第56話「お泊りデート(上)」
※本作の制作にあたり、誤字確認や構成検討の補助としてAIツールを利用しています。本文は作者が執筆しています。ご了承の上、お楽しみください。
翌日、僕は珍しく早起きした。
思ったより、楽しみにしていたらしい。
「さて、リーネを迎えにいこうか。」
勿論、いつもの通り、受付にはいつもの宿娘がいた。
「おはよう。今日も早いね?」
「おはよう。いつも通りだよ。」
この子はいつ寝てるんだろう?あんまり気にしないほうがいいのかもしれないけど。
前々から気になっていたことを聞いてみた。
「そういえば、君の名前は?僕はカナメ。よろしくね。」
「何?いきなりどうしたの?」
うん。確かにいきなり過ぎたね。でも、気になったからしょうがない。
「これからもお世話になると思ってさ。名前ぐらいは知っておいたほうが良いと思ったんだ。」
「ふーん。そう。・・・アニマ。私の名前。」
「アニマね。よろしくね。アニマ。そうだ!ちょっと、僕の荷物預かってもらっていい?」
「え?荷物??良いけどさ。」
「うん。ごめんね。後、明日と明後日はここに帰らない。3日後に取りに来るよ。」
「・・・別料金にしていい?」
「いいよ。いくらなの?」
「いや、冗談だったんだけど。」
もっと、分かりやすい冗談を言ってくれないかな。本気かと思った。
そして、僕の袋に入った装備品を渡した。
「はい。これ。お願い。」
「うん。ちょっと重いね。」
たしかに、棍棒とか入っているからね。それなりに重いかも。
「後、もっと良い銭湯は無いかな?」
「銭湯?もっと、街の中心に行けばあるわよ。基本、街の中心は貴族様というか、お金持ちがいるからね。その代わり、高いよ?」
「大丈夫。街の中心ね。それじゃあ、行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
僕はタベルナヴィーヴァに向かう。こんな朝にタベルナヴィーヴァに行くのは初めてだ。
タベルナヴィーヴァに到着したら、すでにリーネと女将さんが外に出てた。
「あっ!カナメ!おはよう!」
「リーネ!おはよう。女将さんもおはようございます。」
「おはよう。カナメ。それじゃあ、リーネを頼んだよ。」
「はい。行こうリーネ。」
「うん!」
「あっ!カナメ。ちょっと待ちな。」
リーネと手を繋いで歩こうとしたとき、女将さんが呼び止める。
「分かっているとは思うが、あんまり治安の悪い場所には行くんじゃないよ。」
「女将さん。分かってますよ。」
「ならば良し。行っておいで。」
改めて、リーネと二人歩き出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リーネと手を繋いで大通りを歩く。勿論、女将さんの忠告通り、スラムなんて近づくつもりはない。
「そういえば、リーネ。朝ごはん食べた?」
「ううん。食べてない。」
「そっか。じゃあ、何か食べようか。」
「うん!」
見たら、サンドイッチみたいなのが13ルグで売っていた。
いつもよりちょっとだけ高いけど、所持金からしたら問題ない。
「すみません。それ二つください。」
「あいよ。」
サンドイッチ(のようなもの)を受け取る。
そうだ!飲み物も欲しいよな。
良い飲み物があるかと思ったら、レモネードっぽい飲み物が7ルグで売っていたので、これも2つ買う。
「リーネ。お待たせ。これ食べよう。」
「うん!」
大通りなので、腰かける段差があるから、そこで二人で座って食べる。
リーネがいるから、いつもより豪華にしてしまったな。
サンドイッチも味は濃いけど、美味しいね。
レモネードも期待してなかったけど、普通にあっさりして飲みやすい。
「美味しいね。リーネ。」
「うん!美味しい。カナメはいつもこんな感じでご飯食べてるの?」
「いや?いつもはもっと質素な感じだよ。」
「そうなんだ。」
リーネも喜んでくれてると思いたいね。
「リーネは普段何を食べてるの?旦那さんと女将さんの賄いかな?」
「うん。旦那さんが作ってくれるよ。でも、お客様に出す料理とは違うかな。」
「そうなんだね。」
そりゃそうか。
「毎日ご飯が食べれているなら大丈夫そうだね。」
「うん・・・でも、やっぱりカナメと一緒にいたい。」
「うん。ごめん。」
嬉しいけど、今の僕では難しいと思う。
多少お金はあるけど、何の後ろ盾もない。
いつ死んでもおかしくない賞金稼ぎだから、僕が死んだらリーネはどうなるんだろうか。
いや、今はそんなこと考えるな。今はリーネと一緒にいることを楽しもう。
「よし!食べたね。リーネ行こう!」
「うん!」
ご飯を食べた後、しばらくリーネと手を繋いで歩く。これだけでも楽しくなるから不思議だ。
そのまま、広場に向かう。広場には、屋台は無いけど、近くに持ち帰りができるお店が多々ある。
お昼はここで食べよう。
「ちょっと疲れたね。ここでランチにしようか。」
「うん!」
リーネと一緒にキッシュとお茶を買ってきた。これも、2つで40ルグだ。ちょっと高いな。
まぁいいさ。リーネと一緒だ。多少奮発しても問題ない。
ここは相変わらず花壇に花が咲いている。ある程度、テーブルと椅子もあったりするから、適当な場所に腰を掛ける。
「そういえば、カナメ。いつも何しているの?」
「うん?僕はね。バウンティギルドに所属してね。賞金稼ぎをやってるよ。」
「それって、ディエが言ってた冒険者とどう違うの?」
「あんまり違いはないかな。大きい枠組み的には、冒険者も賞金稼ぎも変わらないね。拠点があるか流れ者なのかぐらいしか差がないかな。」
「そうなんだ。大丈夫なの?」
「正直、大丈夫かと言われるとかなり厳しいね。いつ死ぬかもわからないけど、稼ぎは良いんだ。」
「あの時・・・何かあったの?」
「あの時?」
「カナメが急に元気なかった日。」
多分、ディエが行方不明になって、僕が大怪我をした日の事を言ってるのだろう。
「うん。ディエがね。行方不明なんだ。ギルドでは、消息不明は死亡扱いになる。多分もう生きていないのだろうと思った。それがショックだったんだ。」
「そうだったんだ。」
「そのショックを引きずったまま依頼をしてたらさ。油断しちゃって大怪我しちゃったんだ。」
「えええ!!??」
「今は大丈夫だよ。何も問題ない。でも、賞金稼ぎっていうのは、そういう職業なんだ。いつ死ぬかわからない。死んでも誰も気にしない。でも、大金は稼げる。そんなものさ。」
リーネとこれまでの話をする。弱音を吐くつもりは無かった。けど、今ならリーネは受け止めてくれるんじゃないかと思った。だから、つい・・・甘えてしまった。
「カナメもウチで働く?女将さんと旦那さんに相談してみようか?」
「いや、大丈夫。それに」
「それに?」
「いや・・・今は女将さんにも旦那さんにも負担になっちゃうからさ。僕は大丈夫だよ。」
これは本心ではあるけど、本当は違う。
僕自身が本当の意味でリーネと一緒に暮らしたい。そう思ってる。
アルスさんの約束だから。
「リーネのほうは?お仕事は慣れたの?」
「うん。最初は上手く出来なくて、お客様と上手に話せなくて、大変だったけど。毎日やってたら、大丈夫になった。」
「それは良かったね。」
本当に良かった。リーネが社交性を身に着けつつある。本当に喜ばしい事だ。
「意外とね。肉体労働があって、大変なんだ。後、お遣いもあったりしてね。それに、酔っぱらったお客様もいて、その人達を女将さんと旦那さんが追い出したりするときもあって、すごいんだ。」
リーネはこれまでのお仕事の話をしてくれる。何にせよ楽なお仕事は無いよね。
「それに一番嫌なのは、夜が寂しい。カナメもいてくれないし、眠れないこともある。」
「本当にごめん。」
謝ることしかできない。ずっと一緒にいてあげればいいのだけども。
暗い話がしたいんじゃない。折角のデートなのだから、もっと明るい話題をしたい。
「よし!もうちょっと散歩しようか!行こう!リーネ!」
「うん!」
リーネに手を出すと、当然の如くリーネは僕の手を握る。
その後も蜜菓子を9ルグで食べたり、ちょっとした果物ジュース8ルグで飲んで、とにかく食べ歩きしながら二人で街を歩く。
大体60ルグ使ったかな。
そして、夕方になった。
「そうだ!リーネ。最近お風呂に入っている?」
「お風呂って孤児院にあったやつだよね?」
「そう!浴槽にお湯が溜めてあって、気持ちよかったよね。」
「うん!でも、働いてからは、入ってない。身体を拭くだけだから。」
そりゃそうだよね。この世界でお風呂がある家庭は相当なお金持ちなんだから。
「それじゃあ、銭湯に一緒に行こうか。」
「ええ!?」
リーネはかなりびっくりした。僕そんなに変な事言ったかな?
「一緒って・・・カナメと一緒にお風呂入るの?」
リーネがモジモジしながら、聞いてきた。しかも、かなり大きな誤解をさせてしまった。
「ち!違うって!勿論、男女別れてると思うよ。銭湯まで一緒に行こうって事だよ。」
「あ、そうなんだ。びっくりした。うん。行きたい!」
「それじゃあ、行こう!」
そうして、街の中心部に向かう。具体的な場所は分からなくても、なんとかなると思った。
思えば、魔道ギルドも教会も街の中心まで行かなくても、中心部にはあった。
権力とお金が集まるところは中心部に集まるのだろう。
2人で歩いていると結構大きめな銭湯を見つけた。
「ここみたいだね。行こうか。」
「うん!」
「いらっしゃい!ここは1人180ルグだよ。お金あるのかい?」
「はい!お願いします。」
360ルグを払う。
「それじゃあ、リーネ。お風呂から出たら、ラウンジで待っててね。」
「うん!」
そうして、2人してお風呂に入った。勿論、男女で分かれていた。
「おお。ロッカーがある。それに、浴場も広い。すごいな。流石180ルグの銭湯か。」
かなり感心してしまった。男女分けてあったけど、ある程度清潔でお風呂も流石に垢は浮いてなかった。
人もそれなりにいたけど、髭を生やした人が一人もいないし、皆お上品な感じに見えてしまった。
単なる思い込みなのかもしれないけどね。
お風呂から出てくるとリーネはまだ出てきていなかった。
しばらく待つと、リーネが出てきた。
「カナメ!お待たせ!」
「うん。それじゃあ、今日泊まれる場所に行こう。」
リーネと一緒に宿屋を探す。
気のせいかもしれないけど、リーネから良い匂いが漂ってくるような気がする。
いかんいかん!変態か!僕は!自分を制御する。
宿屋は案外簡単に見つかった。というか、銭湯のすぐ近くにあった。
宿屋に入る。
「こんばんは。今日泊まれますか?」
「いらっしゃい・・・お客様。お金あります?ウチは結構高いよ?」
「大丈夫です。問題ありません。」
「そうでしたか。一人300ルグで二人で600ルグです。お金はあります?」
うっ!かなり高い!でも、致し方ない。リーネと二人なんだ。このくらいの出費は受け入れないと。
「はい。600ルグです。」
「はい。確かに。では、これが鍵で二階の階段上がって左手の部屋です。」
「ありがとうございます。行こう!リーネ!」
「うん!」
リーネと一緒に指定された部屋に入る。ベッドが2つあって、寝間着もおいてある。これはすごいな。
流石300ルグの宿だ。
「それじゃあ、身支度して寝ようか。」
「うん。でも、カナメ。これ着替えるの?」
寝間着を持ってリーネは僕に聞いてきた。正直どう答えるか迷ったけど、正直に答える。
「うん。多分。ベッドを汚さないようにするために着替えないといけないと思う。ちょっと部屋の外に出てるから、その間に着替えちゃってね。」
「・・・うん。わかった。」
僕は部屋から出ていく。
しばらく経つと、リーネが部屋を開けてくれた。
「終わったよカナメ。」
「うん。じゃあ、今度は僕が着替えるね。」
「うん。」
そうして、今度は交代する。
寝間着はしっかり畳んであって、清潔にされてるね。
ささっと着替えて、自分の服を畳む。そして、扉を開けてリーネを呼ぶ。
「リーネ。終わったよ。」
「うん。カナメ。似合ってるね。」
「そうかな?ありがとう!リーネも似合ってるよ!」
「えへへ。そうかな?」
「うん。可愛いと思うよ。」
「うん!嬉しいな!」
そして、2人で寝る前の身支度をする。
「リーネ。寝ようか。」
「うん!!」
そうして、ベッドに入る。孤児院の時と同じようにリーネが僕のベッドに入ってきた。
「ダメ?」
「ダメじゃないよ。一緒に寝よう。」
「えへへ。」
リーネの笑顔が僕の疲れた心を洗い流してくれるようだ。
「カナメ。カナメはまだ賞金稼ぎってお仕事続けるの?」
「うん。続けると思う。大金を稼いだり、貴族やギルドにコネが出来れば、多分リーネと一緒に居られると思うんだけど。」
そうなった時は、リーネは大丈夫だと思うけど、その分柵も多くなって、身動きが取れなくなる可能性もありそうなんだけど。
そんなことは今考えることじゃない。
「そうだよね。私、カナメと一緒にいる時が一番安心できる。」
「うん。分かってる。本当にごめん。」
「カナメってば、謝ってばっかり。」
「うん。ごめん。」
謝ることしかできない。まだ、少ない時間でしか一緒に居られないのだから。
「でも、今は一緒にいるよ。」
「うん。だから安心できる。おやすみ。カナメ。」
「うん。おやすみ。」
孤児院を卒業してから、久しぶりにリーネと一緒に寝た。
改めて思う。僕が頑張る理由。アルスさんと交わした約束。そして、僕自身が大切にしたいもの。それは今、すぐ隣で安心したように眠っている。
所持金:34470ルグ
カナメ装備
武器:オーククラブ
腕 :革のグローブ
身体:革の胸当て




