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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第五章 問題児達の王国祭
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105 請負人

 全ての対戦が終わり、全員に折りたたんだ紙が配られた。

 それをギルドに戻ってから開けるように言い渡されて、一旦解散となった。


 早速冒険者ギルドに戻ると、俺とカルテ、それからジョット先輩の三人で場所を取って紙を開ける。


「合格、ギルドの奥にある小部屋へ向かうように。……え、これだけ?」

「お、俺も合格だ」

「私もです。これ、誰が合格者かその場で分からないようにしたかっただけじゃないですかね」

「なんだ、皆合格なのか。でも合格者は移動するなら結局誰が合格だったのか分かりそうだけど」

「あの場で合否を言い渡すよりは波風が立たないだろ」


 そういうものなのか。

 まあ、何はともあれ合格だ。ギルドの奥にある接客用の部屋に入る。

 そこには既に第一王子が居た。それと、俺達のすぐ後にもう一人入ってきた。


「失礼しまーす……」

「これで全員揃ったな」

「ひっ、僕が最後ですか……? ごめんなさいぃ……」


 滅茶苦茶弱気な人だな……。

 にも関わらず、結構派手な紫色の髪をした少年だ。歳は同じくらいかな?


「なーんか、作為的な人選だな?」


 ジョット先輩がそう、王子に聞こえない程度の声量で言った。

 確かに、実力で選んだにしては若い冒険者ばかりだ。Aランクのジョット先輩や特殊ユニークスキル持ちの俺はともかく、カルテより強そうだった冒険者は他にも居た。


「今回依頼を受けてもらうのはこの4人だ。協力して臨んでほしい」

「それは勿論ですが、依頼の内容に依りますよ」


 ジョット先輩は一応敬語だが、いつまでも依頼内容を話さない王子に少し苛ついているみたいだ。


「ああ、これまで引っ張って悪かったな。今から依頼内容を説明する」


 ジョット先輩の感情に気付いてか軽く謝罪を入れた王子は、ようやく説明を始めた。


「君たちの耳にも入っているだろうが、最近は物騒でな。通り魔事件がやたら発生しているんだ。近々始まる王国祭を前に国へ戻ってきてみればこんな状態だ。お兄さまとしては見過ごせん」


 最近の斬り裂き殺人事件の話か。俺は見つけたら止めるなりしているけど、最近は数が増えているのか知らないところで被害が出ていたりするみたいなんだよな。

 もしかして殺人鬼退治の依頼? ……その前にお兄さまってなんだ。


「しかも! スーロちゃんときたら以前より護衛の数が減っていたんだ! 元々少なかったのに今では陰から見守る護衛が二人のみ。王族としてあり得ない。もしこれで何かあったらと思うとお兄さまは心配で心配で……!」


 姫さま……なかなか、家族思いのお兄さまですね。ウラヤマシイカギリデス。

 でも、王族がいつも護衛二人だけっていうのは俺もどうかと思う。侍らすの嫌いな姫さまだからなぁ。


「そこで、今回君たちには王国祭期間中のスーロちゃん……スーロメルト・イトラース第一王女の護衛依頼を受けてもらう」

「王国祭期間のみ、ですか?」


 王国祭に何かあるんじゃないかと勘繰ったのか、カルテが疑問の声を上げる。


「スーロちゃんはボッチ体質で引きこもり気味だからな。そこがまた可愛いところなんだが、お陰で殆どの時間を学園と王城で過ごしている。通学さえ厳重にしておけば護衛二人でも何とかできる範囲ではあるのだ。しかし、王国祭期間中は学園も一般に開放される。更に学生競技もあるから何かあったときに至近距離で護れる者が必要となることから、今回の依頼を出すに至ったわけだ」


 ああ、それで学生の俺達に依頼するわけか。

 学生限定ってことは、やっぱりさっきの選考はただの実力ではなかったんだな。


「なるほど、俺は問題無いです」


 姫さまの護衛なら前にも一回やったことあるし、友達だから一緒に居るのも自然にできる。

 他の三人もその場で合意して、依頼を受けることになった。


 そのとき、第一王子から受けた注意は二点。

 1、姫さまに護衛していると気付かれないこと。

 黙ってやっていることみたいで、知られると王子が姫さまに怒られるらしい。

 2、学生相手でも警戒すること。

 例の殺人事件、加害者も被害者も学生だった事案が出ているらしい。


 改めて渡された依頼書を受注して、その日は解散となった。



=====



 休み明けの学園。

 午前中はいつものように爆睡していて、次目を覚ますときには午後になっている筈だったのに、午前中の休み時間に叩き起こされた。

 ジョット先輩だ。


「ジョォットせんぱーいぃ……俺は、眠いんです……」

「アッカリ~お前、よくそこまで寝てられるな。さっきも様子見に来たのに寝ていたもんだから我慢できなかったぜ」

「なんか、頭がくらくらするんですけど……」

「ジョットさんに滅茶苦茶揺さぶられてましたからね」


 カルテに言われて、この眩暈が眠気からだけでないことを知った。

 ……ん? リティが居ないな。まあ、休み時間だからか。


「で? 何か用事でもあるんですか?」

「んや、大した用じゃないんだが、暫く協力するんだから親睦でも深めておこうかなと。そうでなくても同じ学生の冒険者だからよろしくしておきたいって感じ」

「なるほど……ユミツキアカリです……あ、アカリ・ユミツキです……」

「名前くらい知ってるわ! ……いや、フルネームは知らなかったわ」

「しかも名乗り方間違ってますしね」

「半日は眠い体質です……」

「それは今日理解したわ。なんだか悪かったな」

「いやいやジョットさん、この時間帯にアカリさんを起こせたのは凄いことなんですよ。教師は全員諦めています」

「俺、アカリはもっと良い子ちゃんしてると思ってたわ……」


 その後もジョット先輩とカルテは何か言っていたが、眠すぎて殆ど耳に入って来なかった。

 もう無理、寝よう。

 そう思ったけど、聞き慣れたリティの声が聞こえてきたから持ちこたえる。


「アカリが……起きてる……」

「もう落ちそうですけどね」

「ほんとだ」

「おやすみリティ……」

「もうすぐ授業。授業なのに、寝ちゃだめ」

「アカリさんに対しては今更ですけどね」

「学費払って来てるのに、意味ない」

「うっ……!」


 今日のリティは切れ味高いな……。いや、今まで思っていても言わなかっただけか。

 リティにそこまで言わせて、それを無視して寝入る俺ではない。

 こうなったら、意地でも起きているぞ……今日だけでも。


「んじゃ、アカリ。昼休みに依頼組で中庭集合な!」

「了解です……」


 あんまり話聞いてなかったけど、なんか集まるらしい。


 その後頑張って起き続けた。

 教師に体調を疑われた。


 そして、昼休み。

 起き続けたせいで、眠気が抜けない。


「おはよーございますユミちゃん! 寝起きですか? 今日は一段と眠そうですね」

「フェルクか。今日は授業、途中から起きてたんだよ」

「え!?」

「半分死んでましたけどね」

「ああ、フェルクには来てもらって悪いんだけど俺とカルテは今日、他の人と約束があるんだ。カインクルフにも来たら伝えといて」

「え!?」

「まあ、今日はリティと仲良くしといて」

「それはやぶさかじゃないんですが、リティちゃんあんまり喋らないから必然的にわたくしめがカインクルフさんと気まずい思いしちゃうじゃないですかあぁ……!」

「それは、なんかごめん」


 フェルクが引き留めようとしてきたけど、先約を断るわけにもいかない。フェルクは毎日来るけど約束しているわけじゃないから、ジョット先輩の方が先約だ。

 リティ一人残るよりも気が楽だしね。

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