↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/27

第一話 違和感

登場人物

狩人のシン、薬師のミカ、華奢だが力強いカレン。

解放奴隷の拳闘士ユウ。

盗賊団で育ったフミ。


挿絵(By みてみん)





次の朝。

商隊は手早く出発の準備を済ませて、宿を出た。


広場では祭りの旗が朝の風に揺れ、人々が昨晩の宴の後始末をしている。


「眠いな」


欠伸するフミに、ミカが声をかけた。


「新しい服、似合っているね」


(新しい服を買ったのも初めてだな)


フミは服の袖口をつまんだ。

まだ布の感触に慣れない。


そのとき、司祭に挨拶を終えて、商隊の主人ニコラオスが教会から出てきた。


「昨晩、教会の遺物が無くなった。それに、護衛が斃されていたらしい」


低い声で、隊長ナルセスに伝えた。


「また遺物が……」


カレンはシンを見る。


「ああ。何かが、狙っている」


シンは短く答えた。


◇


荷馬車は町を出た。


ガタ、ゴトと車輪の音を立てて、ゆっくり進んでゆく。

麦畑が少なくなり、家畜の鳴き声が遠くに聞こえるようになってきた。


「今日は野営をして、明日は宿のある村に泊まろう」


ニコラオスはにこやかに言った。



日が暮れる前に、商隊は野営地を決めた。

街道から少し外れた草地。

その片側には小川、反対側には森林が広がっていた。



シンとフミは、周囲の探索に出た。

森の中は湿った土の臭いがする。


シンは跪いた。

兎の糞が近くに落ちていた。

顔を上げると、近くにある茂みの若草が食べられている。


「近くにいるぞ」


シンの小声にフミが頷く。

小さな足跡が茂みへと続いていた。


「あの茂みに小石を投げろ」


フミが小石を投げると――


ガサッ。


茶色い影が飛び出した瞬間、シンの弓の弦が鳴った。



◇



パチパチと音を立てる焚火の上で、大鍋がぐつぐつと煮込まれている。


塩漬け肉、大麦、玉ねぎ。

ニンニクやネギに似た野草、ハーブ。

それと、兎の骨付き肉。


湯気の立つスープから、兎の出汁と、ネギやニンニクの香りが広がった。


「兎の味も出ているのかな、美味いのう」


ニコラオスがスープを口に運んだ。


「フミが石でうまく兎を追い出してくれたおかげです」


シンが椀のスープを飲み干した。


「おお、フミ君、さすがじゃのう」


ニコラオスが褒める。


「べつに、石を投げただけだし……」


フミは照れたように、骨付きの兎肉を頬張った。



食後。

野営地から少し離れた場所で、稽古が始まった。

先端に布を何重にも巻きつけた棒をシンが構え、フミに突きを放っていく。


「棒だけを見るな。相手全体を見ろ」


力の加減はするものの、鋭い突きは五発に四発はフミに当たる。


「まだまだぁ! もっと来いよ!」


少し離れて見ていたユウは、どこか懐かしさを感じていた。


(俺も、師匠には棒でどつかれていたな。

布はあまり巻かれていなかったが……)


◇


翌日――

日が真上に昇る前に、商隊は街道沿いの宿場村に着いた。


村の中心には教会と宿がある。

周囲には牧草地や果樹園が広がっていた。


村に入ってから、シンは違和感を覚えた。

鳥の鳴き声がなくなり、村を静寂が覆っている。


胸元のペンダントが、心なしか熱を帯びていた。

そっと触れると、指先にかすかな震えが伝わった。


(この村にも教会がある)


その時、シンの背後に近づく人影があった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。