第96話:極限の塩分結界と漆黒の呪い汁(北陸新幹線・富山ブラック)
鳥取で猛牛の重厚な突進(牛骨ラーメン)を真正面から受け止めた私の胃袋(HPメーター)は、すでに容量の80%を超える危険水域に達していた。
「フスッ……。息をするたびに、胃の中から強烈な獣のマナ(脂)が込み上げてくる。連戦のダメージが確実に蓄積されている証拠だ」
だが、私にはまだ行かねばならない場所があった。
商人ギルド『JR西日本』の東の最果ての一つ、北陸新幹線の青き魔導列車が貫く雪と労働の国……『富山』である。
「この地には、肉体の限界を超えて働く労働者たちのために生み出されたという、文字通りの『致死トラップ(真っ黒なスープ)』が存在するというのだ!」
私は富山駅に降り立ち、その真っ黒な魔導液を生み出したという発祥のギルド『西町大喜』へと足を踏み入れた。
「オーダーだ! 全身の水分を根こそぎ奪い去るという、あの真っ黒な呪いの液体……『富山ブラック(中華そば)』を所望する!」
実はこのギルド、本来は『ご飯』という強力な白の防壁(炭水化物バフ)を持ち込むことが公式に推奨されているという異端の戦場なのだ。
だが、すでに胃袋が限界に近い私は、防御壁(白飯)なしという極めて無謀な丸腰の状態で、その漆黒の魔獣と相対することになってしまった。
「きたぞ……。これが『富山ブラック』か!」
私の前に置かれたどんぶりの中身を見て、私は思わず息を呑んだ。
「……ッ!! なんだこの色は! 本物の『闇』ではないか!」
スープは底が全く見えないほどの完全な漆黒。
そしてその闇の海の上には、あきらかに致死量を超えるであろう『黒魔法の粉(大量の粗挽き黒コショウ)』が、まるで大地を覆う火山灰のように一面に振りかけられていたのだ。
「フハハハッ! 狂っている! これは旨味を楽しむためのスープではない、労働で失われた塩分を『強制カンスト』まで叩き込むための暴力的な闘薬だ!」
私は勇者としての覚悟を決め、その漆黒の呪い汁を魔術スティック(レンゲ)ですくい口へと運んだ。
「いざ、実食ッ!」
「……ギャアァァァァァァッッ!!!!」
舌に触れた瞬間、私の中で『塩!』という一文字が雷のごとく脳内を突き抜けた。
「しょっぱいッッ!! なんだこれは! ただの醤油ではない、何重にも圧縮された塩の結界魔法が、私の口内の水分を一瞬にして干上がらせていく!」
しかも、その後に追いかけてくる大量のブラックペッパーの辛味が、傷ついた舌(装甲)に塩を塗り込むように痛烈な追い討ちをかけてくるのだ。
「これをご飯(最強の盾)なしで食えというのか! 富山の冒険者たちは、どれだけ異常な塩分耐性を持っているというのだ!」
スープを飲むことを諦めた私は、すぐさま中太の力強い小麦の糸(麺)と、黒く染まりきった巨大な肉の塊へと狙いを定めた。
「むっ……! 麺も、肉も、すでにこの漆黒の呪い(塩分)に深々と侵食されてしまっているぞ!」
麺を啜れば、極太の麺に染み込んだ醤油が再び舌を刺す!
肉を噛めば、これまた容赦なく濃い塩分の肉汁が溢れ出す!
「逃げ場がないッ! この丼の中に、箸休めとなる『癒やしのマナ(甘みや薄味)』など一片たりとも存在しないのだ! すべてが塩! 圧倒的な塩の十字砲火だッ!」
私は滝のような汗(デトックス魔法の発動)を流しながら、もはや完全に麻痺した味覚と、爆発寸前の胃袋を抱え、ただ無心で箸を動かし続けた。
「……ぎ、ぎぶあっ…………いや、完食だぁぁッ!」
最後の一本の太麺を飲み込んだ瞬間、私はカウンターに突っ伏し、荒い息を吐きながら完全なるフラグダウン(戦闘終了)を迎えた。
「恐るべき……富山ブラック……。私の体は今、巨大な塩漬けの肉と同じ状態になっているだろう……」
胃袋のキャパシティはついに「95%」。HP上限を完全に無視した異常なステータス異常(限界突破)が私を苦しめている。
「いかん……次で最後だ。ここで倒れるわけにはいかない!」
口の中をヒリヒリと燃やしながら、私は富山の強烈な塩分結界から命からがら逃げ出し、今回の長き魔導麺討伐の最終目的地……『大阪』の巨大な金竜を目指して、最後の力を振り絞るのであった。




