第54話「ステップアップ」
※本作の制作にあたり、誤字確認や構成検討の補助としてAIツールを利用しています。本文は作者が執筆しています。ご了承の上、お楽しみください。
宿を出て、朝御飯を食べて背伸びする。
「よし!今日も行くか。」
油断するつもりは無いけど、ティラノバードを狩るのも大分慣れてきた。
所持金が5770ルグまで増えた。当分は金欠で困ることも無い。
リーネと一緒にデートするくらいはしてもいいかもね。
そう思いながら、いつもの通りギルドに到着した。
「クララ。おはようございます。」
「おはよう。カナメ。今日もティラノバードですか?もうそろそろステップアップしても良いと思いますが。」
「ステップアップ?」
「ええ。貴方は驚異的な速さで依頼を遂行しています。装備も一通り揃ったみたいですから、次の固定依頼を受けてもよいかと。」
なるほど。そうはいっても、ほぼ初期装備の棍棒と胸当てとグローブだけなんだけど。
「正直に言うと、もっと早く脱落すると思っていました。賞金稼ぎを目指す子はそれなりにいます。でも、ほとんどが最初で脱落しますからね。良くて大怪我、悪くて死亡です。そんな中で貴方は最年少ながら、平均で3匹のティラノバードを狩っています。これは凄い事ですよ。」
「ありがとうございます。クララに褒められるのは悪い気はしませんね。」
「はい。でも、クライアントからの依頼は止めておいた方が無難です。ですので、次の固定依頼を受けても良いと思います。」
そっか。どんな依頼があるかはわからないけど、流石に飛び級しすぎもまずい。
今は地道に行かないとね。
「わかりました。ありがとう。」
クララに礼を言って、黒板を見る。そういえば、黒板をしっかり見たの初めてかも。
黒板の固定依頼を見ると、ティラノバード、アンガーグルニ、デイロフォナスか。
ティラノバードとアンガーグルニは食用としてだよね。
デイロフォナスってこれもそうなのかな?一匹狩れば1600ルグって書いてある。かなり高級だな。
「クララ。このデイロフォナスって、そんなに美味しいの?」
「・・・カナメ。貴方は食べることしか考えていないのですか?」
クララに呆れられてしまった。いや、別にそんな食い意地張ってるわけじゃないんだけど。
「この魔物は、低級ではありますが、皮や牙は魔道具に使われるし、内臓等も解毒剤や魔法薬の材料にもなります。街の駆け出し錬金術師の良い素材なんですよ。」
なるほど。だから、それなりに高いのか。
固定依頼を見ると、アグルニが700ルグって書いてある。複雑な気分だ。村では、かなりの数を税として持っていかれてたから。
「デイロフォナスは素早いし、爪や牙は鋭く、装備が整っていない場合は危険です。しかも、ある程度知能もあるので、油断していると逆に殺されます。カナメ。貴方には丁度いい相手だと思います。」
ふむふむ。油断は禁物だけど、挑戦する価値はありそうだ。
「わかりました。この固定依頼を受けます。どこに生息しているのですか?」
「この街の西側の森の湿地帯あたりに生息しています。油断しないよう、気を付けてくださいね。」
「はい。行ってきます。」
そう言って、西の門に向かう。
「いつも通りで良いはずだ。絶対重力で動きを止めて殴る。それでいいはずだ。」
脳内でシミュレートしながら、歩く。西門を抜けて、森の中に入る。
結構湿度が高くてジメジメするな。北の森はそんなことなかったのに。
「正直、さっさと終わりにしたいな。よし!質量探査!」
周囲に動きのある物質を探知しながら森を進む。
今の所、怪しいものは何もない。
「クララが言っていたけど、知恵があるって言ってよね。油断しないようにしよう。」
そう思っていたら、質量探査のおかげで、何かちょっとだけ質量のあるものが動いたのが分かった。
「こいつか?」
腰につけていたオーククラブを手に取って、上段に構えながら、動きがあった方角へ進む。
「GYAAA!!」
近づいていくと、草むらからいきなり大口を開けて襲われた!
「うわ!!」
びっくりして、固まってしまった!幸いにして、オーククラブを構えていたから、棍棒のほうに噛みついてきた。
かなり力が強い!オーククラブを前に構えてなかったら、やられてた!
「あっぶな!こいつがデイロフォナスか!」
そう思ったら、今度は爪で引っ搔いてきた。
「うぐぅ!」
爪が革を裂いた。だが皮膚までは届かない。
「GYAGYA!!」
奇襲がバレたと思ったのか、棍棒を離して、すぐに逃げて行った!
「マジかよ!?しかも、逃げ足が速い!」
絶対重力で動きを止めたいけど、脱兎のように逃げて行った。
「くそ!逃がすか!」
そう思って、焦って追いかける。追いかけていたら、木の根に足を引っかけて躓いてしまった。
「クソ!逃げられたか?」
そう呟いた、その瞬間!今度は横から新しいデイロフォナスが襲い掛かってきた!
「GYAAAA!」
やばい!!やられる!
「絶対重力!!!」
重力加重で地面に這いつくばらせる。
「ぐ!この野郎!!!」
デイロフォナスに渾身の重力をかけたオーククラブを振り下ろす。
嫌な音がしたが、一撃で倒したみたいだ。
「ハァ・・・ハァ・・・焦った。本当にやられるかと思った。」
もう一匹伏兵がいたのか。知恵なのか偶然なのかわからないけど、奇襲して、ダメだったら、逃げる。そして、隙を見せたら伏兵で攻撃。
知恵があるってクララは言ってたけど、こいつら連携していたのか?
これ、オーククラブを前に出してなかったら、腕を持っていかれてたかも。
胸当てには爪痕が残っていた。冷汗が出る。もし、胸当てを買っていなかったら、やられてたかもしれない。
「サーガスさん。ありがとう。」
あの時、お金を惜しんでいたら今頃死んでいたかもしれないと思うと感謝の心が湧いてくる。
足が震えていることに、この時初めて気付いた。本当に一瞬の隙が命取りだ。
「周囲に敵はいないみたいだ。とりあえず、短剣で血抜きしてギルドに持って帰ろう。」
これで税引き後1440ルグか。危なかったけど、良い稼ぎだ。ちょっと危なかったけど。
デイロフォナスを血抜きして、低重力で軽くしてさっさとギルドに運ぶ。
ギルドに持って帰ってきたら、女の子が先に受付していた。
「クララ。これ、ティラノバード」
「はい。ロミィ。お疲れ様です。」
ティラノバードを狩っていたようだった。昨日までの僕と同じかな。
女の子が振り返った。どこかで見たような顔だな?
「貴方・・・私と同じ新米だったのに、どうして?」
私と同じ新米??君と知り合いだっけ?思い出そうとする。
「ああー!ノービスセミナーにいた女の子か!!」
そういえば、一人だけ女の子がいたな!思い出した!
「・・・随分と余裕なのね。それとも、私なんて眼中に無かった?」
「いや、そんなことないよ。一人だけ女の子だったから印象に残ってた。」
「っ!馬鹿にして!貴方に必ず追いつくわ!」
「え!?いや、馬鹿になんてしてな・・・。」
「私はロミィ。賞金稼ぎになったばかりだけど。貴方みたいな軟弱者に負けるなんて許されない!」
そう言って、ギルドから出て行ってしまった。
なんかライバル視されてる?なんで、ほぼ初対面なのに、あんな敵意を向けられなきゃいけないんだ?
「え?僕、何かした?」
「・・・カナメ。貴方は色々と無自覚ですね。一応、あの新米の中では貴方が一番目立っているのですよ。」
「え?そうなの!?なんで??」
「・・・そのうち分かると思います。さぁ、カナメ。デイロフォナスを狩ってきたんですね。こちらで受付します。」
「あ、はい。」
そうして、デイロフォナスを渡して、1440ルグを貰う。
変な所で因縁を付けられてしまったな。トラブルに発展しなければいいのだけど。
所持金:7,210ルグ
カナメ装備
武器:オーククラブ
腕 :革のグローブ
身体:革の胸当て




