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第91話:黄金の鎧を纏う白き冷気竜(北陸新幹線・金箔ソフトクリーム)

 山口の地で究極の軟体スライム(ういろう)による平和的なヒーリングを受けた私が、ご当地スイーツ編の最後の標的として定めたのは……本州の西から一気に北上した豪雪の国、『石川県』である。

「フスッ……。商人ギルド『JR西日本』の管轄する最新鋭の魔導ルート、北陸新幹線。この青とカッパーのラインを持つ超特急で、加賀百万石の富が眠る大都市『金沢』へと一気に攻め込むぞ!」

 かつて莫大なゴールド(財力)と独自の文化を築き上げたこの都市には、他の地域とは比べ物にならないほど『物理的価値が極めて高い金属』を使った、常軌を逸した魔導スイーツが存在するという情報を得ていた。

「金沢駅を降り立ち、美しい格子戸が並ぶ古き茶屋街(ひがし茶屋街)へと歩を進める。この風情ある街並みのどこかに、究極の成金魔獣が潜んでいるはずだ」


「……見つけたぞ。あの錬金工房(スイーツ店)だ!」

 店外には、その魔獣を見た観光客(他の冒険者たち)が、一様に感嘆の声を漏らしながら「写し絵(スマホ撮影)」の魔法を連発していた。

 私はレジにいる冷淡な表情の店員(錬金術師)に向かって叫んだ。

「オーダーだ! この地で最も高価で、最も派手な装甲を持つという魔晶石の集合体……『金箔ソフトクリーム』を私の前に召喚しろッ!」

「はい、金箔一枚貼りのソフトですねー」

 パサッ。

 店員が専用のピンセット(魔導具)を用い、純白の渦巻き状の冷気竜ソフトクリームに対して、本物の黄金のシート(金箔)を薄く、しかし豪快に張り付けた瞬間。

「……おおおおおっ!! なんだ、この圧倒的なまでの光属性魔力(ゴージャス感)は!!」


 私の手に渡されたのは、下半身コーンの上にそびえ立つ、完全に純金でコーティングされた冷気の塊であった。

「フハハハッ! バカな! 食べ物……回復アイテムに、物理的に最も価値のある金属の鎧(金箔)を着せているだと!? どれだけ贅沢な魔力行使だ!!」

 太陽の光を反射し、激しくギラギラと輝きを放つその姿は、周囲の空間そのものを『百万石の富の結界』へと作り変えてしまうほどのすさまじい存在感を放っている。

「これを持つだけで、私のカリスマ(魅力値)が+999まで跳ね上がったような錯覚に陥るぞ!」

 しかし、中身は数分で溶けて消え去る運命にある氷属性のスライム。

 私は意を決し、強固な金属装甲(金箔)ごと、白き冷気竜に向かって大きく口を開けた。


「いざ、実食ッ!!」

「……ハムッ! ……ンンンッ!?」

 黄金の装甲が唇に触れた瞬間。

 私はとてつもない金属質の硬さを覚悟していたのだが……『ゼロ』であった。

「な、なんだと……!? 金箔による物理的な舌触りや味そのものが、全く存在しない……!」

 分厚く重い金属の鎧に見えたそれは、唇に触れた瞬間に細胞の隙間にスゥッと吸収(同化)されるように消滅し、その直後、中から『ドバァァァッ』と強烈なミルクの甘さと極限の冷気が吹き出してきたのだ!

「フハハハッ! 騙された! この黄金の鎧は、物理防御を目的としたものではなく、『私の精神を富で満たし、味覚ハードルを極限まで引き上げるための強烈なチャーム魔法(プラシーボ効果)』だったのか!」


「美味い……狂ったように美味いぞッ!」

 金箔自体には味がなくとも、「私は今、本物の黄金を喰らっている!」という圧倒的な高揚感(精神バフ)が、中の濃厚なミルクソフトクリームの甘さを5倍にも10倍にも跳ね上げさせている。

 ただの砂糖の甘さではない、金沢の錬金術師たちが生み出した『心理的な超回復魔法(満足感)』の極致だ。

 私は唇をキンキラキンの黄金色(討伐の証)に染め上げながら、ひたすらに冷気竜を喰らい続けた。

 そして最後は、その竜を支台座コーンごとサクサクと噛み砕き、見事に黄金の魔装アイテムを完全に胃袋へと封印したのだ。

「……ふぅっ、ハァッ。完全なる超・成金ゴールドリキャスト完了だ」

 私のHPゲージもMPゲージも、もはや計測不能なほどに黄金色に輝いて振り切れていた。


 京都の抹茶の塔、大阪の黄色い雲、神戸の黄金スライム、岡山の女神の宝石箱、広島の擬態菓子、山口の無限スライム、そしてこの金沢の黄金冷気竜……。

「商人ギルド『JR西日本』の管轄エリア……海賊や山賊(海の幸・山の幸)の荒々しい攻撃だけでなく、この究極の『甘み(スイーツ)』による知的で洗練された精神支配の魔法まで完璧に揃えられているとはな!」

 西日本のスイーツ文化(魔導アイテム)を一通り狩り尽くした勇者の体は、圧倒的な糖分マナと至福感に包まれていた。

 果てしなく続くグルメクエスト。まだまだ大和の国には私の知らない魔獣(ご当地の味)が潜んでいるに違いない。

「フハハハッ! 次はいったい、どんな未知なる魔法陣形(B級グルメか、あるいは麺類か)が私を待っているというのか! 行こう、さらなる冒険の地へ!」

 純金で唇を光らせながら、勇者は加賀百万石の青空に向かって力強く笑い声を響かせるのであった。


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