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第120話:大自然の防腐多重結界(大和路線界隈・柿の葉寿司)

 岡山にて、極彩色のお祭り騒ぎ(桃太郎の祭ずし)を平らげた私は、再び商人ギルド『JR西日本』の路線網を大移動し、日本で最も古い歴史を持つとされる大和の国……奈良県へと進入していた。

「フスッ……。特急列車の疾走感も良いが、消化(HP回復)を安定させるならば、やはりローカル線ののんびりとした『癒やしの波動バフ』も欠かせない」

 私が狙いを定めたのは、奈良の古代遺跡(古墳や寺院)を縫うように走る大和路線や桜井線といったローカルルートである。

 そしてこの大和の地には、氷属性魔法(冷蔵庫)など存在しなかった遥か古代から伝わる、究極の『大自然の保存アーティファクト』が存在していた。


 私は奈良駅周辺のギルドでその伝説のアイテム……『柿の葉寿司』を買い求め、ガタゴトと心地よく揺れるローカル線の座席に身を落ち着けた。

「さあ、見せてもらおうか! 大和の国の錬金術を!」

 私は木箱(強固な装甲)の蓋を開け放った。

「……むっ? ご飯も、魚の姿も見えないぞ!」

 箱の中に整然と並べられていたのは、見事なまでに深い緑色をした『大量の葉っぱ』であった。

「なんだこれは!? 駅弁だというのに、中身が全て『植物の葉』でぐるぐるとミイラのように包み込まれているではないか!」


「ははぁ……なるほど! 私の鑑定眼がその正体を見抜いたぞ!」

 ただの葉っぱではない。これは『柿の葉』だ。

「柿の葉にはタンニンという強力な『殺菌・防腐魔法』が宿っている! さらにこの寿司は酢飯(浄化魔法)と塩(結界魔法)を使っている。つまり……」

 塩、酢、そして柿の葉。

 これは、夏の厳しい暑さや長旅の腐敗魔法(状態異常)から食材を守るために特化して生み出された、執念とも言える『三重の対状態異常バリア』なのだ。

 私はその小さな葉に包まれた塊を一つ手に取り、そっと広げてみた。


「おおっ! 葉っぱの封印を解くと、中から薄紅色のサケ(またはサバ)と、四角く押し固められた酢飯が現れたぞ!」

 出雲のバラパンのように葉っぱごと食べるのか一瞬迷ったが、柿の葉の繊維は強靭だ。これはあくまで「食べてはいけない防具」であると直感した。

「いざ、実食ッ!」

 防具を完全に剥がし終えた一口サイズの寿司魔獣を、口の中へ放り込む。

「モムッ……! ……ンンンッ!」

「なんと上品な! 魚の生臭さは完全に消え去り、その代わりに『柿の葉が持つ独特の若々しい香り(植物マナ)』が、魚とご飯の芯までしっかりと染み込んでいるではないか!」


「美味い……! 一口サイズだからこそ、一つひとつの封印(柿の葉)を解くという『儀式』が、食欲をさらに増進させていく!」

 サバ、サケ、サバ、サケ。

 葉っぱを剥くたびに異なる属性の恩恵を受けながら、私はローカル線の旅を満喫していた。

「富山の『ますのすし』のような圧倒的な質量によるゴリ押しではない。こちらは一つずつ手作業で葉に包み込むという、極めて緻密かつ丁寧な『職人魔法』だ」

 大自然の力を利用した、エコで強力なアーティファクト。

 車窓から時折見える古都の風景が、柿の葉寿司の味わいをさらに奥深く、神秘的なものへと昇華させてくれていた。


「……ふぅっ、ハァッ。完全なる制圧(大完食)だ!」

 木箱の中に残されたのは、役目を終えた大量の緑色の防壁(柿の葉)だけであった。

「素晴らしい。胃袋への負担も少なく、これならあと3箱は軽く制圧できたな」

 だが、あえて満腹の一歩手前で止めておくのが、本物の勇者の嗜みというもの。

「魚系統のアーティファクトは、十分に解析を終えた。……よし、次はいよいよ真打ち『重厚なる肉魔法』と、大地を揺るがす『鉄の長老(蒸気機関車)』とのフュージョンだ!」

 私は次なる舞台……山口県の奥深くを走る、煙と炎をまとった古の魔獣列車(SLやまぐち号等)を目指し、再び西へ西へと大移動を開始するのであった。


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