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3章 第2話 少年の決断


挿絵(By みてみん)



狩人のシン、薬師のミカ、華奢だが力強いカレン。

三人は王都に向かう。

村を襲った災いの正体を明らかにするために。


解放奴隷の拳闘士ユウ。

盗賊団で育ったフミ。


それぞれの運命が交わり、物語は新たに動き始める。


挿絵(By みてみん)



東の空が白み始めた頃、商隊の朝は早くも始まっていた。


昨夜の煮込みの残りで手短に朝食を済ませ、

朝霧が立ち込める王都への街道を、商隊は進み始めた。


都市を離れるにつれて畑は徐々に減っていき、

街道沿いの左手には森、右手には高い丘が続いている。


フミは商隊と距離をおいて、森の中を歩いていた。


(くそっ......俺は何をしている?


……いや、違う。俺は同じ方向に向かっているだけだ。


……いや、荷馬車から何かくすねてやるためか?)



ひとりで考えていると.......後ろで微かに、馬の蹄の音がした。


馬に乗った男だった。


ローブを纏い、深く被ったフードの影に顔が隠れている。


その後方には騎馬の群れが見えた。


男は後ろを振り返り、腕を挙げて何か合図を送っているようだった。


(.......何かある。シンたちに知らせるか?

いや、俺まで危ぶなくなる。


.......だけど)


フミは音も無く、商隊に向かって走り始めた。



後ろを振り返ると、三騎の影が走り出していた。


一瞬、逡巡する。......。

それから——指笛を吹いた。



ピィッーー!


商隊の後衛は、音に反応して後ろを見た。


森から音がしたかと思うと、街道の遠方から騎馬が駆けてくるのが見えた。


「後方警戒!」


叫び声を上げ、後衛の二人が盾と槍を構える。


「荷馬車の距離を詰めろ! ニコラオスさん達は荷馬車に避難してください!」

前衛にいる隊長が叫ぶ。



後方から来た騎射兵は、短弓を構えて弓を放った。


矢が三本、後衛の盾の手前の地面に刺さる。 

シンとソフィアが即座に応射し、牽制した。



「騎射兵が三騎......隊列を崩すな!」

隊長が叫んだ、そのとき——



丘の裏側を抜けて、前から新たな騎馬が現れた!


「前方に騎馬!」


前を進んでいた騎兵マルコスが叫ぶ。



「前衛は賊の進路を塞げ! 弓を掃射しろ!」

前衛の指示が飛ぶ。


シンとソフィアが矢を放った。

一本が前へ出た賊の腕に突き立った。



正面の盾列を見た賊は、左右へ割れて、その脇を抜けようとする。


(.......盾の列を迂回する)



再び矢をつがえたシンの意識が、先頭の賊の意識と同調する。

馬首が左へ向いた瞬間——


ビュン!


シンの放った矢が、盾の左脇を抜けてきた賊の肩に食い込んだ。


続けてソフィアの矢が、盾列の右側から回り込もうとした馬の鼻先をかすめる。

馬がいななき、騎手が慌てて手綱を引いた。



商隊の後方では——


ビュン!


森から飛んできた何かが、騎馬の賊を掠めた。


賊の意識が森に向い、その瞬間——


ガンッ!


弩兵バシリオスが放った矢が一人の賊の腕を貫いた。



もう一人の弩兵、ステファノスの矢も賊の残りの賊を掠めた。


森からの飛翔物と、弩兵二人。


後方の賊は商隊に近寄れない。





前方では、混乱した賊に、マルコスが騎馬で追撃を仕掛けた。



「ひっ、退け!」

前方の賊の一人——棟梁らしい男が叫んだ。


(後方のかく乱に、混乱した相手への前方からの突撃。

どちらの奇襲もつぶされた——)


これ以上、闘いを続けても被害が増すばかりだった。





賊の姿が見えなくなってから——


「構え、止め!」


隊長の号令で臨戦態勢が解かれた。



被害の確認が行われるなか、


シンとミカ、カレンは、まだ木の上にいるフミに歩み寄った。


「フミ、助かった」

シンが静かに語りかけた。


「いや......おれは、たまたま、この道を歩いていただけだ」


「あんた、いつもそればっかりね。でも......ありがとう」

ミカがにっこりして言った。


「.......ガキはだまってろよ」

フミは少し照れくさそうに目を逸らした。


「あんたのほうがガキじゃない!」


シンとカレンが目を合わせた、そのとき——



「知り合いかね」

商隊の主人、ニコラオスがそこに立っていた。


「ええ......」

シンは答える。


「少年。君のおかげで、隊の皆も無傷で済んだ。

ありがとう。

どうかね、何か食べながら話さんかね」


ニコラウスはにこやかに、木の上のフミに語りかけた。



挿絵(By みてみん)



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