第124話:水属性を吸い込んだ巨大な菌の魔力スポンジ(山陰本線・しいたけ弁当)
瀬戸内の海で八本足の海魔と物理的激闘を繰り広げた私は、ローカル線と特急列車を乗り継ぎ、中国山地を越えて再び山陰地方……鳥取県へと帰還していた。
「フスッ……。肉、カニ、魚、タコ。ありとあらゆる属性のモンスター(駅弁の中心となる具材)を制覇してきた私だが、この鳥取には『それらのどれにも当てはまらない』異端の魔獣が潜むアーティファクトが存在するという」
肉でもない、海産物でもない。
「『菌』だと言うのか? たかがキノコごときが、駅弁という激戦区において『主役』の座を張れるはずが……」
私は半信半疑のまま、ギルドでその箱を手に入れた。
私が鳥取駅(アベ鳥取堂)から手に入れたのは、その名もズバリ『しいたけ弁当』である。
「牛めし、かに寿し……名だたるネーミングの中で『しいたけ』とは、あまりにも地味すぎる響きだ」
私は山陰本線のローカル列車の座席に座り、秋の深まりを感じさせる日本海の景色を眺めながら、その弁当の蓋を開け放った。
「……ッ!!? な、なんだこれはぁぁぁっ!?」
私は、箱の中央に鎮座する『漆黒の円盤(UFO)』を見て、思わず叫び声を上げそうになった。
「デカすぎるッ!!!」
弁当のド真ん中に配置されていたのは、子供の拳ほどもある、黒々と輝く『超巨大なしいたけ(魔獣傘)』であった。
「しかも一つではない。巨大なボスを中心に、分厚くスライスされたシイタケの眷属たちが、周りをギッシリと取り囲んでいるぞ!」
さらに恐ろしいことに、一番下のご飯の層……。
「ただの白飯ではない! 細かく刻まれたシイタケが、醤油出汁と共に炊き込まれている『完全なる菌の領地』だ!」
「肉や魚がいなくても、これだけの存在感を出せるというのか……!」
私は畏敬の念すら抱きつつ、最も巨大なその『漆黒の傘』を箸でつまみ上げ、大きく口を開けてかぶりついた。
「……モムッ!!」
「……ッ!! ジュワァァァァァァァァァッッ!!!」
「ガハァァァァァッッ!!!」
私は座席の上でのけぞった。
「なんだこの圧倒的な汁の量は! 噛み締めた瞬間、シイタケの組織の奥深くに魔法陣のように溜め込まれていた『極上の甘辛い出汁(水属性のマナ)』が、口の中で大爆発を起こしたぞ!」
「美味い……! 肉のような噛み応え(強靭な繊維)すらある!」
驚くべきは、その強烈な旨味成分(グアニル酸)。
動物の脂(重さ)が一切ないにもかかわらず、その深く濃密な出汁の力だけで、ご飯が無限に進んでしまうのだ。
「牛やタコは『物理攻撃』でステータスを削ってきたが、この巨大なしいたけは『魔法(汁の爆発)』を使ってこちらの脳の味覚中枢に直接ダメージ(快楽)を与えてくる!」
私は滴るマナの汁をこぼさぬよう、急いで下層のしいたけご飯をかき込む。
「上の甘辛いマナと、下の上品なマナ。菌という同じ属性でありながら、全く違うアプローチで私の食欲を増幅させていく!」
「……ふぅっ、ハァッ。完全なる制圧(大完食)だ!」
口いっぱいに広がる芳醇なキノコの香りを堪能しながら、私は深く息を吐き出した。
「見事だ。肉や魚に頼らずとも、ただ一つの植物系魔獣のポテンシャルを極限まで引き出し、一つの完璧な世界(結界)を構築してみせた。これこそが駅弁の奥深さよ」
脂っこさが一切ない。だからこそ、どれだけ巨大な魔力スポンジ(しいたけ)を食らっても、胃袋は清涼な状態を保っている。
私のHPとMPは、いよいよ完全な上限(MAX限界突破)へと達しようとしていた。
「フスッ……。準備は完全に整った」
残すは最後にして最強、西日本エリアの総決算たる最高傑作。
「いくぞ! 私が最後に目指すべき大都市(新大阪界隈)へ。一度は死から蘇った不死鳥ギルドがもたらす『八角形の関西出汁魔法』の極致へ!」
勇者の過酷にして至福のグルメクエストは、いよいよ最終決戦に向けた最終列車へと乗り込むのであった。




