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3章 第1話 王都に向かう

挿絵(By みてみん)




狩人のシン、薬師のミカ、華奢だが力強いカレン。

三人は王都に向かう。

村を襲った災いの正体を明らかにするために。


解放奴隷の拳闘士ユウ。

盗賊団で育ったフミ。


それぞれの運命が交わり、物語は新たに動き始める。



挿絵(By みてみん)



シンたちと別れた後----

フミは城塞都市に入り、古物商《灰色狐》で盗品を売り払っていた。


「昨日、うちに旅人たちが来てな。

怪鳥に襲われた商隊の娘を、彼らが助けたようだ。

……明日、その商隊と王都に向けて出発するらしい」


主人のコンラートは言った。


「ふーん」

買い取り賃の銀貨を指で宙に弾き、フミは店を出た。



翌朝---。

商隊が宿を出発するのを、フミは建物の陰から見ていた。

乾いた蹄の音と、木製の車輪が古びた石畳に響く。


(……なんで俺はこんな真似をしているんだ?)

シンたちが王都に行こうと、俺には関係ない。


それでも、荷馬車が門を抜け、道を曲がって消えると、気になって後を追っていた。


(……行きたい方向と同じ道なだけだ)


そう自分に言い聞かせながら、 距離をおいて商隊の後ろを歩いていった。


 



城塞都市を出て数時間。

商隊の荷馬車は、ガタガタとゆっくり進んでは、時々止まり馬を休ませた。


馬の蹄の音、護衛隊士の歩みに合わせて「ガシャッ」と金属音が鳴る。



シンは荷馬車の側面を歩いていた。

護衛隊士たちと、荷馬車を囲むようにして進む。


街道には麦畑が広がり、見晴らしがいい。

風に揺れる草木、遠くから羊の鳴き声が聞こえる。


カレンに目を向けた。

商隊から借りた丸盾を左手に持ち、右手で樫の棒を握っている。


「カレン、重くないの」

近くを歩くミカが盾を指す。


「軽いものよ」

カレンは優しく微笑んでいた。




-- 今朝。

拳闘士のユウを紹介された。

年は二十歳前。影のある表情をしていて、昨日コロセウムで見た印象とは少し違っていた。

客人として王都まで同行するはずだったが、本人の希望で護衛に回ったという。


体を動かしていないと落ち着かないらしい。



シンは後方を振り返った。

「どうしたの?」

カレンが聞いた。

「いや.......。後ろから誰か着けてきている気配があってな」

カレンが振り返って見ると、そこには誰もいなかった。





ユウは歩きながら……考えていた。


(王都で闘士を募っている……。

他国からの圧力に対抗する兵士が必要なのか?)


王都コンスタリアの「アルケディア帝国」は、小国から領土を拡大した「サルキア帝国」の脅威にさらされてきた。


ユウは王都で生まれて、母親の手一つで育てられた。

しかし、幼少期に攫われ----奴隷市場で拳闘士養成所に買い取られたのだ。


(運よく生きてきたが……。

もしまた、母に会ったとして、何を話せばいいのだろう)


思いは反芻した。

歩くことで、いくぶん気が晴れるようだった。





日が傾き始めたころ、 商隊は街道を外れた。


「今日はここで野営にしよう」

隊長ナルセスが言った。


低い丘の陰に、石壁が見える。

壁際には古い炉跡が残っていた。


少し下ったところには、細い小川が流れていた。

汲んできた水を馬に飲ませ、翌日の飲み水を煮沸して蓄えることができる。



夕飯の準備が始まった。


吊るした大鍋には、水に浸しておいた豆が煮えていた。

塩漬け豚肉、刻んだ玉ねぎ、乾燥させたタイムを入れて煮込む。


夕飯は「塩漬け豚肉と豆、玉ねぎの煮込み」「麦パン」「硬いチーズ」だった。



豆は少し崩れている。

豚肉の旨味と塩味の後に、玉ねぎの甘みが広がり、後にはタイムの香りがふっと残る。

煮込みに硬い麦パンを浸して食べるとよく合った。



商隊の主人ニコラオスの隣に娘のアンナが、その隣にはミカが座っていた。


「ミカちゃん、おいしい?」

アンナが覗き込むように聞いた。


「うん……!よく煮込まれていておいしいよ」

ミカはにこやかな笑顔を見せた。


「ミカちゃん、たくさん食べるんだぞ。旅は腹が減るからな」

ニコラオスもご満悦だ。


「ニコラウスさん、娘さんが増えたようですな!」

隊長ナルセスが声を上げると、周囲から笑い声が上がった。


「ほっほっほ、そう言われると悪い気はせんな」

ニコラオスが豪快に笑う。


シンもカレンも、自然と頬を緩めた。





野営地から離れた丘の上。


フミは枯草の上で頬ずえをついて-----

ぼんやりと、商隊の焚火を眺めていた。


澄んだ夜空の月が、静かに丘を照らしていた。



挿絵(By みてみん)

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