表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
95/125

第95話:猛牛の骨髄から抽出された黄金のエリクサー(山陰本線・牛骨ラーメン)

 瀬戸内海から飛来する背脂の隕石群(尾道ラーメン)を見事に食い尽くした私は、休む間もなく中国山地を越え、日本海側の大動脈……山陰本線へと足を踏み入れていた。

「フスッ……。荒れ狂う日本海の風と、雄大な大山だいせんがそびえる国、『鳥取』か」

 商人ギルド『JR西日本』の管轄エリアにおいて、ラーメン(魔導スープ)のベースとなる素材は『オーク』か『コカトリス』が一般的である。

 しかし、ここ鳥取県の中部エリア(倉吉・赤碕など)にのみ、全国的にも極めて珍しい『別の魔獣』の骨を使った最強のポーションが存在するという。

「狙うは、猛牛(強装甲のミノタウロス)の骨髄から抽出されたという黄金の霊薬……『牛骨ラーメン』だ!」


 私は赤碕駅周辺にある、一見するとただの大衆食堂にしか見えない年季の入ったギルド(老舗の食堂)へと潜入した。

「……むっ! なんだこの匂いは……!?」

 扉の隙間から漏れてくるのは、和歌山の豚骨臭とは全く違う、どこか『甘く、焦げたような、重厚な脂の香り』であった。

「フハハハッ! 焼肉ギルド(ダンジョン)から漏れ出してくるあの至福の匂いに近い! だが、ここは間違いなく魔導麺ラーメンを供するギルドのはずだ!」

 私は高鳴る心臓を抑え込みながら、厨房の錬金術師に向かって「牛骨ラーメン」をオーダーした。

 そして数分後、私の眼前には、黄金色に澄み渡った美しい魔導スープが召喚されたのであった。


「おおおっ……! 見事な黄金色だ!」

 スープの表面には、猛牛から抽出された分厚い脂の結界(牛脂)が張られており、湯気一つ立てることなく、強烈な内部熱(火属性魔法)を完璧に閉じ込めている。

「豚や鶏のスープとは明らかに違う、王者の風格のようなものを感じるぞ!」

 私は魔術スティック(レンゲ)で脂の結界をそっと破り、下から黄金のスープを掬い上げた。

「いざ、実食ッ!」

「……アッツゥゥゥッッ!!! そして……な、なんだこの怒涛の甘みは!」

 牛脂の結界によって限界まで保温されていた灼熱のスープが、私の下を火傷スレスレの威力で焼き尽くす。

 そして、直後に爆発したのは、獣の骨髄がもたらす『暴力的なまでの甘さと旨味(超絶バフ)』であった。


「フハハハッ! 信じられん! 砂糖など一切使っていないはずなのに、牛のエキス(魔力)が完全に液体の中で飽和し、このとてつもない『甘み』を生み出しているのか!」

 オークの力強さとも、コカトリスのキレとも違う。

 これはまさに、重戦車クラスの猛牛ミノタウロスの突進を真っ向から受け止めた時のような、重厚でずっしりとした物理的な圧力だ。

「これに合わせる小麦の糸(麺)はどうだ!?」

 ズズズッ! 私は中細の縮れ麺を一気に喉元へと運んだ。

「素晴らしい! わずかに波打つ(縮れた)麺の形状が、猛牛の重い油分(牛脂)を無駄なくキャッチし、スープと一緒に私の口内へと強制滑空してくるぞ!」


「美味い……! だが、これは……!」

 私は次々と麺とスープを胃袋へと流し込みながら、自身の身体に起こっているある『異変』に気が付いた。

「重いッ! 猛牛のエネルギー(カロリー)が重すぎる!!」

 京都、和歌山、広島、そして鳥取。

 短期間で超高濃度のB級グルメ(魔獣スープ群)を立て続けに摂取したことにより、ついに私の胃袋(HPメーター上限)が悲鳴を上げ始めていたのだ。

「ぐぅぅっ……牛脂の甘みが、後半になればなるほど、ずっしりと腹のコアに溜まっていくのがわかる! なんという暴力的な持久戦フルコースだ!」

 だが、勇者たる者、目の前に出された魔獣(飯)を残すことは許されない。


「……ふぅぉぉぉっ!! 全集中・マナ吸引ッ!」

 私は残された力を振り絞り、丼の底に残った最後の一滴のエリクサー(黄金スープ)までをも一気に飲み干した。

「……ガハッ。完全なる、制圧だ……」

 胃袋はもはや限界ギリギリまで膨れ上がり、猛牛の圧倒的なマナに完全に支配されている。

「恐るべし鳥取の牛骨魔法……。こんなにも腹にズシリと物理的ダメージを与えてくる回復薬ラーメンが存在したとはな……」

 汗を拭いながら店を出た私は、いよいよこの狂気のB級グルメ(炭水化物)探訪も限界が近いことを悟った。

「次、あるいはその次あたりで、私の胃袋(HP上限)は完全に爆発するだろう……! さあ、次なる最凶の塩分結界を持つ国へと進軍だ!」

 腹をさすりながら、勇者は気力を振り絞り、山陰本線からさらに北東の方向(富山方面)へと重い足取りで歩みを進めるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ