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第97話:欲望の街の金龍と、勇者の完全敗北(大阪・金龍ラーメン)

 富山の北陸新幹線エリアで致死量の塩分(富山ブラック)を摂取し、HPメーターが限界ギリギリで点滅を繰り返している私。

 だが、私の中の『食欲魔神』はまだ討伐をやめようとはしなかった。

「フスッ……。商人ギルド『JR西日本』の管轄エリアにおいて、真のカロリーダンジョン(食い倒れの街)を制覇せずして、このラーメン紀行を終えるわけにはいかない」

 私が舞い戻ってきたのは、再びの巨大迷宮都市・大阪。

 大阪環状線から地下魔導路線(地下鉄)を乗り継ぎ、欲望とネオンが渦巻く南の深層区画……『ミナミ(道頓堀・難波エリア)』へと到達した。

「これより、究極の炭水化物コンボを誇るというミナミの魔獣ギルドへと突入する!」


「……見つけたぞ。あそこだ!」

 雑多な街並みの中で、ひと際異彩を放つ真っ赤な神殿(店舗)。

 そしてその壁を突き破るようにして、巨大な『金色の竜(立体看板)』が宙を舞い、周囲の冒険者たちを睨みつけている。

「フハハハッ! なんという暴力的なビジュアル(魔力放射)だ! これがミナミの夜を支配する伝説の魔獣……『金龍きんりゅうラーメン』か!」

 このギルドは開けっ放しのオープン戦場(立ち食い、あるいは畳の座敷)となっており、深夜でも労働を終えた冒険者や酔っ払いたちが次々と吸い込まれ、魔導スープをすすり上げている。

 私は券売機(古代の契約石版)に最後のなけなしのゴールドを叩き込んだ。


 畳の敷かれた小上がり(休憩ポイント)に陣取った私の前に、熱気を放つそのラーメンが召喚された。

「ほう……ライトな色合いの豚骨スープ。和歌山のような獣の暴力性は抑えられており、非常に優しく、するすると胃に収まりそうな回復薬だ」

 だが、この金龍ラーメンの真の恐ろしさは、スープそのものにあるわけではない。

「……むっ? あちらに設置されている『結界陣セルフサービスコーナー』はなんだ?」

 そこには、巨大な炊飯器(白飯錬成釜)と、真紅に染まった謎の壺が幾つも並べられていた。

『ご飯、キムチ、ニラ、ニンニク……すべて無料(無限増殖システム)』

「……バ、バカなッ!!!」


「ラーメンという強力な魔導麺を頼むだけで、白き大地の防壁(ご飯)と、炎属性の強力な追加バフ(キムチ・ニラ・ニンニク)が『無限に』付与されるというのか!」

 すでに限界だったはずの私の胃袋が、この「無料タダ」という商人ギルド最強の魔法言葉によって、強制的に再び口を開いてしまった。

 私はどんぶり一杯に白飯を盛り、その上に真っ赤なキムチとニラを山のように積み上げた。

「フハハハッ! これぞ究極の陣形! ニンニクとニラ(強烈な悪臭を放つスタミナ極大バフ)をスープに直接放り込み、魔力濃度を一気に引き上げるッ!」

 私はラーメンをすすり、その直後にキムチの乗った白飯をかっ喰らうという、炭水化物×炭水化物の無限コンボ(永久機関)を発動させた。


「ズルルルッ!! ガツガツガツッ!!」

 豚骨スープの脂身、強烈なニンニクの刺激、キムチの辛味(火属性魔法)。

 それらの暴力的で濃いマナを、真っ白なご飯(聖なる防壁)が見事に中和し、そして圧倒的な「重さ」となって私の胃の奥底へと落下していく。

「美味い……! 美しい装飾も、上品な香りもない! 深夜のミナミで喰らうこの『欲望を煮詰めたようなジャンク・コンボ』こそが、勇者の闘争本能を最も激しく刺激するのだ!」

 京都のこってり、和歌山の豚骨醤油、尾道の背脂、鳥取の牛骨、富山の塩分。

 これまでの全ダメージが蓄積された腹(HPゲージ)に、止めとばかりに大阪の炭水化物が叩き込まれていく。


 最後のご飯粒と、ニンニクが溶け込んだ最後の一滴のスープを飲み干した、その瞬間。

『……パァァァンッ!!』

 私の中で、何かが完全に弾け飛ぶ(容量限界を超えて爆発する)音がした。

「……あ、あぐっ……。だ、ダメだ……もう、一ミリも動けん……ッ」

 強大な魔物との戦闘で力尽きたのではない。

 私は、圧倒的な『炭水化物と塩分と脂質の暴力(B級グルメ)』を過剰摂取しすぎたことで、自身のHP上限が文字通りバーストし、完全なる【行動不能(超絶満腹)】の状態異常に陥ってしまったのだ。

「フスッ……見事だ、商人ギルド『JR西日本』の管轄エリアよ……。まさか勇者である私が、これほどのカロリーの暴力に『幸せな敗北』を喫することになろうとはな……」

 ミナミの夜風に吹かれながら。真上の看板の金竜に見下ろされながら。

 私は畳の上に大の字になって倒れ込み、満ち足りた極上の笑みを浮かべて、静かに意識を手放す(爆睡する)のであった。


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