいくらでも稼ぎますから。私たちは、いまから砂虫の皮を取ってきますので失礼します」
俺たちは、ボルツさんの家をあとにして、砂虫を解体できそうな場所、先日ポーション用の薬草を採りきた、南の山並みのふもとに広がる草原地帯に向かうことにした。さすがに王都の近くなだけあり、近くにぽつぽつ人はいるようだが、砂虫を出すのは一瞬で済むはずなので妥協しよう。
「アスカ、この辺りでいいだろう。いまから砂虫を出すから、すぐに輪切りにしてくれ。そうだなー、幅十メートルくらいで頭からしっぽまで。人様に迷惑だし驚かせたくないから、輪切りになったら俺がすぐ収納していく。後で適当な輪切りを収納から一つ出すからそれを使って皮を剥ぎ取ろう」
「はい、マスター」
「それじゃあ出すから構えてくれ。行くぞー『排出!』」
大体長さが二百五十メートルくらいの砂虫を一匹、人のいないところに出してやった。それでも巨大モンスターが急に現れたと思い、腰を抜かしたりパニクる人が出てしまった。まずー。
気付いたら、アスカが二百メートルくらい先で手を振っている。輪切りが終わったのだろう。まったく見えなかった。慌てて輪切りになった砂虫を全部収納した。
ここからは、いったん撤収だ。場所を代えよう。運がいいのかこれが普通なのかはわからないが、あまり臭いもなく血もほとんど出なかったようだ。
『皆さんの見たのは幻です。気にしないでください』
そう念じつつ、近くを流れる川までやって来て、川原に降りて行く。因みにこの川は王都の周りを囲む運河に繋がっている。
「ここなら辺りに人はいないようだし作業できるだろう」
最初からここで輪切りにすればよかった。
「マスター、砂虫の真ん中あたりの輪切りを一つ取り出してください。まず皮を大雑把にはぎ取りましょう」
「分かった。それじゃあ、いくぞー」
真ん中あたりの活きのいいところ?をアスカの前に出してやる。長さ十メートル、高さも十メートルちょっと。断面は薄赤く、真ん中に胃なのか腸なのか白い色のパイプ状の孔が見える。表皮の色は黄土色系の砂色だ。表皮そのものの厚さは二十センチほどあり非常に厚い。見ていると、その表皮の表面に1本筋が入り、そこから表皮が肉の部分から剥離していく。そして、だらだらーと表皮がずり落ちた。
「回します」
ゆっくりと輪切りが転がって半回転した。回転に連れて表皮がずり落ちていき、内側を上にしてうすピンク色のじゅうたんのように広がった。
「マスター、完了しました。肉の方は邪魔なので収納してください」
アスカに言われるまま、皮が剥かれた肉の塊を収納する。
「それでは、内側の余分な脂肪などが付いた部分をそぎ落としていきます」
しばらく見ていたが変化はない。
「???」
「できました、内側を五センチほどの厚さで切り離しましたから、それを一旦収納お願いします。」
収納したら、確かに長さ三十メートルちょっと、幅十メートル、厚さ五センチの膜というか厚手の板のようなものを収納したようだ。
「次は、下から五センチ、十センチの二カ所を切り離して五センチ厚の三枚にします」
「できました」
喋っている時間も含めて二十秒ほどで作業が終わってしまった。よく見ると、アスカの足元に五十センチ角の肉付きの砂虫の皮がある。
「マスター、砂虫の皮を乾燥させて様子を見ましょう。あとで砂虫の肉を食べてみませんか?」
アスカ、砂虫食べたかったのか? あの量の肉を見た後だから俺には何とも言えんな。
「いったん全部仕舞っておくから、後にしよう。砂虫の皮を乾燥させるのは、ボルツさんのところに持って行って頼んでみよう。ボルツさんも興味があるだろうし。それじゃ、急いでボルツさんのところへ帰るぞ」
三十分ほど二人で駆けて、ボルツさんの屋敷に到着した。
すぐにガレージに通されたが、先ほど見た時と比べ、器具などが片付けられていた。やる気を出してくれたみたいだ。
「えろう早う戻って来たけど、空振りしたん?」
「いえ、ちゃんと取ってきました。これが砂虫の皮です」
足元に五十センチ角の砂虫の皮を三枚出す。
「それはサンプルです。砂虫の外皮を三層に分けたもので、下の一枚が一番外側、その上が真ん中、最後が内側で、すべて五センチの厚さになってます。この三枚を乾燥して様子を見てもらいたいと思いまして持ってきました」
「そうやな。5センチやと、使う時厚すぎやもんな。乾かしてどうなるかは大切や。おそらく薄くなって硬うなると思うんやがな。任せてや」
「よろしくお願いします」
「せや、あんたら昼はまだやろ? あたしもまだやから一緒に食べへんか? 今作りかけなんや。大したもんやないけどな。そこに座って待っててな」
「ありがとうございます。食べさせていただきます」
しばらくして出された料理は、ビーフシチューとパンだった。シチューの具は多いとは言えなかったが美味しかった。
「ところでボルツさん。あの飛空艇の動力源は何なんですか?」
「ああ、そこも問題やねん。あれの動力は魔石なんやけど、主なところはレベル3クラスのモンスターの魔石が四個必要なんや。そんな希少なもん簡単には手に入らんやろ」
『アスカ、レベル3クラスのモンスターって何だっけ?』
『戦ったことが有るのはオーガとかゴブリンジェネラルです。あとはヒュージスパーダー、カメレオンバイパー、虹ガエルですか』
それなら結構魔石がある。
「ボルツさん、レベル3クラスのモンスターの魔石は私がたくさん持ってますから安心してください。もっと上のもそれなりに持ってますから必要なら言ってください」
「えっ、ええ!? あんたらいったい何なん?」




