第108話:白き煉瓦に封印された赤い泥沼の呪い(JR神戸線・あん食)
大阪の純喫茶で、関西特有の『分厚すぎる出汁結界(厚焼き玉子サンド)』に腹を圧迫された私は、商人ギルド『JR西日本』の管轄エリアを再び西へと向かっていた。
「フスッ……。パンと言えば、やはり港町だ。異国の文化をいち早く取り入れた『神戸(JR神戸線エリア)』にこそ、真にエレガントで洗練されたパン魔法が存在するはずだ!」
大阪のジャンクで重厚な魔法から逃れるため、私は三ノ宮駅の高架下に位置するあるパン・ギルドへと逃げ込んだ。
「よし、この『トミーズ』というギルドが誇る代表的な魔法アイテム……『あん食(食パン)』を一つもらおうか」
1.5斤というサイズの、焼き入れられた四角いパン。
一見すると、どこにでもある普通の食パン(白き錬瓦)のように見えた。
だが、店員からそれを受け取った瞬間、私の腕は『ガクンッ!』と重力に負けて沈み込んだ。
「……ッ!? な、なんだこれは!? ただのパン(空気と小麦の塊)のはずが……冗談のように重いぞ!」
まるで中に鉛の魔石でも詰め込まれているかのような、異常な物理的重量。
私は焦る気持ちを抑え、拠点(宿屋)へと帰還してその白き煉瓦をブレッドナイフ(聖剣)で両断した。
「ははぁ……なるほど。そういうことか!」
切断面を見て私は納得した。
真っ白なパン生地(防壁)の内部には、おびただしい量の『赤黒い泥(粒あん)』が、まるで巨大な樹木の根や血管のように、マーブル状にびっしりと練り込まれていたのだ。
「フハハハッ! なんという暴力的なまでの『あんこ(魔力)』の含有量! これはパンではない、パンの形をした『巨大な和菓子のキメラ』だ!」
神戸というパンの聖地にありながら、中に込められているのは完全に和の魔法陣形(小豆の呪術)である。
私は分厚くスライスしたその一片を手に取り、まずはそのまま(焼かずに)かじりついた。
「モニュッ……! ズルルッ!」
「甘いッ!! そして尋常じゃないほどのカロリー密度だ!」
生クリームを混ぜて焼き上げられたフワフワのパン生地自体がすでに甘いのに、そこに粒あんの持つ『物理的な重さ(特大の甘味バフ)』が容赦なく襲いかかってくる。
「パンという『軽い』土台を使っているせいで、脳が危険信号を出す前に、この大量の赤黒い泥を胃袋へ強制転送してしまうぞ!」
だが、このパンの真なる恐ろしさは、この『生の状態』ではなかった。
「よし。……次は炎の結界で焼き上げ、最強の追い討ち魔法を浴びせるぞ!」
トーストして表面がサクサク(硬装甲化)になったあん食。
その上に、私は黄色い魔石……『大量のバター』を乗せた。
「ジュワァァァァッ……」
「見ろ! 熱々のあんことパンの境界線で、バターが黄金の液体となって染み込んでいく!」
私はその悪魔的なフュージョンを施された一切れを、大きく口を開けて迎え撃った。
「サクッ! ジュワァァァッ!!」
「……ガァァァァァッッ!!!」
「塩気ッ! バターの強烈な塩魔力が、あんこの甘み(赤い泥沼)と合わさることで、無限食欲ループを発生させている! 美味すぎる……! だが、この重量感は完全に米と同等かそれ以上だ!」
「……ふぅっ、ハァッ……ハァッ」
トーストしたあん食を数枚平らげただけで、私の胃袋(HPメーター)はすでに警告音を鳴らし始めていた。
「バカな……。パン(小麦)でこれほどまでに腹を満たされるとは。神戸の錬金術師たちが生み出した『あん食』という名の白き煉瓦は、明らかに冒険者を満腹死させるための罠だ」
ずっしりとした小豆の魔力を腹に抱え込んだ私は、パンなら連続討伐できるという己の甘すぎる見通しを激しく後悔していた。
「だが、まだ引き返すわけにはいかない! 次なる舞台はフルーツの国(岡山)だ! 果実の魔法なら、きっとこの重さを癒やしてくれるはずだ!」
私は淡い期待を胸に、山陽本線をさらに西へと進んでいくのであった。




