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EP 4

ドワーフを狂わせる『米麦酒とシープピッグ』〜最強の炊き出し〜

「おいガキ! その赤毛の女ドワーフはサイラス様の『所有物』だ! 勝手に連れ出すことは許さ――」

工房を取り囲んだゴルド商会の傭兵が、剣を抜いて脅しをかけてきた。

だが、その言葉は最後まで続かなかった。

「……私の主人の商談に、口を挟むな。ゴミ共」

カグラが『熱波の金棒』を軽くスイングした。

ブンッ!!

ただの素振り。しかし、圧縮された熱波の衝撃が竜巻となって傭兵たちを襲い、彼らは悲鳴を上げる間もなく、工房の向かいの壁まで一直線に吹き飛ばされた。

ドワーフ特有の頑丈な石壁にメリ込み、傭兵たちは全員白目を剥いて気絶している。

「ふむ、地下は狭くて掃除がしにくいですね。ご主人様、壁の弁償は必要ですか?」

「いや、あいつらが勝手にぶつかっただけだ。気にすんな」

俺が苦笑していると、騒ぎと……何よりガーネットが食べた『豚丼』の強烈な匂いを嗅ぎつけて、周囲からドワーフの職人たちがワラワラと集まってきた。

「な、なんだ!? 何の騒ぎだ!?」

「それに……なんて良い匂いなんだ! 腹の底から涎が湧き出てきやがる!」

筋骨隆々だが、飢餓で頬がこけ、フラフラのドワーフたち。

彼らは血走った目で俺たちの周りを取り囲んだ。

「お前さん、さっきの商人か! 頼む、その匂いの元を……飯を売ってくれ! 金なら払う、最高の武器だって打ってやる!」

「ゴルド商会の配給は、泥水みたいなスープだけなんだ……限界だ……ッ!」

ドワーフの職人たちが、プライドを捨てて俺にすがりついてくる。

ガーネットが心配そうに俺の袖を引いた。

「社長……。皆、腕は確かなおじちゃん達なんだ。なんとかしてあげられない?」

俺はフッと笑い、ドンガンの広場を見渡した。

「兵糧攻めで心を折るのがサイラスのやり方なら、俺のやり方は『腹を満たして心を奪う』だ」

俺は魔法ポーチに手を突っ込み、大音量で宣言した。

「【神のオーバー・ロジスティクス】、自動加工クラフト! 一斉出力!!」

ドスゥゥゥンッ!!

広場の中央に、俺のスキルで生成された長大なテーブルと、数十個の巨大な木樽、そして鉄串に刺された巨大な肉の塊が次々と出現した。

「おいおいおいッ! な、なんだあの肉は!?」

「それに、あの樽から漂う香りは……酒か!?」

俺はニヤリと笑った。

「ソラト物流の『福利厚生』のお披露目だ! 食って、飲んで、英気を養え! 今日は俺の奢りだ!!」

ルクスが指を鳴らすと、樽の栓が一斉に開き、芳醇な香りが地下帝国を満たした。

取り出したのは、俺がポーチの時間停止機能と自動加工を駆使して『超長期熟成』させた最高級の酒――**『米麦酒マイバクシュ』**だ。

「さあさあ、皆の衆! こちらがソラト社長特製、米麦草から醸造された極上のエールと、純米大吟醸にございます!」

ルクスが執事の華麗な手捌きで、ジョッキに酒を注いでいく。

「こ、これを飲んでもいいのか……!? いただきま……ッ! !? !!?」

ジョッキを呷ったドワーフの親方衆が、目をひんむいて硬直した。

「な、なんじゃこりゃあぁぁぁッ!!」

「麦の深いコク! そして米の突き抜けるような清涼感! 腹の中でアルコールが爆発して、魔力が燃え上がるようだァァッ!」

「ワシが今まで飲んでたドブ酒は何だったんだ!? これは神の酒だァァッ!」

ドワーフたちは狂喜乱舞し、次々と樽に群がっていく。

そして、メインディッシュはこれだけではない。

「お待たせしましたーっ! メインのお肉、焼けましたよ!」

ルナが神速マッハで広場を駆け回り、切り分けられた肉を各テーブルに配給していく。

それは、魔法鞄の中で香草と共にじっくりとローストされた**『シープピッグの丸焼き』**だ。

豚の強烈な旨味を持つ脂身と、羊の柔らかく芳醇な赤身が完全なバランスで融合した肉。

パリッと焼き上がった皮を噛み破れば、溢れ出す肉汁が醤油草ベースのソースと絡み合い、口の中を暴力的な旨味で蹂躙する。

「うおおおおッ! 肉だ! 甘くて、柔らかい肉だァァ!」

「米麦酒で流し込むと、脳髄が溶けそうなくらい美味ェェッ!」

「生きててよかった! ドワーフに生まれてよかったァァ!」

職人たちは涙と鼻水を流しながら、シープピッグに噛みつき、米麦酒を煽った。

広場は瞬く間に、数千人のドワーフが参加する『超絶大宴会』へと変貌したのだ。

「す、すごい……。社長、たった一瞬で、ドンガンの職人たちの心を完全に掌握しちゃった……」

「腹が減ってる時の美味い飯は、どんな洗脳魔法よりも強烈だからな」

ガーネットも巨大な肉の塊に齧りつきながら、俺を尊敬の眼差しで見つめている。

「ワハハハハ! ソラト社長! ワシらドワーフは恩義を忘れん! ゴルド商会なんぞクソ食らえだ! 明日から、あんたの商会のために最高のコンテナでも武器でも、なんでも打ってやるぞ!」

親方衆がジョッキを掲げ、俺に忠誠(というか胃袋を完全に掴まれた結果)を誓う。

よし。これで、大陸最高の職人集団エンジニアは俺のモノだ。

だが、この熱狂の裏で。

遠くからその光景を青ざめた顔で監視している、ゴルド商会の密偵たちの姿があった。

「ば、馬鹿な……。数万人のドワーフの胃袋を、たった一人で満たしただと……!? しかも、あの極上の酒と肉は一体どこから湧いて出た!? 早くサイラス様に報告を……ッ!」

密偵が慌てて走り去るのを、俺はあえて見逃した。

さあ、焦れ。ゴルド商会のエリート様。

お前の完璧な兵糧攻め(ロジスティクス)は、俺の【神の蔵】の前では児戯にも等しい。次はお前が、自分の首が絞まっていくのを味わう番だ。

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