第67話:天空の爆裂魔法と焦げた黒ソース陣形(琵琶湖線・びわ湖大花火大会)
赤き熱狂の軍団(広島カープ戦)との激しい共闘を終えた私が次に向かったのは、商人ギルド『JR西日本』の東の要衝……滋賀県の琵琶湖である。
「フスッ……。京都のすぐ隣に位置するこの国には、海と見紛うほどの超常的な巨大さを持つ『巨大な真水の湖』がドンと存在している」
夏の夕暮れ時、琵琶湖線の特急列車から大津駅周辺のホームへと降り立った私は、重々しい足取りで湖畔へと向かった。
「今宵、この巨大な湖の畔にて、関西全土から数十万もの人間(見物の冒険者たち)が一堂に会する恐るべき魔導イベントが開催されるという」
それは、空気を物理的に震わせ、夜空の結界を引き裂くという……極大規模の『天空爆裂魔法(花火大会)祭』であった。
湖畔の安全地帯(有料の特別観覧席や無料開放された公園のスペース)は、すでに足の踏み場もないほどの尋常ならざる群衆で完全に埋め尽くされていた。
やがて太陽が完全に西へと沈み、湖面が深い暗黒の魔力に包まれた……その時だ。
「ドゥンッ!!」
腹の底に重く響くような重低音とともに、湖上の暗闇から一筋の強烈な光が天空へと勢いよく打ち出された。
「来たかっ……!」
そして、上空数百メートルに達した光の弾丸は、私の貧困な想像力をはるかに絶する規模で夜空に炸裂した。
「ドゥゥゥーーンッ!!!」
「フハハハッ! なんだあのデタラメな威力は! 空全体を覆い尽くすほどの、完全なる高位魔導士による広域炎魔法(超大型の尺玉)ではないか!」
商人ギルド専属(?)の火の魔導士(熟練の花火師)たちが精巧に仕掛けた天空のショーが、ついにその圧倒的な幕を開けたのだ。
色鮮やかな炎の華、空間を揺るがす大音響の爆発、そして黒い水面に美しく反射する揺らめく光の結界(圧巻の水中スターマイン)。
次々と空に放たれ続ける無数の極大爆裂魔法は、私の網膜を強烈に焼き、高揚感という強力な精神バフを付与し続けた。
「……素晴らしい圧倒的な魔法戦だ! だが……この連続する爆音の下で戦い(立ったままの見物)を続けるには、私のHP(腹の足し)が少々心許なくなってきたぞ」
そう、大規模魔導戦の鑑賞は、ただ立って見上げているだけでもすさまじいエネルギーとスタミナを消費するのだ。
私は大輪の花火が空を焦がす中、あえて視線を下げて地上に不規則に広がる『補給ポイント(屋台街)』へと足を向けた。
そこで私の鋭敏な鼻腔を強烈に貫いたのは、炎の火薬の匂いではなく……ひたすらにジャンクで暴力的な『濃厚ソースの焦げた匂い』であった。
「おおっ! この即席の野戦キャンプ(屋台)の鉄板から立ち昇る凶悪な煙……見事な暗黒魔法(ソース焼きそば)の気配だ!」
私は銀貨と引き換えに、透明なプラスチックのへこんだ箱(簡易的な防護・魔法陣形パック)にパンパンに乱雑に詰め込まれた『屋台の焼きそば』と、長い木の串に力強く突き刺さった『イカ焼き(イカの姿焼き)』を素早く召喚した。
「フスッ、フハハハッ! 立派な皿に綺麗に盛り付けられたコース料理など、この狂乱の戦場には全く、いや、微塵も似合わない。油とソースにまみれ、強引に腹をただ満たすためだけの『野戦糧食』こそが、今の私の胃袋が最も欲しているものだ!」
ドーンッ!という爆発の衝撃波を背中で浴びながら、私は安っぽい割り箸を割り、黒光りする太い麺(焼きそば)の塊へと荒々しく喰らいついた。
「……ガハァッ! 塩っ辛いッ! そして尋常じゃなく油っこいッ!」
屋台の鉄板の端で長時間放置され、麺の水分が完全に飛び、ソースがカリカリに焦げ付いたその焼きそばは、お世辞にも上品とは全く言えない凶悪な味(物理デバフすれすれの強引な炭水化物)だった。
「だが……それが最高にいいッ!」
私はさらに、油の浮いた口のまま、片手に持った巨大なクラーケンの丸焼き(イカの姿焼き)にも豪快に噛みつく。ギュムギュムとした強靭な弾力と、甘辛い醤油ダレが容赦なく私の口内を蹂躙していく。
「洗練など不要! 上空を間断なく飛び交う極大魔法(花火)の圧倒的プレッシャーに負けないためには、これほどまでに野蛮で、塩分過多で、口の周りが真っ黒に汚れるような『圧倒的なジャンクの力』が必要なのだ!」
私は、夜空を埋め尽くす色鮮やかな閃光にチカチカと照らされながら、無骨な野戦めし(屋台の粉もの)をひたすらに貪り続けた。
「ドドドドドゥゥーーンッ!!!」
「おおおォォォォォッ!!」
天空の閃光がピークに達し、ついに大魔法祭(花火大会)はフィナーレ(グランド・ファイナル)を迎え、何千発もの大規模な爆裂魔法が一斉に空へと解き放たれ、夜空が数秒間、真昼のように白く染まり上がった。
「……ふぅっ。見事な魔法結界の終焉だ」
全ての花火が打ち終わり、静寂と硝煙の匂いだけが残る湖畔で、私は空になったソースまみれのプラスチック容器とイカの串を片手に、深い満足気な溜息をついた。
「空には極彩色の炎の華、そして私の手と口の周りにはジャンクな油のベタつき。これぞ、日本の夏が誇る『真の祝祭(美しいカオス)』の姿か」
商人ギルド『JR西日本』の管轄領地に広がる果てしないイベントの波。
顔中を黒々とソースで汚した勇者は、心地よい疲労感と強烈な腹の膨らみとともに、次なる狂乱の祭りを目指して歩き出すのであった。




