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第87話:異国魔導士の黄金練成スライム(JR神戸線・神戸プリン)

 黄色い雲の爆発的な膨張(焼きたての大阪チーズケーキ)に精神を溶かされた私が次なる魔導アイテムを求めて向かったのは、大阪駅から西へ伸びる商人ギルドの大動脈……『JR神戸線』の先にある海と山の都市である。

「フスッ……。美しい港と、洋風の瀟洒な館(異人館)が立ち並ぶシャレた街並み……ここが『神戸(三ノ宮・元町エリア)』か」

 かつて世界中から巨大な帆船(魔導船)が集い、未知なる異国の魔法技術が大量に持ち込まれたと言う貿易港。

 この地には古くから『異国の錬金術師(外国人パティシエ)』たちが定住し、日本独自のマナと融合した極めて危険なスイーツ文化を築き上げているという。

「狙うは、ミルクと卵の魔力を極限まで高め、黄金比で錬成したという恐るべき極甘のプルプル魔獣……『神戸プリン』だ!」


 私は、異人館へと続く坂道ダンジョンへのアプローチを登りながら、街全体を覆い尽くしている甘く暴力的な芳香に幾度となく足を取られそうになっていた。

「バタァァァッ……! そして卵ォォッ……!! ここは歩いているだけで、焼きたてのクッキーやケーキの魔力粒子(空気中のマナ)が肺に侵入してくる恐るべき洗脳区画(スイーツ激戦区)だぞ!」

 フラフラになりながらも、私は目当ての高級洋菓子ギルド(スイーツ専門店)へと辿り着き、冷徹に光るガラスケースの中からその黄金の魔獣を購入した。

 そして、港の見える見晴らしの良い公園(戦場)へと移動し、魔導石のように美しい小さなパッキング・ケースを恭しく取り出した。

「封印解除ッ!」

 フィルムを剥がした瞬間、中からプルッと震えながら顔を出したのは、一点の曇りもない完璧なまでに滑らかな『黄金錬成スライム』であった。


「おおおっ……! なんという神々しい滑らかさ! 一切の気泡を許さない、極限の高熱精密魔法(湯煎焼き)の賜物か!」

 スプーン(銀の魔術杖)の背で軽く叩いてみると、黄金のスライムはフルフル……フルフル……と、まるで生きているかのように艶かしく全身を波打たせた。

「フハハハッ! 圧倒的な弾力! 液体のようでありながら固体の形状を維持し続ける、これぞまさに究極の錬金術だ!」

 しかし、この黄金スライムを攻略するには、ある「魔法の儀式」を行わねばならない。

 私はパッキングに付属していた、小さな小袋(特製ソース)を手に取った。

「これだ……。黄金のスライムを完成させるための、漆黒の呪術ポーション……『焦がしカラメルソース』!」


 私は漆黒のポーションの先端を切り裂き、黄金のスライムの頭頂部からドロドロと『黒い呪い』をふりかけた。

 黄金の身体が、琥珀色から黒へと怪しく光るマナの滝によって覆い尽くされていく。

「フスッ……! 激甘の黄金魔獣に、わざと『焦げた苦味カース』を付与することで、ステータスを複雑化させる異国魔導士の高等テクニックか!」

 私は銀の魔術杖を構え、漆黒の呪いを纏った黄金のスライムを大きく抉り取り、そのまま口内へと放り込んだ。

「いざ、実食ッ!」

「……ンンンッ!!!! ガハァァァァッ!!!」

 スライムが舌に触れた瞬間、私の中にあった「プリン=子どものおやつ」という概念が根底から木っ端微塵に粉砕された。


「な、なんだこの尋常ではない口溶けは!!」

 黄金のスライムは、歯を立てるまでもなく、舌と上顎(フィールドの上下)で挟み込んだ瞬間に『ジュワァッ』と音を立てて完全に液状化メルト・ダウンした。

 そして爆発したのは、圧倒的な濃度を誇るミルクと卵、そして微かな柑橘系リキュールの深いコクと甘みだ。

「……ッ!! そしてやってきたぞッ! 漆黒の呪い(カラメルソース)が引き起こす、鋭い苦味のカウンターだ!!」

 極限まで高められた卵の甘みを、焦がした砂糖の強烈な苦味が瞬時に引き締め、口の中を全くベタつかせることなく、ただひたすらに上品な後味(高貴なバフ効果)だけを強制的に叩き込んでくる。

「美味い……! 甘いのに、全く飽きがこない! まるで精巧な機械時計のように、苦味と甘みが計算し尽くされて噛み合っているぞ!」


 私は完全に異国の錬金術の凄まじい洗脳力に圧倒され、無言のまま黄金のスライムを削り取り続け、一瞬にして完璧な勝利(完食)を収めていた。

「……ふぅっ。なんというエレガントな戦闘(食事)であったことか」

 細胞の隅々にまで高貴なマナが行き渡り、自分の『知性』や『魅力カリスマ』といった見えないステータスが劇的に上昇していくのを感じる。

「異国と大和の魔力融合……神戸のスイーツ、恐るべき回復ポテンシャルを秘めていたな。だが、勇者の戦いはまだまだ終わらないッ! 次はさらに強力な魔法の果実を狩りに行くぞ!」

 私は海風に吹かれながら、極上の癒やし(甘味)に包まれた顔を西へと向け、次なるスイーツの超大国を目指して力強く歩み出すのであった。


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