第51話「油断」
※本作の制作にあたり、誤字確認や構成検討の補助としてAIツールを利用しています。本文は作者が執筆しています。ご了承の上、お楽しみください。
周りが暗い。でも、身体が動かない。
目の前には・・・血だらけのアルスさん?
「カナメ。何でリーネと一緒にいてやらないんだ。」
「アルスさん!?これは・・・違うんだ!」
「お前なら、リーネを一人にさせないと思っていたのに。」
そうじゃないんだ。僕だって、一緒にいたいんだ!でも、出来なくて。
最善だと思う行動をしているだけなんだよ!
「カナメ!お前を信じていたのに」
止めてくれ。そんなに僕を責めないでくれ!
「はぁ!!」
ショックで飛び起きる。息が上がっている。苦しい。
「はぁ・・・はぁ・・・夢?」
ひどい夢だ。汗だくだし、最悪の朝だ。
「嫌な夢だったな。僕自身も気にしてるのかな?」
嫌なイメージを頭を振って振り払う。
ギルドに行こう。今日もノルマをこなさないと。
「おはよう。ひどい顔ね。どうしたの?」
受付の人が心配して顔を覗き込んでくる。
「うん。大丈夫だよ。」
「そうは見えないけど。」
「本当に大丈夫。行ってくるね。」
「え?ええ。いってらっしゃい。」
あんまり深入りされたくなくて、無理やり話を終わらせて、宿を出る。
「あんまりお腹空いてないな。でも、食べておかないとね。」
気分を入れ替えて、商店街に向かってご飯を食べる。
昨日と同じ。すいとん汁と肉饅頭を合計10ルグで購入して食べる。
「うぐぅ!」
若干吐きそうになりながら、無理やり食べる。
食べるのも重要だと信じているから、お腹減っていなくても食べる。
正直苦しいけど、サボるわけにもいかない。
その足でギルドに向かう。
「おはよう。今日もレンタルをお願いします。」
「カナメね。おはよう。・・・余計な事だと思うけど、体調悪い?」
クララさんにも心配されてしまった。
「大丈夫です。平気ですので。」
「そう?なら良いけど。」
そう言って、ショートソードを差し出してくれた。
「ありがとうございます。」
お礼を言って受け取る。そういえば、前から気になっていたことクララに聞いてみた。
「あ。そういえば、クララ。ディエって子いませんか?確か冒険者になるってギルドに入った子がいたはずなんです。」
「ディエ?それを聞いてどうするの?」
「友達なんです。だから、知りたいです。」
「そうですか。ちょっと調べます。」
クララは、魔道具なんだろうけど、宝玉のようなものを出して、両手で玉を包み込むようにかざす。
「ディエは・・・死亡していますね。」
え?何?死亡?
「正確に言うと、依頼遂行中消息不明です。行商人の護衛の依頼を受けたようですが、行商人と共に行方不明となってます。」
何を言っている?行方不明だって?
絶句している僕を関係なしにクララは報告してくる。
「この場合は、ギルドとして未帰還なので、死亡扱いになります。カナメ?大丈夫ですか?」
茫然とする僕をクララは心配する。
「ダ・・・ダイジョウブ。」
ディエが死んだ。あいつが?
冒険者になると言っていたのに?
「聞かれたから、答えました。賞金稼ぎはいつだって死と隣り合わせの稼業です。死亡届なんて日常茶飯事です。分かっていましたよね?」
クララが何か言っている。
「カナメ!しっかりなさい!!気持ちを切り替えないと今度は貴方が死にますよ!!!」
クララは僕に叱責してくる。きつい言い方だけど、死んでほしくないから言っているのだろう。
理解は出来る。でも、そんなに簡単に切り替えられないよ。
「カナメ。今日は止めておきますか?」
「大丈夫・・・大丈夫・・・。行ってきます。」
無理やり話を切り上げて、ギルドから出る。
北門に向かってる途中も考える。
(「今日のカナメはめっちゃ寝坊助だな!」)
(「冒険者として生計を立ててやる!」)
(「俺は“守られる側”でいたくねーんだよ!!」)
ディエとの思い出が頭に浮かんでくる。
最後の別れ方が良くなかったから今度あったらちゃんと仲直りしようと思っていたのに。
フラフラしながら、北門の前まで来た。
「おい。坊主!カードを見せろ。それと大丈夫か?」
「大丈夫です。」
門番にギルドカードを見せて、北門を通る。
森に入っても、集中できない。
いや、辞めろ。クララも言っていた。ここは森の中。意識を切り替えろ。
顔を叩いて、ティラノバードを探す。
しばらく、探していると、今日も一匹いた。運が良いな。
「絶対重力!」
もはや、ルーティンとなった戦い方でティラノバードを仕留める。
「はぁ・・・ディエ・・・仲直りしたかったな。」
そう呟いた時、もう一匹ティラノバードが左から出てきた!
「クエェ!!」
そのまま、蹴りを繰り出してくる!
やばい!そう思ったが遅かった。避けられない。両手をクロスしてガードした!ガード越しにティラノバードの蹴りを腹部に貰った!
普通に吹き飛ばされながら転がる!やばい。吐きそう。意識が朦朧とする。
「うっ!!がは!がは!!ぁぁは!」
息が出来ない。でも、ティラノバードは容赦なしにもう一回蹴りを繰り出してくる!
左肩で受け止めようとしたが、結局また吹き飛ばされる。なんとかしないと。
「ううぅぅ。」
声を上げられない。あれ?左腕が動かない。まさか、肩外れた?それに左腕もこれ骨折してるかも。
やばいやばい!マジで死ぬ!なんとか逃げないと!
ティラノバードは追撃をしかけてくる!ショートソードは?あれ?無い!?
吹き飛ばされた拍子にどこか無くしたかも!
「ぐ!!絶対重力!」
重力加重して一旦ティラノバードを動けなくする。
その後、僕が駆け出すと同時に重力を減少させてやる。
「このぉ!」
ティラノバードを思いっきり蹴り飛ばす!
重力を軽くしてからの蹴りだから、思いっきり飛んで行ったけど、実質あんまりダメージは無いと思う。
「今のうちに逃げないと。でも、剣と倒したティラノバードは?」
幸いにも、剣は仕留めたティラノバードの傍に落ちていた。
「吐き気が出るほど痛い。でも、二つとも持ち帰らないと。」
剣を鞘にしまう。左腕が動かないから、ティラノバードを軽くして、右手で引きずって行く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なんとか、北門まで戻ってきた。
「小僧。朝からちょっとおかしいと思ったが、しくじったな。」
「・・・。」
「返事する気力も無いか。命があっただけマシだと思え。とりあえず、カードを見せろ。」
言われた通りカードを見せる。
「よし。通れ。」
そのまま、ギルドに向かう。途中、ティラノバードを引きずっていたからだろう。
怪我をしているのが丸わかりだ。
ギルドにつき、そのまま中に入るが、勿論周りから茶化されることになる。
「おい!チェリー君。ぬかったみたいだな!」
「女のケツでも見て、よそ見してたか?」
好き勝手言いやがって。でも、そんなことどうでもいい。まずは、賞金を貰わないと。
「クララ。お願いします。」
「ぬかったわね。これで分かった?戦いの場に雑念を持ち込むと本当に死ぬわよ。」
「お説教は後にしてください。」
「・・・身に染みて分かったみたいだからね。はい。180ルグ。それと、剣は回収するからね。」
「はい。それと。」
「皆までいわなくてもわかるわ。この街の南街あたりに比較的安めの治癒師がいるわ。紹介状を書いてあげる。ここに行って治癒してもらいなさい。」
「ありがとうございます。」
紹介状を貰いギルドから出て南に向かう。
「チェリー君!命があっただけ良かったな!がははは!」
・・・どうでもいい。早く治癒師に会わないと。
南側のほうに歩いていくが幸いにすぐ見つかった。
紹介状にエスティ様と書いてあったから、その文字を探したら、エスティ治癒院と看板に書いてある。
扉を開けて、中に入る。
「すみません。治癒していただけませんか?」
目の前には、眼鏡をかけていかにもインテリの医者っぽい人がいた。関係ない話だけど、この世界に転生してきてから、初めて眼鏡って見たかも。
「なんだ・・・?子供?どうして、子供が?」
「すみません。クララさんに紹介状を書いてもらってきました。」
「・・・ということは、賞金稼ぎか。こんな子供で賞金稼ぎをやるとはな。」
紹介状を受け取り、中身をサクッと見た。
「なるほど。カナメというのか。服を脱げるか?」
「はい。」
服をパンツ以外脱いでいく。恥ずかしさとか感じなかった。余りの激痛にそんな余裕が持てない。
「手酷くやられたな。これじゃ左腕が動かないだろ。肩もやられてる。腹部もな。」
「痛くて死にそうです。」
「痛いうちは死なん。覚えておけ。今から、治す。」
僕の身体に触れて、僕の身体が光る。痛いのは相変わらずだけど、左腕は動くようになった。
「これで、身体は動くようになっただろ。一応言っておくが、治癒魔法で治せるのは外傷までだからな。痛覚までは取れん。痛覚や病気、毒を直したいなら聖属性の魔法が必要になる。つまり、教会に行くしかない。」
そうだっけ?そうだったかも。そんなこと授業で習った気がしたな。
「はい。ありがとうございます。エスティさん。」
「"さん"はいらん。エスティでいい。まぁクララのお気に入りみたいだからな。まけてやろう。500ルグでいいぞ。」
「ご・・・500ルグ!?」
ギリ払えるけど、めっちゃ高い!
「嫌か?本来なら前払いだが、紹介状があったから、後払いにしてやって、しかもまけてやったんだ。文句あるのか?」
「い・・・いえ。なんでもありません。えーと。お洋服の中にお金が。」
「服を着るのぐらい待ってやる。」
そう言われて、服を着る。相変わらず痛覚は治らないけど、服は着れた。
「ありがとうございます。これ。500ルグです。」
「ふむ。一応言っておくが、本来なら1000ルグくらいが料金だ。それを半額で受けてやったんだ。」
1000ルグ。とんでもなく高額だ。今の僕ではとても払えない。
「見た感じ、まともな防具も持っていないだろう。丸腰の状態で依頼を受けるのがどれほど危険か。次はもっと慎重に立ち回るんだな。お疲れ。」
「はい。改めて、ありがとうございました。」
今の手元のお金を見る。690ルグあったのが、一気に190ルグまで減った。痛い出費だ。
しかも、まだ吐きそうになるほど、痛くて、今日は狩りに行く気がしない。
「今日はもう休もう。」
一旦、宿に戻ってくる。受付には誰もいなかったが、すぐ奥から出てきた。
「あれ?ずいぶん早いのね。どうしたの?」
「ちょっと休ませてほしい。」
「いいけど。」
「これ。40ルグ。後、同じ部屋に泊まらせてほしい。」
「うん。」
釈然としない顔をしているけど、部屋に案内はしてくれた。
そのまま横になって身体を休める。
横になって休んでいると次々と余計な事が浮かんでくる。
ディエが死んだ。お世辞にも良い別れ方じゃなかった。今度会ったら仲直りしようと思っていたのに。
もう、その機会はない。ギルドの人達は慣れているのだろう。でも、僕は慣れない。僕だけが、まだ引きずっている。
そんなこと思っていたら、眠くなってきた。起きたらリーネの所に行かないと・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一寝入りして、意識はしっかりしてるけど、相変わらず身体は痛い。
でも、リーネには会いに行かないと。部屋から出ると、受付の女の子がいた。
「ごめん。行ってきます。」
「ええ?ちょっと様子を見に来たんだけど。」
「ごめん。急ぐから。また、部屋はそのままにしていい。今夜泊まりに来る。」
「・・・良いけどさ。」
急いで、リーネに会いに行く。そう言えば、あの受付の子は名前なんていうんだろう。今度聞いてみようか。
タベルナヴィーヴァに到着して、中に入る。
「こんばんは。」
「カナメ!今日も来てくれたの!」
「今日だけじゃなくて、毎日会いに来るさ。どこに座ればいい?」
「えっとね。ここ!」
リーネが席に案内してくれる。
「カナメ。今日は何が食べたいの?」
「あんまりお腹空いてないんだ。軽くでいいんだ。」
「大丈夫?なんかちょっと変だよ?」
まずい。リーネに心配させてしまった。そうしたら、女将さんが来てくれた。
「軽くていいのなら、雑炊にしてやるよ。それでいいかい?」
「女将さん。お願いします。」
雑炊を作ってくれた。激痛が走る身体に、これはありがたい。
「カナメ。本当に大丈夫?やっぱり変だよ。いつものカナメじゃない。」
「うん。ちょっとしくじっちゃってね。でも、大丈夫だから。」
「・・・うん。」
なんとか空元気を出してるけど、ずっと一緒にいたリーネは誤魔化せられない。なんとか雑炊を食べる。
「うん。お腹一杯になったよ。」
「カナメ。」
うん。嘘ってわかるよね。ごめん。
「リーネ。本当に大丈夫だから。明日も来るよ。」
「うん。」
「女将さん。お会計は30ルグですか?」
「いいよ。10ルグで。」
ありがたい。正直、今はあんまりお金を使いたくない。
「ありがとうございます。これ10ルグです。」
今日はお礼を言ってばっかりだな。しくじった僕が悪いのだけど。
そのまま、店を出て最短で宿に泊まる。
もう何をする元気もない。ただただ、身体が痛いだけ。
今日は高い勉強料だった。
油断した。気持ちを切り替えてなかった。森は戦場なんだ。
油断したら死ぬ。それを3日目にして嫌というほど味わった。
所持金:140ルグ




