生暖かい空気
ちなみにふえっていうのは快が飼っている猫です。体重は6.52キロという圧巻の数値!
俺はその場で立ち止まってしまった。なんたって昨日まで俺が可愛いだの会ってみたいだの心のなかで思っていた彼女がすぐそこにいるのだから。数分前まではそんなことみじんも思っていなかったろう。
俺は朝起きてまず風呂に入る。朝風呂習慣のほうがいいと母さんに言われているからだ。まあ実際、俺の髪の毛が癖っ毛でも何でもないのは事実であり風呂に入れば大抵はいつもの髪型になおる。
風呂から上がって制服に着替える。この風呂から上がって制服を来なくて良くなる休日がとても待ち遠しいのだ。まだ昨日から中学3年が始まったばかりなのだが…
朝食と夕食はいつも自分で作る。朝は大体、卵焼きとみそ汁、まれにサラダ。ご飯をレンチンしたあとそこに納豆をかけて食べる。完全ではないがほとんどこの食事で風邪は引かない。
念入りに歯磨きしたあとカバンに荷物を詰めて外に出る。
ふとドアノブを握ったときに思い出したが昨日の一ノ瀬さん?彼女は中学生なのだろうか、俺のような見た目でも高校生の人もいる。
あまりその辺は考えないようにしておこう。うん、そうだな。
「行ってきます」
そう言ってまだ生暖かい春の空気に触れる。鍵をしていつもと同じように駅に行こうとしたところに彼女はいた。
「え…と、おはようございます。この辺はなんか温かいですよね」
まずい。絶対に初めてのあいさつで見せてはいけない行動をとってしまった。初対面の人に向かって適当に思いついたようなことを話すのはかなり失敗してしまった。
俺は恐る恐る彼女の目を見る。キョトンとした顔をしている。やはりこのあいさつで明らかに引かれたな。
「あ、おはようございます。そう、なんですか?私最近引っ越してきたばかりでこの辺のことよく分からなくて…」
ダメだ。やらかしてしまった。最近引っ越してきたばかりの人に「この辺あったかいですね〜」だ?おはようございますだけにしておけばよかった。
俺はしばらく自分を責め、ようやく次の言葉を言えた。
「えーと、一ノ瀬さん?でしたか。隣の家の田道 快です」
よし、これだ。これしか俺に言えることがない。後はシカトされる未来を避けられれば初めてのあいさつとしてはかなりいいだろう。
「はじめまして、田道さん。一ノ瀬 夏海です。それともしかして田道さんって共架学園の方ですか?」
まさかのひと言に一瞬驚いたが
「ええ、まあ。そういう一ノ瀬さんはもしかして修栄中学ですか?」
と返せた。
「はい。それと歩きながら話しませんか?多分電車に乗る駅同じだし」
あれ?なんか展開が進んでるぞ?俺っていつの間にトーク力つけたんだ?あ、違う。これは一ノ瀬さんが話すことがうまいだけだ。
いや、またここからが難所だぞ。考えろ、もし仮に話が弾まずにそのまま黙って「あ、私こっちなんで」「あ…はい」なんて終わり方になったら、完全に俺のイメージが崩れるぞ。
そんなことを考えていると一ノ瀬さんが
「すみません。ひとつ気になっていたのですが…」
俺は疑問に思いながら
「はい?どうしました?」と返す。
「昨日の夜にギターを弾いていらしましたよね。何か音楽などに力を入れていらっしゃるのですか?」
俺はああ、と
「あのギターですか?昔助けてもらった人にもらったんですよもう自分には使えないってだからもらったんです」
ん?思ったより話が弾んでるぞ。
へえ、と頷くように一ノ瀬さんは
「そうなんですか。その助けていただいた人とは…」
その瞬間に俺のスマホに着信が来た。
「あ、すみません。お先に」
「電話みたいなのでお先にどうぞ」
小さく頭を下げてスマホを見る。着信主はまさかの千秋だ。通話許可のボタンを押し耳にスマホを押し当てる。
「なんだよ、千秋こんな朝に」
千秋はなぜかいつものテンションの数倍低く
「勇斗が変な上級生に絡まれてる。本当にごめん、急いで来てほしい」
なんていい出した。絡まれてる?マジか?マジだったらかなりまずいぞ。くそっ!せっかく話が弾んでたのに!
「すみません一ノ瀬さん、友人から呼び出しきたので急いで行ってきます。本当にすみません!またあったら話を伺います!」
そう言って駅の方に走りだした。
調子に乗って書いた作品四号です。
書いてるやつが完結したらちょっとしたスピンオフも出そうかなとは思ってます。




