カレン 『守るためのちから』
その武器は大きかった。
いや、武器と呼べるものではなかった。
それは、あまりに大きく、あまりに太かった。
◇
カレンは華奢な子どもだった。他の子どもたちよりも。
彼女は孤児院で育った。いつも一人だった。
院長の妻は、いつも彼女を気にかけてくれた。
「ごはんはちゃんと食べれた?」
「なにか不自由ないかしら?」
……まるで母親のようだった。
彼女は生まれつき力が強かった。
怖かった……。その力で人を傷つけることが。
なんど「またやってしまった」と思ったことだろう。
でも、そのたび、「あなたの力は人を守るためにある。その力を人のために使うのよ」と院長の妻は言ってくれた。
やがて、大きくなると、彼女は孤児院で子どもたちを世話するようになった。
◇
その日は、いつもと変わらない昼だった。
しかし突然、空が黒く染まり、孤児院は轟音とともに崩れた。
子どもたちの悲鳴……。
……院長の妻が崩れ落ちた柱の下になった。
カレンは柱を押しのける。
息があるのか、分からなかった。
「私を育ててくれた……。お母さん……どうして?」
子どもたちも泣いていた……。
……ふいに、崩れた扉から、一匹の異形が現れた。
禍々しい姿。言い伝えにある、闇のような存在。
(怖い……。逃げる……? )
頭の中で警鐘が鳴る。
(でも、子どもたちがいる)
「守らないと..」
そう呟いた。
その後のことは……よく覚えてはいない。
足元にあった、何かを掴んだような気がする……。
◇
気が付いた時……カレンは孤児院の外に飛び出していた。
孤児院の外で、狩人のシン、薬師の娘ミカに遭った。
シンは二匹の異形と対峙していた。
一匹の異形を倒したとき、もう一匹がミカに襲い掛かった。
――カレンは飛び込んだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
ミカを襲う異形の頭部はつぶれ落ちた.........。
「ゼェ……!ゼェ……!」
息が苦しかった。ひどくだるく、冷や汗もとまらない。頭がぼんやりした。
……その時。
傷だらけで立っているシンの背後で、異形が立ち上がっていた。
――カレンは異形に向かって走る!
武器を腰元に構えて。
(もう失うのは嫌だ)
「嫌ぁぁぁぁぁぁ」
途中、カレンの肩にぶつかったシンが、もんどりうって弾き飛ばされた。
――その武器は大きかった。
いや、武器と呼べるものではなかった。
あまりに大きく、あまりに太かった。
それは、倒壊した家屋の梁――(はり)だった。
振り抜けるのか?
しかし、ためらわずカレンは振り抜いた。
もう失わないために。
守るために。
◇
異形の姿が消えた村に、静けさが戻る。
シンが目を覚ました。
この村を襲った災いの正体を知りたい。
もう子どもたちに危険が及ばないように。
母の為にも。
強く、カレンは心に決めた。
了
ルミナ・パルス本編 一章二話に続く。




