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第122話:険しい山の結界を越える黒王牛陣形(播但線・但馬牛めし)

 山口の地で蒸気機関車というロマン溢れる火と鉄の魔獣(SL)を堪能した私は、再び山陽本線を東へと進み、兵庫県へと帰還していた。

「海沿い(神戸線や山陽本線)はもう十分に走破した。次は、瀬戸内海から険しい中国山地を縦断し、日本海へと抜ける過酷な『山の結界(播但線ルート)』へと挑むぞ!」

 私が姫路ひめじのギルドから乗り込んだのは、美しい流線型の気動車特急『はまかぜ』である。

 この特急が越えていく険しい山中……交通の要衝である和田山わだやまの地には、日本全国の『黒き王牛(和牛)』の始祖とも言える、最強の肉アーティファクトが存在していた。


「フスッ……。米原で食らった『近江牛』、神戸で食らった『神戸牛』。これらの強大な肉魔法の源流をたどると、全てこの兵庫県北部に生息する『但馬牛たじまうし』という絶対的な一族(黒王牛の祖)に行き着くという」

 私は道中で手に入れた、見るからに重厚なパッケージの『但馬牛めし』をトレイの上に大切に安置した。

 特急はまかぜは、エンジン音の重低音(物理バフ)を轟かせながら、播但線の深い緑に包まれた谷間をグングンと登っていく。

「素晴らしい山の景色! これほどの自然の風バフがあれば、どれほど超重量級の肉魔法が来ようとも完全に消化してみせるぞ!」

 私は意気揚々と、アーティファクトの蓋を開け放った。


「おおおおっ!! なんと力強い茶色の陣形マトリックス!」

 箱いっぱいに敷き詰められていたのは、甘辛く煮込まれた分厚い「但馬牛の肉」と、それに絡みつくように配置された土属性の魔物「ごぼう」の千切りであった。

「近江牛大入飯の時は純粋なる『肉一色』の暴力だったが、こちらは大地(山)の力である『ごぼう』を編み込んできたか! 完璧なまでの重戦士フル装備だ!」

 特製ダレの色に染まり上がったご飯の層も健在である。

 私は最早、理性などかなぐり捨て、魔術スティック(箸)を力強く箱の最下層へと突き立てた。


「いざ、実食ッ!」

 肉、ごぼう、そしてタレの染みた飯をまとめて口へと放り込む。

「……モギュッ! ボリボリッ!!」

「美味ぁぁぁぁぁぁぁぁいッッ!!!」

「なんという絶対的な肉の旨味! そしてごぼうの『土の香り』と『物理的食感カリカリッ』が、王牛の重すぎる脂(物理防御力)を見事に中和し、完璧なバランスへと昇華させている!」

 ごぼうが肉の旨味を吸い、肉がごぼうの香りを纏う。

 これぞ、山間部という過酷な環境が生み出した、最強の「生存戦略サバイバル・メソッド」であった。


「ガハハハッ! やはり肉だ! 肉こそが正義!」

 特急はまかぜがカーブを曲がるたびに、遠心力で私の体が揺さぶられる。

 窓のすぐ外をかすめていく険しい木々や、眼下を流れる市川の清流。

 大自然の巨大な結界の中を、鉄の箱(気動車特急)に乗って突き進むという非日常感が、異常なまでの消化速度バフを私に与えていた。

「モギュ、モギュ……。美味い! だが、さすがに王牛の原点(但馬牛)ともなると、HPゲージ(満腹度)の上がり方も半端ではないな!」

 私は播但線の景色の美しさに助けられながら、重厚な肉とごぼうのタッグマッチを一つ残らず噛み砕き、確実な血肉へと変えていった。


「……ふぅっ、ハァッ。制圧(完食)完了だ!」

 列車のエンジン音のリズムに合わせるように、空になった容器に箸を置く。

「素晴らしい。肉魔法の極致……ごぼう(大地)との連携技は、まさしく山の王に相応しい貫禄であった」

 限界まで回復(膨張)した胃袋をさすりながら、私は大きく伸びをした。

「完全なる肉の包囲網(重装甲)を突破した今、私に必要なのは……瀬戸内海が育んだ、洗練されて引き締まった『海の魔物』だ」

 播但線を抜け、少し落ち着いた頃合いを見てから、私は再びあの「赤い魔物タコ」が潜む広島の海……呉線方面へと照準を合わせるのだった。


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