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第58話「遠征準備」

※本作の制作にあたり、誤字確認や構成検討の補助としてAIツールを利用しています。本文は作者が執筆しています。ご了承の上、お楽しみください。

「サーガスさん。こんにちは!」


一旦、サーガスさんのお店にお邪魔した。


「おう?カナメか。こっちは暇じゃねーんだ。遊びのつもりなら帰んな。」


「いや、装備を買いに来たんですよ。」


「新しい装備だ!??あれから大して時間経ってないのに、そんなことあるか!」


「いえ、本当なんですって。今、ギルドに30000ルグ預けてるんですから。」


「フカシこいてんじゃねーよ!!」


「嘘じゃないですって、これ!ギルドカード!これを調べてもらえればわかるはずですよね?」


「ギルドカードだぁー!!??」


怪訝な顔しながら、サーガスさんは眼のマークが入った台に僕のギルドカードを載せる。


多分あれが、ギルドに預金している額を確認する魔道具なんだろう。なんか微妙にハイテクのように見えるな。


「・・・・・・カナメ。お前、マジかよ。この短期間で30000ルグをギルドに預けているのかよ。大した奴だな。」


「えっと。ありがとうございます。」


「でもなぁ。何があるかというと、30000ルグだとなー。」


「足りないんですか?」


「足りないっていうか、微妙って感じだな。」


「そうですかー。しばらくは、革製品で我慢するしかないんですかね?」


「正直、ギルドに卸そうと思ってたものがあるから、装備自体はあるんだけどな。」


「僕では買えないやつですか??」


「ん?あーそうだな。」


何か歯切れの悪い返事だな。サーガスさんのお店自体には、盾とか剣とか飾ってあるから、これらで良いのに・・・高価なものなんだろうけどね。


ふと、つなぎ服のようなものが目に入った。これも装備品なのか?


「サーガスさん。このつなぎ服はなんです?」


「それは、お前には扱えないものだが、まぁいい。これはパヒデルマって魔物の鱗を編んだものだ。特に属性効果は無いが、魔力を込めれば若干硬質化して衝撃を内部に伝えなくする効果がある。ただ、魔力伝導性はそんなに高いわけじゃないが、それでも魔道効果があるからそれなりの値段で魔道ギルドに卸そうと思っていたところだ。だが、魔力蓄積性は無いからカナメには無理だな。」


「えっと、魔力伝導性・・・なんですそれ?」


「ギルドで教わってないのか?説明するのが面倒だが・・・まぁいいか。」


あからさまに面倒な態度するけど、知らないものは知らないんだ。黙って聞くことにする。


「魔力伝導性ってのは、込めた魔力をどれだけ効率よく装備全体に伝えられるかってことだ。高いほど、少ない魔力でも魔道効果を引き出しやすい。」


なるほど。実質的な魔道具に近いものだね。前世のMMOゲームとかでよくあるやつ。


「魔力蓄積性は魔力を溜めておける量だ。これが高ければ、魔力適正の無い奴でも魔力さえ込めて貰えれば、蓄積した魔力が無くなるまで、魔道効果を発動することができる。ほとんどの賞金稼ぎはこの魔力蓄積性を重視してるわけだな。ギルドの連中も例外では無いがな。」


「へー。便利なものなんですね。」


「あーそうだな。だが、勿論その二つの特性も高ければ高いほど、高価になっていくからな。これは・・・まぁ革の胸当てよりは良い装備だがお前には・・・。」


そう言い終わる前に、僕はつなぎ服に魔力を込めてみた。服がわずかに光り、少し膨らんだように見えた。


「うん?なんだろう?なんか思ったより、詰まってるというか、確かに何か魔力込めにくいですね。」


「・・・・・・・・・。」


サーガスさんは口をあんぐりと開けてる。僕何かしたかな?


「カナメ。お前、魔力適正を持っていたのかよ。」


「はい。持ってます。」


っていうか、言ってなかったっけ?いや、言ってなかったな。そういえば、孤児院を卒業してから、誰にも言ってなかったと思う。


サーガスさんが知らないのは当然か。


「ちょっと待て。魔力適正のある奴は、聖属性なら教会、無属性で治癒持ちなら修道院か闘のみなら騎士団。他の属性は魔道ギルドが囲うはずだ。なんで、魔力適正のある奴が賞金稼ぎなんて汚い事をやってるんだ?魔力適正があるなら、どこかしらに所属出来ただろ?」


汚い事って・・・でも、賞金稼ぎはそう思われてるってことだよね。ギルドの感じ的にも粗暴な荒くれ者の最後の成り上がり手段って感じだし。


「えーとですね。ちょっと話は長くなるんですけど。」


僕はサーガスさんに、今までの事を話した。


故郷が滅んだこと。リーネのため・・・幼馴染のために、魔道ギルドに入らずに孤児院に所属したこと。そして、孤児院を卒業した年齢では、ギルドに所属できず、賞金稼ぎになったことを話した。


「なるほどな。まぁ賞金稼ぎには訳有りな奴も多いが・・・そうか。幼馴染のためにギルドを蹴ったのか。カナメ、お前も泣かせるじゃねーか。」


「ええ。まぁ・・・そうですね。」


「合点がいったぜ。こんな短期間でここまで稼ぐ奴なんて、そうそういないからな。魔力適正があるなら、納得だ。」


そう言いつつ、もう2つ。グローブと靴を持って来てくれた。


「グローブは、つなぎ服と同じパヒデルマの鱗を編んだグローブだ。今の革製よりマシになる。このブーツはタウマニマって魔物の糸を内部に編んである。どちらも魔道効果はあるからな。特にブーツのほうは、防御力もそうだが、脚力が少しだけ上がるから歩くのも咄嗟のダッシュも楽になるぞ。魔力適正があるなら、これで良いだろう。ただし、魔力蓄積性は無いからな。いざって時のスペア魔力にはならん。あくまで自分のスタミナと相談しながら使えよ。」


こういう面倒見の良いところが、サーガスさんの良いところなんだろうな。なんて思ってしまった。


「これ全部で28000ルグだ。どうする?」


28000ルグ・・・相変わらず大金だ。でも、必要経費だよね。防具はお金を掛けないとね。


「わかりました。ツケ払いできますか?」


「あいよ。全く、良いお得意さんになってもらわねーとな!ほら、この手形にサインしろ。ツケ払いのやり方は色々あるが、この街では手形にサインするのが多いな。それだけじゃないが。」


サーガスさんは僕に28000ルグとサーガスの名前と支払期日等が書いてある絵馬ぐらいの薄い板を出してきた。これが手形か。てっきり紙に書くのかと思ったら、板に書くのか。


僕はちょっと驚きながらも名前を書く。


「古いグローブと靴はこっちで回収するからな。過信するなよ!まだ、胸当ては装備しておけ。死にたくなかったらな。」


「はい!わかりました。」


そうして、防具をちょっと一新した。正直着てみると、工場勤務の人みたいで若干ダサいなって思ったけど、命には代えられないからね。


「魔力適正があるなら、追加で説明しておくが、防具しかり武器しかり装飾品しかりだが、魔道具には、常時発動型と任意発動型がある。」


常時発動型と任意発動型・・・パッシブ型とアクティブ型ってことだよね。ここでしっかり説明してくれるのがサーガスだよね。


「常時発動型は装備した瞬間から装備者の魔力を吸い取って、効果を発動する魔道具だな。任意発動型はその逆で、魔力が帯電している状態か使用者が魔力を込めると発動するものだな。そして、発動効果は常時発動型のほうが強力だ。」


成程成程。ここまでは想像通りだな。


「結論から言うが、魔道具の中には精神に強く作用するものがある。そういう代物は常時発動型に多い。基本、所持も使用も販売も製造も禁止だ。許可制ではあるが、一般人に許可が下りることなんざまず無ぇ。」


「え!?精神にって・・・具体的にどうなるんですか?」


「色々あるが、例を挙げるなら、凶暴化したり、異常な全能感に取り憑かれて、人の話を聞かなくなったりする。それらがなぜ危険かは、カナメ。お前なら分かるだろ。」


うん、そこまで説明されれば分かる。


「繰り返しになるが、精神に強く作用する魔道具は常時発動型に多い。だから、常時発動型を扱う時は特に注意が必要だ。俺みたいな店で扱えるものなら問題ねぇが、精神に強く作用するような代物はまず出回らねぇ。そういうものは、ほとんどギルドや王家が封印して管理してる。それか許可を受けた貴族だな。」


「・・・かなり危険ですね。」


「ああ。そうだな。だから、カナメ。何かの拍子に手に入れても使うなよ。最悪、ギルドに提出すれば、お咎めなしになるはずだ。お前がお行儀よくしていればな。」


「な・・・なるほど。でも、それが危険な魔道具かどうかって、どうやったら分かるんですか?」


「それを鑑定する方法をギルド側が持っているらしいが、俺達には詳しく知らされていない。つまりだ、盗賊か破落戸かわからんが妙なものを手に入れても使うな。あまり褒められたものでは無いが、どうしても危険なら破壊しろ。そうでなければ、下手に触らずギルドに任せておけばいい。いいか。カナメ。店以外で手に入れたものは基本信用するな。必ず、店を通して販売されたものを使え。」


「わ・・・わかりました。」


「脅すような事を言ったかもしれんがな。」


「いえいえ、サーガスさん。ありがとうございます。幸い、魔道ギルドにもツテはあるので、そっちを頼りますよ。」


ツテって言っても、ウィルとかボラン師匠の事だけどね。


「魔道ギルド・・・ね。カナメ。さっき言った幼馴染って女か?」


「え?はい。女の子ですね。」


「そうか・・・。」


「???どうかしましたか?」


「・・・一応言っておく。カナメ。お前、ギルドに身辺を調べられてると思っといた方がいいぞ。」


「え?」


え??一体なんの話だ?


「さっきも言ったが、魔力持ちは基本、教会や魔道ギルド、修道院、騎士団が囲うのが普通だ。表向きは力を正しく使うための教育や指導をして、街や国に還元すること。それらが大義名分だ。それらは別に嘘ではないが、他にも理由はある。」


サーガスさんは先ほどとは打って変わって、真剣・・・というかちょっと暗い感じで説明してくれる。


「それは、力を集中させることで、国や貴族の連中に負けない権力を作ることだな。それがあるから、教会も魔道ギルドも王族や貴族に対してある程度強く出れる。」


「・・・。」


僕は黙って聞くことにする。真剣な話だからだ。


「そんな中、魔力持ちが魔道ギルドに所属せず、賞金稼ぎをやってる奴。当然ギルドとしては、お前がどこの誰で、誰と繋がりがあるのかくらい調べてると思った方がいい。その幼馴染のこともな。」


「じゃあ、何で僕を魔道ギルドに所属してくれなかったんですか?」


「さぁな。ただ、お前。孤児院にいたって言ったよな。その孤児院ってあのエルフが営んでるフェリーシア孤児院だろ?」


「はい。その通りですけど。」


「人間と違って、俺らドワーフやエルフはほぼ全員が魔力適正がある。だから、ある程度国に対して融通が利くんだが、そのエルフが何かしたのかもしれないな。それか、魔道ギルド側で何か別の判断があったか。そこらへんはわからないな。」


「・・・。」


仮にユミル先生が何かしたとして、何でそんなことをしたんだろう?


「一つだけ覚えとけ、カナメ。王族だろうが、貴族だろうが、ギルドだろうが、綺麗事だけで回ってるところなんざねぇ」


「・・・どういう意味です?」


「そのままの意味だ。何十年、何百年と続いてりゃ、表沙汰にできねぇことの一つや二つは抱えてる。昔の揉め事だったり、誰かの失敗だったり、組織を守るために切り捨てた奴だったりな」


「・・・・・・。」


「勘違いすんなよ。だから王族も貴族もギルドも悪党だって言ってるんじゃねぇ。大勢の人間を抱えてりゃ、全員が納得するような綺麗な選択なんざできねぇ時もあるって話だ」


「じゃあ・・・・・・僕も気をつけた方がいいってことですか?」


「そんな顔すんな。脅すような事を言っちまったがな。」


「だったら!」


そんな嫌な話はしてほしくなかった。


「悪かったよ。だがな、何かの拍子で上の連中と敵対すりゃ話は変わる」


サーガスさんの声が、少しだけ低くなった。


「その時になっても、お前一人だけの問題で済むと思うな。権力ってのは、そんなに綺麗なもんじゃねぇ」


真っ先にリーネの顔が浮かんだ。


「・・・リーネを人質にするってことですか?」


「最悪ならな。だが、何も今からそんなことを心配しろって言ってるんじゃねぇ」


「・・・。」


さっきから何の話をしているんだ?


「王族だろうが貴族だろうがギルドだろうが、好き好んで敵を増やしたいわけじゃねぇんだ。お前が信用されりゃ、そいつらは敵じゃなくなる。逆にあの娘を守る力にだってなる」


「守る力……」


「世の中、腕っ節だけが力じゃねぇってことだ。覚えとけ」


何か重い物が心にズシっと来た感じ。


身体全体が重くなったというか、気を落としてきたというか。


「重ねて悪かった。こんな話をするつもりは無かった。俺が言いたかったのは、身の振りを考えろってことだ。」


「ええ、ちゃんとわかってるつもりです。」


「よし!装備とは全く関係ない話をしちまった。要らない説教みたいな話もしちまったからな。着付けもしてやるよ。後、胸当てもちょっと磨いてやる。これらはサービスだ。」


「ええ。ありがとうございます。」


そうだよね。気持ちを切り替えよう!今の所、僕は反逆なんてするつもりは無い。


そうだ。そんなことするつもりが無いんだから、要らない心配なんだ。


「お!前回からちょっと背とか伸びたんじゃねーか?相変わらず人間のガキは成長が早いな。」


そんな雑談を交えて着付けしてもらった。かなりの出費だったな。


「そうだ。カナメ。余計なお世話ついでに、ちゃんと魔法薬は買ってるか?平時でも最低2個。欲を言えば、3個を持っておけ。そこらへんの適当な店に行けば売ってるからよ。」


「分かりました。行ってみます。」


着付けも終わり、僕はサーガスさんのアドバイス通りに薬屋に向かう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「こんにちは!」


確かに、魔法薬が売ってそうなお店はそこそこあった。特に、拘りも無かったため、店内が明るそうなお店を選んだ。


「いらっしゃい。子供?お使いかい?」


お店には、ちょっと年いったお婆さんがいた。


「いえ、これでも、賞金稼ぎです。」


僕はお婆さんに対して、ギルドカードを見せる。


「賞金稼ぎね。見たところ新米(ノービス)だね。じゃあ、低級魔法薬でいいね。」


そうして、3個ほど、瓶を出してくれる。


「はいよ。低級魔法薬は1個1800ルグだ。」


「1800ルグ!!??」


高い!え?そんなに高価なの?ゲームとかだと魔法薬って安価で手に入るイメージだったのに。


「嫌なら買わなくて結構。霊薬や魔法薬は賞金稼ぎにとって、最後の命綱。それを怠って死ぬなら好きにしな。」


お婆さんは僕を突き放すように答える。


「後、治療してもらいたいなら治癒師や聖職者を雇うぐらいだろうが、1800ルグに尻込みしてる金無しにそいつらを雇う金を用意できるわけがないさね。諦めて帰んな。」


あまりの値段に驚いたがしょうがない。これも必要経費だ。でも、2個は買えないな。せめて、1個買おう。


「いえ、買います。1本だけ。ツケ払いできますか?」


「あいよ。まぁ出来れば、2個持っておいたほうが良いだろうが。新米(ノービス)だからね。手形を発行してやるよ。」


こうして、僕は低級だけど、魔法薬を1個手に入れて、なんとか装備と道具はそろった。


現状できる範囲で、遠征の準備はできただろう。


このあと、遠征参加を表明しにギルドに行こう。

所持金:2880ルグ


カナメ装備

武器:オーククラブ

腕 :パヒデルマのグローブ

身体:パヒデルマのつなぎ服+革の胸当て

靴 :タウマニマのブーツ

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