本音は心の奥底に
さあ!今回もなかなかに面白くできました!
これからはネタバレができません!!ぜひぜひお楽しみを!今回は少し長めかもしれません!
電車に乗って帰る途中に母さんから「買い物に寄りたいから待ってて」と言われた。
「わかった」と返信して電車を降りる。改札を出たすぐ前にある柱に寄りかかりながら母さんを待った。その時スマホに「ごめーん!今日遅くなりそうだから先帰ってて」とメッセージが来た。
ふぅと息を吐き、目線を上げると
死んだような顔をした一ノ瀬さんがいた。
とっさに、
「どうしたんですか?そんなため息なんかついて」
と言ってしまった。
一ノ瀬さんは顔を上げると「田道さん…こんばんは。今日はどうかしましたか?」とゆっくりと話す。
かなり重いトーンだ。相当、憂鬱なことがあったのだろう。
「少し歩きませんか?」
一ノ瀬さんは表情を一つ変えず、「ええ、いいですよ」
家の方向とは少し違う川沿いの方向に歩く。
こういう時には聞いてしまうのが一番早いだろう。たとえ何を言われても。
「今日はどうかしましたか?」
一ノ瀬さんは顔を背けて「とくに何も」
おそらく本人もわかっているだろう。嘘が丸見えなことを。
「一ノ瀬さん、無理しないで人に打ち明けてもいいと思います」
その瞬間、一ノ瀬さんの目の色が変わった。アニメやラノベなどでは泣きだすシーンであるが現実ではそうはならない。
「私のことをわかったみたいな口調で言わないでくださいっ!たかが家が隣なだけでしょう!あなたは私がどんな思いで学校に行っているかも知らないんでしょう!?なんで!なんで!そんな風に言えるんですかっ!?私のことを何も知らないのに…なんで!」
こうなると思っていた。自分の秘密を抱えておくということは心にかなりのダメージを与える。
でも…
「もし違くとも普段の生活でそんなに暗い顔しないでしょう」
もう一度、目がギッとこっちを睨みつける。
「だからなんでよ!なんでそんな味方みたいな口調をするわけ!?なんで!私の!何も知らないのに!?そんな偉そうな口調でしゃべんないでよ!」
夕方の川沿いに彼女の声が響く。
切なくとも何ともない心からの俺に対する感情をぶつけている。
その刹那、俺の中で何かが弾けた。
過去にこんな気持ちを持ったことがある。
だからこそ言いたい。言わなくてはいけない。
「わかんねえよ!俺だって!」
俺も大声を張り上げる。これは俺も本音を言うべきだろう。
「だれがあんたの感情とか、日常生活なんかみただけでわかる!?そんなことも考えないで言ってるのか!?言葉にしねえとわかんねえって小学校で教わらなかったのかよ!?」
これにはさすがに応えたのか一ノ瀬さんは一瞬キョトンとした顔をして、
「で、でも!」
「でも?なんだ!?また言い訳するつもりなのか!?なんでそうやって自分だけに抱え込もうとするんだよ!」
一ノ瀬さんは目に涙を浮かべながら
「なんで!?そんなこと言えるんですか!ただあなたは家が隣なだけでしょう!?」
間髪入れず
「隣の家だろうがどうだろうがそんなに死にたそうな顔してるやつをほっとけるわけねえだろっ!こんな事言わせてるのはお前だろうがっ!」
おそらく女子相手にここまで罵倒したのは始めてだろう。これは心から本当のことを言っている。
「なんで人に頼らねえんだよ!自分で抱え込もうとするんだよ!」
この一言を言った途端、一気に一ノ瀬さんは地面に崩れ、泣き出してしまった。
小雨も降ってきた。
雨に濡れるのも気にせず
「なんで泣いてるんだよ」
「だ…だって!…だってぇ……うっ、うぁはぁぁぁん!
ゔゔっ…」
一ノ瀬さんのすすり声が川沿いにひびく。雨は次第に強くなり始める。その場に腰を下ろし
「濡れますよ。風邪引くのでそこのベンチで雨宿りでもしましょう」
綾瀬川を望むベンチで俺と一ノ瀬さんは一緒に座った。確かに、一ノ瀬さんは俺の隣の家ってだけだ。だが、さっきの彼女の顔はまるで……
「死にたい」と心からはっきりと出ていた。
死にたいと思う人の表情は過去に見たことがある。
自慢でもなんでもない経験談だ。
「一ノ瀬さん、なんであんな顔してたんですか。ちゃんと言ってください。人に頼ってください。俺がここにいますから」
ふっと顔を上げた彼女の目は赤くなっている。だが、近くで見るとまだやつれているように見える。
「………私は中学1年生の頃…友達がたくさんいました。その頃は亀有の方に住んでいて、基本的に修栄の近くでした。
一緒に遊びに行ったり、何か食べたりしてすごく楽しかったです。その子たちとも中2になっても一緒に遊ぼうねって約束したのに2年生になって藤山 沙耶香って子が転校してきて…そこから全部狂っていきました。
一緒に遊んでた友達は顔が可愛い沙耶香の友達になれば自分も親友にしてもらえるって思ったみたいでみんな私のところを離れていきました。でも、入部した天文部では先輩とか…友達とかが一緒にいてくれて…そこだけは私の居場所だってなってたんです」
それは俺が想定していた理由だった。
女子というものは友情に敏感である。喧嘩をすればもう二度と会いたくないと冷たい反応になることもあるし可愛い子が転校なんてしてきたら男子の注目の的にだってなる。その輪のなかに自分も入りたくなってその子の親友になろうとするのだ。
「だけど…中2の三学期から急に私のことを仲良しの輪のなかに入れてきて、『明日青砥の改札に集合ね』ってメッセージが来て…私もみんなと一緒に遊べたり話せたりするんだと思っていましたが。
全然そうじゃ…なかった。改札に行ってどうしたのって聞いたよ?
そしたら『あんたは私より地位が低いから今日からかばん持ちね』って言ってきて…
その沙耶香たちの友達たちの中には私の「親友だった子」もいて…そのときからなんで?って…怖くなって…学校が全然楽しくなくなって…」
と、再び口にした一ノ瀬さんの目には再び涙が浮かび始める。雨はまだ強い。
「ぐっ…ずっ…ずっと一緒だって言ったのに…みんな沙耶香について行っちゃって…私…一人になっちゃって…それからずっと沙耶香の言いなりにされて…きたの…。
うっ…で、でも…だから!田道くんを見たときにちょっと…だけ…期待してたの…この人なら私の友達になってくれるって…だから…できるだけ…私のことは言わないようにしようと思って…だっ…だから…」
「言わなくていいよ。謝る必要はないです」
一ノ瀬さんは目を少し広げ
「なんで…私が謝ろうとしてるのわかったの…?」
一ノ瀬さんの手を握ってアニメやラノベなどで必ず主人公が言うセリフを言った。簡単でよく知られている。あの言葉を…
「つらかったんですね」
その瞬間一気に一ノ瀬さんは泣き崩れた。
俺のブレザーをつかみながら頭を押し当てて
子どものように感情的に、だが泣く理由は複雑なものであった。
何度も、何度も泣いた。
俺はひたすらゆっくりと彼女の背中をさすっていた。
その背中は小さく、弱々しいものであった。大人のような一面があってもこの子はただの中学3年生だ。俺は彼女の頭をゆっくりと撫でた。
外を見ながら俺は言った。「まだ、雨降ってますね」
「……がいい」
「すみません、もう一度お願いします」
「まだ、このままがいいです」
調子に乗って書いた作品九号です。ついにあと一話で十話達成だ!みんな感想くださぁい




