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第118話:本物の陶器『蛸壺』に封入された魔導トラップ(JR神戸線・ひっぱりだこ飯)

 富山の地で、物理的圧力による究極の錬金術ますのすしを打ち破った私は、特急列車と新幹線を乗り継ぎ、一気に南下。

 再び波静かなる瀬戸内海……兵庫県は明石あかしの海を望む『JR神戸線』のエリアへと帰還していた。

「フスッ……。プラスチック、木枠、そして竹の棒。数々の特異なアーティファクト(駅弁容器)を見てきたが、この明石の地には、携帯食料の常識を根底から覆す『狂気の器』が存在するという」

 およそ『持ち運ぶこと(軽量化)』という魔法の基本を完全に放棄し、食材を封印することだけに特化した漆黒の牢獄。

 私は西明石駅(または神戸周辺のギルド)で、その重く冷たい呪具を無事に手に入れた。


 ローカル列車のボックスシートに陣取り、私はその重厚な呪具(ひっぱりだこ飯)をトレイに置いた。

「……ゴトリッ、という重い音がしたぞ!」

「弁当箱が……『本物の陶器(焼き物)』だとぉぉぉッ!?」

 私の目の前にあるのは、明らかに土を捏ねて高温で焼き上げられた、硬く、重く、分厚い『蛸壺たこつぼ』そのものであった。

「弁当という名目でありながら、プラスチックでも紙でもない、リアルな土属性の防壁(陶器)に食材をぶち込むだと!? 淡路屋(ギルド名)の錬金術師たちはどうかしている!」

 私は慄きながらも、その壺にかけられた紙の封印をビリビリと引き破った。


「おおっ……!!」

 暗い蛸壺の底から現れたのは、茶色く染まった大地(炊き込みご飯)と、そこに複雑に絡みつく数匹の高レベル海魔たちの姿であった。

「巨大な吸盤を持つ太い触手(明石ダコ)の塊! さらに、その横には香ばしく焼かれた長蛇(穴子)がとぐろを巻いているではないか!」

 明石海峡の激しい潮流(渦潮魔法)の中で鍛え上げられた、最高峰の物理攻撃力を持つ八本足の魔獣が、完全に煮込まれてこの陶器の中に幽閉されている。

「さあ、見せてもらおうか! 陶器の牢獄に閉じ込められた海魔の実力を!」

 私は魔術スティック(箸)を壺の奥深くへと突き刺した。


「いざ、実食ッ!」

 最も太い触手タコの塊を引っ張り出し、食いちぎる。

「……モムッ!」

「……えッ!? や、柔らかいッッ!!」

 私は驚愕した。タコ特有の強靭なゴムのような弾力(物理防壁)が、完全に破壊されているのだ。

「淡路屋特製の甘辛いタレ(特級魔法液)の海で、限界までじっくりと煮込まれた結果だ! 歯を当てるだけでホロリと崩れ、中から溢れ出すタコの旨味エキスが口内を満たしていくぞ!」

 触手による打撃を警戒していた私は、その拍子抜けするほどの柔らかさと、深い旨味の波状攻撃に完全に魅了されてしまった。


「美味い……! しかも、このタコと穴子のエキスを一身に浴びた下のご飯(醤油飯)がまた格別だ!」

 さらに、陶器(蛸壺)という器の真価はここにあった。

「プラスチックの弁当箱と違い、土でできた器は『蓄熱・保温効果』が異常に高い! つまり、時間が経っても内部の食材が冷え切りにくく、魔法の効力(風味)を長期間維持しているのだ!」

 重い。だが、その重さこそがこのアーティファクトの最大の強み(バフ)であった。

 私は瀬戸内の穏やかな海と淡路島を車窓から眺めながら、蛸壺の底に隠されていた菜の花(緑の癒やし魔法)や椎茸にまで手を伸ばし、夢中で壺の中を空にしていった。


「……ふぅっ、ハァッ。完全なる制圧(大完食)だ!」

 空っぽになった重い蛸壺の底を魔術スティックでカツカツと叩きながら、私は充実した吐息を漏らした。

「海産物と駅弁の相性は、まさしく神の領域にある。……和歌山、鳥取、米子、福井、富山、そして明石。海と川の魔獣を封じ込めた特級アーティファクトたちを、私は完全に見極めたぞ!」

 だが、私の旅はまだ終わらない。

「景色バフによる無限消化魔法は、まだ有効だ。次なるアーティファクトは、海ではなく……『山と肉』の特異点だ!」

 私は次なる魔法箱『桃太郎の祭ずし』や『柿の葉寿司』、そして狂気の『牛肉系アーティファクト』の討伐を目指し、商人ギルド『JR西日本』のローカル線へと深く、深く潜り込んでいくのであった。


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