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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第五章 問題児達の王国祭
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108 学園組の冒険

 四国を分かつ巨山。そこは登頂に竜巣が存在し、竜を頂点とした食物連鎖が続いている。

 山の登頂に近付けば近付くほど魔物は強くなっていくらしい。


 で、そんな山の浅いところにオークの巣が出来たから討伐依頼が出たというわけだ。


「オークってこんなにたくさん群れるんだなっ」

「いや、この数は多すぎますよ! どれだけ湧いてくるんですか!」


 オークの巣を見つけて、入り口のオークを倒したまでは良かった。

 その音で駆け付けたオークの多いこと多いこと。今では俺達は一定の距離を保ちつつバラバラに戦っている。


「あれっ? ロイアータ先輩は?」

「そう言えば何処に……あっ、あそこに!」


 カルテが指差した方向に視線を向けると、土のかまくらがあった。……あの中か。


「って、ロイアータ先輩も戦ってくださいよ!?」


 思わず声を張り上げるとロイアータ先輩に届いたのか、かまくらが崩れた。

 中から出てきたロイアータ先輩は、身体のあちこちに銀色の装甲を纏っていた。両拳の鋼を打ち付け、ガアンッと鈍い金属音を鳴らす。


「おらあ! くそ豚くそ豚くそ豚くそ豚――」


 ロイアータ先輩は単身突っ込むと、ガスゴスガスガスと拳の、肘の、肩の膝の足の頭の装甲を叩き込む。一発一発が重く、的確にオークの急所を突いていっている。


「なにあれ……?」

「恐らく【鋼魔法】だな。【土魔法】の派生スキルだ」


 少し離れた場所で戦っていたジョット先輩が丁度戻ってきて疑問に答えてくれた。

 【鋼魔法】……初めて見るけど、数ある【土魔法】の派生スキルの中ではポピュラーな方だ。ポピュラーと言っても、そもそも派生スキルは誰にでも使えるスキルではないんだけど。


「ロイアータ先輩って、戦う時口悪くなるのね……」

「あれ、怒らせたら駄目なタイプだな。気ぃ付けよ……」

「二人とも、また大勢来ましたよ!」

「よし、俺らが引き付けるからアカリ、でかいの頼む!」

「了解!」


 カルテが氷を、ジョット先輩が破片の魔力結晶をバシバシ叩き込んでいく。

 その間に俺は魔法陣を描いた紙片を上にばらまく。


「『コネクト』……」


 【空間魔法】の呪文を口の中でぼそりと呟き、紙片の【範囲魔法】同士を繋げる。小さな範囲は空間ごと接続され、一つの大きな範囲指定になる。

 純粋な威力を求めるなら【火魔法】だけど、山火事が怖いから【水魔法】だ。魔法の炎は普通の火と違って魔力を燃料とするんだけど、高温なのは同じだから普通の火も発生するんだよね。


 広大な範囲から撃ち出される水の弾丸は、体積の暴力。大きいというのはそれだけで重くて威力が出る。

 大量の水を叩きつけられたオーク達は全身を強打され、そのまま流された先でさらに身体を打ちつける。魔力の水が消えた先には、動けるオークは居なくなっていた。


「えっぐ……」

「結構流されていったな。ジョット先輩、とどめ刺しに行きましょう」

「アカリさんの魔法はいつ見ても派手ですね……」

「皆お疲れ……。殆ど倒したと思うけど、まだ巣の中に居ると思うから」

「あっはい」


 戻ってきたロイアータ先輩のテンションが低くて動揺してしまった。

 えぇ……どういう切り替わり方してるの……? 次の瞬間怒鳴って来るんじゃないかと内心ドキドキしてしまう。


「よし、それじゃあ先に流されたオークを仕留めたら巣の中に入るか。アカリは入り口を見張っててくれ」


 ジョット先輩の指示で各自動き出す。

 ここのオークは寝床にアイアンアントの掘り残した穴を使っているらしく、その巨体が出入りして広がった洞穴が巣になっている。その中の様子はまだ分からないが、相当数のオークが出てきたことから結構な広さが想定される。


「俺を見張りにしたの、細剣だからかな」


 指示の意図に、ふと思い至る。

 動けなくなったオークの急所を突いて回るだけにしろ、あの分厚い肉を斬るには得物が細過ぎる。一体や二体であれば問題ないだろうけど、あの数を突いていたらポッキリやってしまいそうだ。状態復元で直せるけど、それはそれ。

 そう考えると、この細かい役振りも適材適所を考えてのものだろう。



=====



 巣の中に残っていたオークの掃討が終わり、冒険者ギルドに報告する。

 今回の依頼は、巣の掃討だからギルドがその確認をしてから報酬が支払われるらしい。ギルドの口座に振り込まれるから、予め報酬の分配額を決めておく。


 そういえば、俺の口座っていくら入ってるんだろう。通帳とかあるわけじゃないから細かく把握してないんだよな。

 今までの依頼の報酬は口座に入れているけど、生活費やらでちょくちょく引き出しているからあんまり残っていないかもしれない。ああでも、流石に王さまから貰った報酬が残ってるか。宝剣を見つけたときの金貨100枚。


「すいません、口座の残高を確認したいんですけど」

「はい、ではギルドカードをお願いします」


 折角ギルドに来ているのだから確認しておく。

 受付にギルドカードを渡すと、受付嬢はカードを機械に通した。


「残高は……えっと」

「大まかにでいいですよ」

「では、約金貨1200枚です」

「えっ……」


 ……え?

 銅貨とか銀貨の間違いじゃなく?


「……入出金の明細とかって出せますか?」

「少々お時間を頂きますがよろしいですか?」

「はい」

「それと、手数料が銅貨1枚となります」


 そんなのもう、今聞いた額からしたらあってないようなものだ。

 5分程で縦長の紙を渡された。入出金の履歴が1行ずつ書かれている。

 大金が入金されているところを探す。


 メイガー……金貨200枚。

 メイガー……金貨30枚。

 メイガー……金貨30枚。

 ・

 ・

 ・


 メイガーって誰だよ。

 うわ、一回で金貨500枚なんてのもある。一体何をしたというんだ。

 こんな大金どこから……ああっ、思い出した。メイガーって王さまのところの人だ。役職知らないけど、王さまの指示で振り込んだのだろう。

 そういえば、貴族の治療とかエルフの森での協力とか、何かあるたびに報酬は振り込んでおくとか振り込んでおいたとかいつものようにするとか王さまに言われていた。それが積もり積もって金貨1000枚を超えたのか……。


「アカリさん、遅かったですね。用事は済んだのですか?」


 呆然と紙切れを手に持ったまま、待たせていたカルテのもとへ戻る。

 今日は既に解散しているから、ジョット先輩とロイアータ先輩は居ない。


「カルテ。カルテは何か欲しいものある?」

「え、なんですか急に」

「ん」


 俺の口座の入出金明細を見せる。


「んん!?」

「これからはアカリ様と呼んでくれ」

「いやいやいや、どうしたんですかこれ!」

「俺、ちょくちょく王さまから直接依頼されていたじゃん? 報酬めっちゃ振り込まれてた」

「そういえばアカリさんって名誉貴族でしたね。貴族ならこれくらい持っていてもおかしくはない、んですかね……?」

「俺は知らない。それよりこれからご飯食べに行かない? お金、いっぱいあるみたいだから幾らか下ろしたんだ」


 最初はこのままギルドの酒場で食べようと考えていたんだけど、金があるなら話は別だ。これだけあって使わない道理はない。

 俺達は貴族街近くの大きなレストランで、リッチなディナーを楽しむことになった。なんかよく分からない肉だったけど、美味しかった。この世界だと魔物の肉も普通に食べるし美味しいから、謎肉ばっかなんだよな。

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