第119話:果実のフリをしたピンクの桃型アーティファクト(山陽本線界隈・桃太郎の祭ずし)
明石の海に沈む本物の陶器(ひっぱりだこ飯)を完食し、見事に海と川のアーティファクト群(第17部)を制圧した私は、休む間もなく次のクエストへと足を踏み入れていた。
「フスッ……。特急やローカル線がもたらす『景色バフ(消化促進)』の効果はもはや疑いようがない。次なるターゲットは、海沿いから離れた『山』と『特異な結界』を持つ駅弁たちだ!」
私が次なる標的として定めたのは、フルーツと太陽の国、岡山県である。
「岡山といえば、かつて『バナナロール』という名の、果実の姿を借りた恐るべき重力魔法に苦しめられた地。だが今回こそは、爽やかなフルーツ魔法にありつけるはずだ!」
岡山駅の駅弁ギルド(三好野本店等)で、私の目に真っ先に飛び込んできたのは、ひときわ異彩を放つ桃色の容器であった。
「おおっ! これだ! 容器自体が、完全に『巨大な桃』の形をしているではないか!」
その名も『桃太郎の祭ずし』。
私はそのピンク色に輝く奇抜な宝箱を大事に抱え込み、岡山から伸びるローカル線……のどかな田園風景を走る吉備線(桃太郎線)の列車へと乗り込んだ。
「さあ! 今度こそ巨大なフルーツ(特大の桃)の果肉が詰まっているのだろうな? いざ、封印解除!」
パカッ!という甲高い音と共に、ピンク色の桃型結界の蓋が外れた。
「……ッ!!? こ、これは!」
私の目は、その中から放たれた極彩色の『光属性魔法』に完全に眩まされた。
「モ、モモ(果肉)が入っていない!? いや、それどころか……なんという具材の多さだ!」
容器の中を満たしていたのは、果物などではなかった。
一面に敷き詰められた黄金の錦糸卵の絨毯(防壁)。そしてその上には、エビ(赤)、アナゴ(茶)、タケノコ(黄白色)、シイタケ(黒)、酢レンコン(白)、そしてサワラ(銀)など……。
瀬戸内海の恵みと中国山地の幸が、まさしく『お祭り騒ぎ(カオス)』のように配置されていたのだ。
「フハハハッ! またしても『具材詐欺(嬉しい騙し討ち)』か! ただのちらし寿司ではない。これは一つの箱の中に、あらゆる属性の低級クラス魔法を上限まで詰め込んだ、極めて賑やかな『万能結界』だ!」
私は魔術スティック(箸)を伸ばし、まずは酢で締められたサワラから口内へと運んだ。
「いざ、実食ッ!」
「……モムッ! ……美味い!」
「魚の旨味、そしてエビのプリッとした物理的弾力! それを迎え撃つ酢飯の清涼感がたまらない!」
「まだまだいくぞ! 次は山の幸だ!」
コリコリとしたタケノコの斬撃魔法と、出汁をたっぷりと吸い込んだシイタケの黒魔術。
海の幸と山の幸が交互に押し寄せ、口の中で完璧な連携攻撃(お祭り騒ぎ)を繰り広げている。
「ガハハハッ! なんと楽しいアーティファクトだ! 一口ごとに『味の属性』が切り替わるため、脳の味覚センサーが全く退屈しない!」
ローカル線(吉備線)の窓から見える、とてものどかで美しい日本の原風景(田んぼや山々)。
その穏やかな景色バフを受けながら、私は賑やかな祭りの中心へと突撃を繰り返した。
「……ふぅっ、ハァッ。完全なる制圧(完食)だ!」
極彩色のお祭り騒ぎを全て胃袋に収めた私は、ピンク色の桃型アーティファクト(空き箱)を満足げに見つめていた。
「見事な陣形であった。派手なメインモンスター(巨大な肉など)は不在だが、手数の多さとバランス感覚において、この『祭ずし』の右に出るものはいないだろう」
そして何より、これだけ多様な具材を食べても、ベースが「酢飯」であるため、HP(胃袋ゲージ)への負担が極めて少ない。
「よし、胃袋のウォーミングアップには最適だったぞ。次は関西方面のローカル線(大和路線)へ向かい、大自然の防壁(葉っぱ)に守られた多重結界を破りに行こう!」
勇者は桃色の空箱を丁寧に仕舞い込み、次なる魔法箱を求めて陽光あふれる岡山の地を後にするのであった。




